203話 捕縛
カズヤは自分の返答内容にハッとして気が付いた。
「そうです。デルネクス人たちに『この星の生物と戦って被害を受けるくらいなら、交渉した方が得だ』と思わせればいいのです。そうすればある程度こちらの要求は通るかもしれません。戦わない者に交渉権はありません」
ステラはきっぱりと言い切った。
黙って従うのではなく、勝てなくても抵抗することに意味があるということだ。
「デルネクス人の中にも少数ですが心ある人はいます。話が通じる指揮官であれば交渉は可能なはずです」
「分かったぞ、ステラ。力づくでも人狩りを止めてやろう」
「人狩りに来た戦闘員のなかで、戦闘型ザイノイドはレオという個体名の1体だけです。まずは彼だけ捕まえてしまいましょう。宇宙船に連絡されないように魔法で結界を作れば時間を稼げます」
たしかに、戦闘型ザイノイド1体だけなら勝負になるかもしれない。
奴らの人狩りを止めなくてはいけない。
いよいよ、カズヤたちがデルネクス人に攻撃をしかける時がやってきたのだ。
*
カズヤはまずフォンを呼び寄せる。戦闘型と戦うのならフォンの力が必要だ。
カズヤから呼び出されると、フォンはすぐさま飛竜に乗ってやってきた。ウィーバーが使えないことを伝えたせいだ。
ハルベルト帝国では飛竜部隊ストームドレイクスが有名で、その飛竜に乗ってきたのだ。
「いよいよ彼らと戦うんですね。たしかに1体だけなら勝算はあります」
「マスター。魔法だけでなく、彼らが通信で使っている周波帯にジャミングをかけます。次はこの辺りの街をねらっています」
ステラが内部通信を使って、調査部隊の降下地点を指し示す。
「奴らの作戦まで分かるのか?」
「こちらが敵対するとは想像もしていません。今のところ墜落した宇宙船経由で、彼らの作戦は筒抜けです」
人狩り部隊の陣容や降下地点を、ステラは宇宙船の情報から把握している。さらにこちらの存在や動きはバレていない。
今がチャンスだった。
カズヤたちは、デルネクス人たちが次に仕掛けてくる予定のタシュバーン皇国の街に潜んだ。シデンはもちろんのこと、黒耀の翼のメンバーもいる。
当然カズヤも、いざという時のためにアリシアやバルザード、ピーナを呼んでいた。
「彼らと敵対することに決めたのね。こっちも覚悟を決めなくちゃ」
「黙って人をさらっているなら敵で間違いねえぜ。後悔させねえとな」
「ねえ、カズ兄。宇宙人って、お友達になれるの!?」
威勢のいいアリシアとバルザードの言葉とは違い、ピーナの疑問にカズヤは黙り込む。友だちになれるかどうかは、相手次第としか言いようがなかった。
恐ろしいのは戦闘型だけだ。
他の戦闘員は、カズヤたちで無くても十分相手ができる。敵であるデルネクス人たちはカズヤたちに気付いていないが、カズヤたちは敵のことを知っている。
現時点では、こちらの方が遥かに有利なはずだ。
しばらく街の片隅に潜んでいると、戦闘型1体と戦闘員5人が乗っている大型のウィーバーが、地上へと降りてきた。
事前に張られていた魔法障壁を無自覚に通過してくる。
魔法の存在すら気に留めていないので何も気付いた様子はない。これで地上で何が起こっているのか上空には伝わらないはずだ。
そして戦闘員たちがウィーバーから飛び降りた瞬間。
「……今です!!」
ステラの呼び声を合図に、カズヤたちは一斉に飛び出した。
フォンが戦闘型ザイノイドのレオに襲い掛かる。こいつさえ捕らえられれば、あとは簡単なはずだ。
しかしさすが戦闘型ザイノイド、油断はしていない。
すんでのところでフォンの攻撃を受け止めた。
「※※※、※※※※※!?」
驚いたレオの背後からカズヤとステラが同時にせまる。
後ろの二人に気を取られたレオの隙をフォンは見逃さなかった。すぐさま殴りつけると、フォンの拳がレオの頭にきれいにヒットする。
弾き飛ばされたレオに、カズヤとステラが追撃する。
レオがカズヤの攻撃を必死でかわしたところを、フォンが後ろから羽交い絞めにする。
素早くステラがレオに拘束具を取り付けた。
戦闘型とはいえ、これで抵抗できないはずだ。
「くそ、お前ら何のつもりだ!?」
レオと呼ばれたザイノイドが、すぐさま現地の言葉に切り替える。
さすがザイノイドだ。以前のステラのように、この星を調査している間に言語を習得してしまったのだろう。
他に戦闘員として付いてきた乗組員は、それほど強くはない。持っている武器も想定内の電磁ブレードやブラスターのみだ。
アリシアやリオラたちが遠距離攻撃をしかけると、その隙をついてシデンやバルザードが飛び掛かる。
デルネクス人は、人狩りに来た自分たちが襲撃されるとは露ほども思っていなかった。武器を取り上げられると人間である戦闘員たちは無力だった。
作戦通り、カズヤたちは人狩り部隊を捕らえることに成功したのだ。
カズヤたちはすぐさま捕まえた戦闘員を、認識阻害の魔法がかかった建物の中へ移動させる。ここなら、衛星やボットを使っても見つからないはずだ。
「俺たちの襲撃を知っているとは、お前たちは何者だ!?」
事情を把握できていないレオが、敵意丸出しの様子で噛みついてきた。
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