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200話 デルネクス

 

「なんだって!? フォンみたいに強いザイノイドが5体も……」


 それに彼らの名前を知らされるのも少し複雑だ。相手にもステラやフォンのような個性があるかと思うと、敵として戦いづらくなってしまう。



「あと、私のような情報処理型ザイノイドが8体いて、主に宇宙船の航行に関わっています。戦闘員と調査員の人間種が30人。その他に艦長、副官が一人ずつです」


 戦闘型だけでなく、ステラと同じ情報型が8体もいるのか。戦闘が任務ではないといっても、ステラと同じくらい強いのだ。



「不用意に戦いを挑める相手ではなさそうだな……」


 考え無しにデルネクス人と衝突することが、悪手であるのは間違いないようだ。彼らへの対応は慎重にしなければいけない。


 さらに、ある懸念がカズヤにわいてきた。



「ステラたちがこの星にやってきたのは300年前だろう。ひょっとして、これからやってくるザイノイドはもっと高性能に進歩してるっていうことか!?」


「いいえ。その点に関してはほとんど変わらないと思います。デルネクス人の科学技術は2000年前に一定の頂点を迎えてから、ほとんど進歩していません。デルネクス人は自分たちが一番優れていると思っているので、ことさらその傾向が強いのです」


 傲慢であるがゆえに、技術を進歩させる意欲や謙虚さに欠けるということか。


 デルネクス人の事情を聴いて少し安心する。技術進化の差を恐れる必要は無さそうだ。



「艦長の名前はオルガドで、デルネクス系の人間種です。副官のパーセルも同様です。しかしデルネクス人が完全に生身の肉体であることは珍しいので、身体のパーツの幾つかはザイノイド化しているはずです」


 身体の一部をザイノイド化した人間種が、この調査部隊を指揮しているということか。



「彼らと交渉する余地はないのか?」


「残念ながらかなり難しいでしょう。こちらの要求や希望なんて、まったく聞く耳を持たないと思います。彼らは本当に自分たちの利益しか考えていませんから」


 ステラが顔を曇らせる。



「でも、この星にはすでに独自の文化や社会があるじゃないか。デルネクスくらい科学的に進歩した星なら、他の星に配慮する考えもあるんじゃないのか?」


「マスター、それは甘い考えです。科学的に進歩することと、倫理や道義的に進歩することは全く別の問題です。もちろん、デルネクス人のなかにも様々な人や考え方はあるのですが……」


 ステラの表情は暗いままだ。


 かつての上官だったデルネクス人を思い出しているのだろう。



「でも科学的に凄く進歩しているのに、その程度の道義心しか持ってないなんてちょっと信じられないな。技術なんて使う目的が一番大切だろう。そんなことも分からない奴らなのか?」


 カズヤが少し納得いかない表情を見せる。



 返答を聞いて少し考えたステラが、ある例え話を持ち出した。


「例えばですけども……もしマスターが絶海の孤島で、未知の動物たちが勢力争いしているのを発見したら、その集団を支配してボスになりたいと思いますか?」


「いや、興味はないな。全くといっていいほど」


 もし未知の動物を発見したとしても、いきなり支配しようとはしないだろう。おそらく、その新種の動物がどんな生態なのか、調査したり観察するところから始める気がする。



「その動物たちと直接交渉して何かを交換したり、お互いの利益を見つけだそうしますか?」


「……いいや、しないと思うな」


 動物と交渉してまで欲しい物が想像できなかった。ただでさえコミュニケーションが難しいというのに。



「マスターが今おっしゃった感覚が、デルネクス人の感覚なんです。彼らにとって自分たちよりも文明レベルが低い星と、わざわざ交渉する利点がありません。交渉なんかしなくても、科学力と軍事力を使って支配すれば、いくらでも自分たちの好き放題にできますから」


「何だって!? そんなことが……」


 あまりにも酷い理屈にカズヤは言葉を失う。デルネクス人のことをよく知っているステラが言うのだから事実なのだろう。



「それじゃあ、デルネクス人はこの星を完全に支配するつもりなのか?」


「支配することすら興味無いかもしれません。そんなことをしなくても、鉱物や生物を好き勝手に運び出すことができますから」


 ステラが言う交渉の余地がないという意味が分かってきた。いよいよ、厄介な奴らに目をつけられてしまったのかもしれない。



 今までカズヤは宇宙船やステラを筆頭として、デルネクス人の科学力に助けられてきた。


 しかし当然のようにデルネクス人たちも同じだけの科学技術を持っている。カズヤたちの科学力がアドバンテージになることはない。


 しかも当のデルネクス人たちは、倫理観や道義が通用する友好的な種族ではないようだ。



「ステラたちがこの星にいるのはバレているのか?」


「この星のどこかにいるのは分かっているはずです。おそらく先日、衛星が行方不明になったのは彼らのせいでしょう。ただまだ予備調査の段階なので、どこに何人いるかまでは分かっていないはずです。だからこそ私たちを招集しているのだと思います」


 カズヤは以前、上空を飛んでいた見知らぬF.A.(フライトアングラー)のことを思い出した。


 きっとあの機体も、デルネクス人が使っていた物に違いない。



「このまま何もしなければ、私は彼らに捕まってしまう可能性が高いですが……」


 確認するように、ステラがつぶやいた。


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