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178話 異世界の女子高生

 

「えっと……。ここ、どこ!?」


 高校3年生の吉野マキは、気が付いたら知らない荒れ地に独りで立っていた。


 なぜ自分がここにいるのか、まったくもって分からない。さっきまで普段通り、高校のいつもの教室で数学の授業を受けていたはずだ。


 たまたま休み時間に一人で旧校舎を通って外に出たら、ここにいたのだ。



「何だか、とっても暑い。秋とは思えない暑さね」


 辺りを見渡すとだだっ広い地面に変哲もない石が転がっていて、背の低い雑草が生えている。


 見通しだけが良い岩石砂漠のような場所で、人の気配はまったく無い。



「……ここがどこか分からないけど、なんかこっちの方が気楽かもね」


 マキは、とてつもなく不思議な体験をしているにも関わらず意外と冷静だった。


 マキはこの状況を特別に悪いとは感じていない。今まで自分がいた環境よりも、もっと良いことが起きるかもしれない、とすら感じていたのだ。



 マキは小学生の時に両親を事故で亡くした。


 そして母親の妹である叔母の元に引き取られ、居候として暮らしていた。


 新たに親代わりとなった叔母は決して悪い人ではなかったが、叔母自体にも既にマキより歳下の子どもが3人もいる。


 マキがいることで増えるであろう金銭的、時間的、精神的な負担は、ほかならぬマキ自身も感じていた。


 同じ屋根の下で暮らしていると、そのような居心地の悪さをどうしても感じてしまうのだ。



 幼かった自分を養ってくれたことに感謝しているが、叔母の家計も決して楽ではない。金銭的な負担をかけている叔母の家族には、いつも申し訳ないという気持ちを持っていた。


 本当は高校にも進学せずに、すぐに就職したいとさえ思っていた。


 しかし、高校までは進学させるという叔母の強い教育方針に従って、なかば強制的に高校へ通っていたのだ。



 そんな状況だったので、叔母の家もマキがいなくなると負担が減り、内心ではホッとしているのではないかと思われた。


 マキも叔母の家に帰る必要が無くなって、少し安堵していたくらいだ。


 むしろ、突如としてたどり着いたこの世界で、イチから頑張ろうという気持ちがわいてくる。



 しかし少し冷静になると、この世界は見渡す限りなにも無い。


 このままでは、水も飲めずに死んでしまう可能性もある。


 マキはどこに進んでいいのか分からずに、とりあえず森が見える方へと進んでいった。視界に広がる砂漠のような光景は、まるで広告などで見る3Dゲームのようだ。



「ひいっえっ!?」


 足元の砂地が終わり、あと少しで森に入ろうかというとき。


 目の前に突然、人間程の大きさもある大トカゲに出くわした。大トカゲはマキを餌と認識したようで、こちらを見て威嚇してくる。



「ちょっと、トカゲに食べられるのは勘弁して!」


 マキは森へ向かって必死で走りだした。後ろも振り向かずに全力疾走だ。


 もともとマキは運動神経がいい。体育会系の部活には所属していなかったが、いつも友だちに入部を勧められるほどだ。



 大トカゲは森の中まで追いかけてくる気配は無かった。


 瞬間的にとびかかろうと身構えていたが、マキの姿が見えなくなると、すぐに諦めたように砂漠の方へと戻っていった。



「こんな恐ろしい動物がいるなんて。やっぱり生きていけないかも……」


 この世界を前向きに捉えていたマキでも、さすがに大トカゲに襲われるのは無理だった。


「※※※※※※※※※!、※※※!!」


 すると森の奥から、マキの方へ向かって走ってくる鎧姿の男たちが目に入った。聞いたことがない言葉を話し、マキを指さしている。


 その様子はどう見ても友好的には見えなかった。



「えっ、何なのこの人たち!?」


 マキは反対側を向いて逃げ出そうとしたが、いつの間にか背後にも数人の兵士が駆けつけている。


 前方の近い距離にいる兵士は剣に手をかけていた。



「とてもじゃないけど、優しそうな人には見えないわ。死んだらお父さんとお母さんに会えるかな……」


 マキが兵士に捕まるのを覚悟したとき。



 突然、空からバササッという音と共に大きな鳥が急降下してきた。


 一瞬マキは兵士だけではなく、大きなカラスのような魔物に襲われたと感じた。しかし、急激な速度で近付いてきた姿をよく見ると、それは鳥では無かった。



「女の人……!?」


 それは、大きな黒い翼をバサバサという力ある音を響かせて宙を舞う女性だった。


 翼だけでなく容姿も芸術品のように美しかった。


 マキが見とれているように惚けていると、その女性が兵士に手を向ける。その手から放たれた衝撃波が兵士を襲った。


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