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176話 ゼーベマンの追及


「ゼーベマン様、指示書らしきものは見つかりません」


「なるほどのお……おい、そこの神官。儂は徴税局からこの教会の資料を持ってきたのじゃ。先月に、大量の資金が引き出されているが何のためじゃ?」


 ゼーベマンは、先程とは別の神官を新たに捕まえて問いただす。



「そ、それは教会の補修や施設維持費です」


「見たところ補修された箇所はどこにもないぞ。それとも、見た目に分からない程度の補修だったのか?」


「いえ……そういう訳では……」


 嫌味を交えながら、ゼーベマンが神官を追い詰めていく。



「それでは、実際に補修した場所を教えて欲しいのじゃ。この莫大な金額を具体的にどの部分を修繕したのか、証人や現場の記録はあるのか?」


「えっと、それは資料がまだ整理されておらず……」


「奇妙なことじゃな。莫大な金額を動かしておいて証拠もなしとは。計画書も記録もなくお金を使ったのであれば、更に調査しなければいけないが、それでもよいのか?」


「ま、待ってください! それは正式に本部からの計画書に沿って使用されたもので……」



「計画書? やはり本物の指示書があるのじゃな。それはどこにあるのじゃ?」


「いえ、それは教会からの計画書なので、アビスネビュラとは関係ないのですが……」


「ほう、なぜお主もアビスネビュラについて知っているのじゃ。ここの神官にとっては当たり前のことなのかな?」


「……!」


口を滑らせた神官が黙り込む。



「年寄りを待たせて寿命がくるのを待っているのか? もういい、お主と話すのは時間の無駄じゃ」


 ゼーベマンはズカズカと地下の宝物庫へ入っていく。


 もはや誰も止めることができなかった。


「宝物庫を徹底的に調べるのじゃ。宝の中身をあさっても良いぞ」



 しばらくして、優秀な魔道士たちが宝物庫の奥にある隠し部屋を発見した。


 隠し部屋の存在を追及されると、いよいよ神官たちも観念した。大人しくアビスネビュラからの書類の在り処を白状する。


 隠し部屋には、大量の指示書が整然と並べられていたのだった。




 王宮の広間には緊張した空気が漂っていた。


 皇王の代わりに玉座に座るシデンを前に、タシュバーン皇国内のサルヴィア教会を代表する主教が、居心地悪そうに頭を下げている。


 その後ろには神官たちと、皇国内の数人のサルヴィア騎士団も控えていた。



 シデンの手には教会の関与を示す証拠――魔導人形に関する計画書が握られている。


「……主教殿、これが何だか説明していただこうか」


 シデンの声は冷静だが、その底には威圧的な迫力が潜んでいた。



「そ、それは……教会の資産管理に関する文書でありまして……決してタシュバーン皇国を危険に晒す意図など――」


 主教は汗を浮かべながら、必死に言葉を探す。


「資産管理、か」


シデンは計画書を振りながら一歩前に出る。



「では、この“魔導人形の配置計画”という記載も資産管理の一環か? なぜこんなものがただの教会に必要なのだ?」


 主教は言葉に詰まり、視線をそらす。


「この計画書には、“タシュバーン皇国の騎士団に代わり、魔導人形を用いた完全支配を確立する”、と書かれているぞ。これが資産管理だと?」


 シデンが突きつける証拠に、主教の顔色はどんどん青ざめていく。



「お前らは神の教えよりも、アビスネビュラの指示の方に熱心らしいな」


「ま、まさか、そのようなことは……」


 主教が口ごもる。


「それともお前たちの神とやらは、人形を使って国を支配するようにとでも言ったのか?」


「……!」


 シデンの挑発に主教の顔は真っ赤になり、拳を握りしめた。


 部屋の中の空気が急激に張り詰める。



「……いい加減にしろ、皇子よ! 我々の神まで愚弄するとは!」


 主教の怒声が、部屋の隅々まで響き渡った。


 その瞬間。


 後ろに控えていた神官と騎士たちが一斉に動き出した。



 神官が腰に付けていたサルヴィア教の装飾品を手に取ると、カチリと音を立てて杖へと変形する。


 騎士たちの装飾品は、鋭い短剣へと姿を変えた。


 宗教的な意味合いがあると、王宮内への装着を許されていた装飾品が、武器へと変形したのだ。



 しかし、シデンの余裕ある態度は変わっていない。


「フッ、挑発に簡単に引っかかるとはな。激高してくれると話が早い、これでお前たちがタシュバーンに敵対することを認めたわけだ」


 シデンはにやりと笑って立ち上がる。



「爺は結界を張って奴らの魔法を防げ。リオラは主教を捕えろ。俺は残りの教会の騎士どもをやる」


「シデン様、みずからが出なくても……」


 周りの近衛兵が、シデンの戦闘を押しとどめる。



「こうなるように仕向けたのは私の責任だ。私の手で沈めてやる」


 シデンは冷静に微笑みながら、近衛兵を遮って前に出る。


 腰の剣をスラリと引き抜いた。


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