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170話 苦手な魔物

 

「そういえばアリシアは、魔術ギルドの本部に巨大な魔石があることを知っていたよな。あれはどうやって調べたんだ?」


「戦闘魔法を使うときの紋様の魔力を辿っていけば、誰にでも分かることよ……でも、それに気付いてるのって、私だけみたいなのよね」



「ん、魔力を辿るって、どういうことだ?」


 戦闘で使うような炎や防御魔法や強化魔法なんかを、まとめて戦闘魔法と呼んでいることを思い出す。


 アリシアがとても大事な話をしているような気がして、カズヤは話を遮った。



「魔術ギルドと契約するということは、要するに本部に置かれた魔石と自分の魔力を繋げるということなの。だから戦闘魔法は、詠唱している間に本部の魔石に許可をとって、許可が出たら紋様が浮かび上がって発動する、っていう仕組みになっているの」


「なるほどなぁ……」


 この話を聞いたカズヤの頭には日本でのパソコンやスマホでの、インターネットの仕組みが思い浮かんだ。


 例えるならば、魔法を詠唱して発動するまでの時間というのが、魔術ギルドの魔石というメインコンピューターにアクセスして許可を待っている時間だ。



 許可が出たときには、証明として紋様が浮かび上がって魔法が発動する。


 その仕組みを、アリシアは魔力を辿ることによって自力で解明したのだ。


 カズヤは、アリシアがとんでもないことを話しているのに気が付いた。ひょっとしたらアリシアが行なっている研究も、これに関係するのだろうか。



「もしかして、それって凄い発見じゃないのか!?」


「そうなのかしら。戦闘魔法を唱えた人は毎回魔術ギルドの魔石と繋がっているから、気付きそうだと思うんだけどね。でも意外と誰も気付いてないみたいなのよ」


 魔力を辿っていくなんて、よほど魔力に鋭敏な感覚を持っていないと無理なんじゃないだろうか。


 幼少期から魔力過剰症に悩まされて、魔力と深く付き合ってきたアリシアならではの才能のような気がする。



「ということは、その研究のために、この鉱山にある魔石が欲しいっていう訳か」


「そうなの。ここの魔石は前から欲しかったんだけど、恐ろしい魔物がいるから近寄れなかったのよね」


「アリシアが恐れるなんて、よほど強い魔物がいるんだな。どんな魔物なんだ?」


「別に強くはないの。ただ、見た目が苦手で……」


「見た目……?」



「2mくらいある魔物なんだけど、虫みたいな外見をしていて、尻尾から管を伸ばしてガスを出すの。他にも苦手な魔物が多いし、生理的に無理なのよ」


 アリシアは魔物の姿を思い浮かべるだけで身震いしている。


 よほど嫌いな外観なのだろう。



「そんなに気持ち悪い奴なのか。それなら、よくベルネラとの戦いで逃げ出さなかったな。あいつも結構気持ち悪い見た目をしていたぜ。最初はムカデだったし、次は蜘蛛だって言ってたじゃないか」


 ハルベルト帝国との戦いが終わった後に、それぞれの戦いの様子を報告しあっている。


 ベルメラが、アリシアに執着して追い掛けてきた話はすでに聞いていた。



「ヌメヌメしている生き物が苦手なのよ。元はベルネラも普通の人間だし、敵を前にしたら怖気づいていられないでしょ。これでも頑張ったんだから」


 苦手な外見を我慢して、あれだけ戦えていたのなら大したものだ。



 アリシアと話しながら鉱山の入口を探していると、それらしき空洞が見えてきた。


「……ここか。何かあったら困るから、頑丈な俺が先に行くよ」


 鉱山の入り口は、落石による大きな岩でふさがれていた。


 ザイノイドの馬鹿力で、カズヤが押しのける。



「そらよっ、と。……鉱山内は暗いな。俺とステラは視覚センサーを使えば大丈夫だけど、アリシアには何も見えないだろ。ステラ、何か明かりはないか?」


「明かりと調査のために、ボットに手伝ってもらう予定です。あとはこれも……」


 そういうとステラは、上空に待機させていた新たなロボットを呼びつけた。


 見た目はF.A.(フライトアングラー)と似ているが少し違う。カズヤも見たのは初めてだ。



ペネトレーター(地中探査器)という地中の様子を調べるロボットです。私たちの宇宙船は星の調査が目的だったので、このような探索機がたくさんあります」


 カズヤたちの先陣をきって、ボットたちが鉱山内へ入っていく。



 そして先行した何台かは光源となって、通路の途中で待ってくれている。


 その後ろをペネトレーター(地中探査器)が付いていった。ロボットが先行してくれると、急に襲われることが無いので安心だ。



 四人が廃鉱山に足を踏み入れると、急に気温が低下した気がする。


 壁から水滴が滴り落ちていて坑内の空気は湿っている。足元がぬかるんで滑りやすいうえに、苔も生えていた。


「ジメジメしてて嫌な感じだな。こんなところで作業するのは大変だっただろうな」


 当時ここで働いていた作業員の苦労がしのばれる。鉱山内には四人の足音と水滴の音だけが響いていた。



「さっそく出てきましたね。マスター、通路先に魔物が2匹。こちらに向かっています」


 ステラの警告に、四人はすぐに身構えた。


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