169話 アリシアの魔石採取
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セドナの新市街を、カズヤたちは見回りを兼ねて歩いていた。
カズヤの横では、ステラがピーナと手を繋いでいる。
「ねえカズヤ、お願いがあるの。廃鉱山に魔石を取りに行くのを手伝って欲しいんだけど、どうかな?」
不意に、後ろを歩いているアリシアから声をかけられた。
もちろん、その隣には護衛としてバルザードが付き従っている。
「別にいいけど、魔石なんかどうして欲しいんだ?」
「魔法の研究の為に、純度が高い大型の魔石が欲しいのよ。それがあれば私の研究が進むはずなんだけど」
その話を聞いたカズヤは、アリシアが昔から魔法の研究をしていると話していたことを思い出した。
「そういえば、アリシアはずっと研究しているって言ってたな。古代魔術の研究なのか?」
「いいえ、そうじゃないの。古代魔術については、詳しい魔法書が残っているから」
「あっ、そうなんだ……すっかり勘違いしてたよ」
今のところ、古代魔術を教えられるのはアリシアだけだ。
他の人は知らない独自の魔法だから、てっきり古代魔術の研究をしているのかと思っていた。
「それじゃあ何の研究か、聞いてもいい?」
「うーんと……それがちょっと話しにくいのよね。皆の役には立つとは思うんだけど、世間に受け入れられる自信がないの。できるかどうかも分からないし、できた時に報告するんじゃ駄目かな?」
アリシアにしては珍しく歯切れが悪い。
言いたくないことであれば無理に言う必要はないが、もったいぶられると余計に気になってくる。
ただアリシアのことだから、他人に危害を加えるような研究ではないだろう。
単に、常識からかけ離れたことなのかもしれないし、大した事ではないのに真面目に考えすぎている可能性もある。
「それなら別に、話せるようになってからでいいよ。それでどこに行きたいんだ?」
「メドリカ王国との国境近くにある廃鉱山よ。魔物が多すぎて使われなくなったんだけど、奥に大きな魔石が眠っているはずなの」
「メドリカか……険悪な関係だけど、大丈夫かな」
メドリカ王国はエルトベルク王国の西側で国境を接している国だ。
ゴンドアナ王国との戦争中に突如として襲ってきたのを、アリシアとバルザードが音響兵器で撃退したのだ。
「山の奥地にあるし、今は誰もいない鉱山だから問題ないわ。ただ、嫌な魔物がいるし何が起こるか分からないから、カズヤたちの”かがく”っていう魔法で助けて欲しいの」
「まあ、科学は魔法じゃないんだけどね……大丈夫ならいいんだけど」
カズヤからすると魔法の方がはるかに不思議なのだが、異世界の住人からすると科学の方が理解できないのだろう。
なんだか奇妙な言葉だった。
「アリシアが行くということは、バルも来るんだよな?」
「もちろんだぜ!」
アリシアの後ろで話を聞いていたバルザードが、当然のようにうなずいている。
ハルベルト帝国の時にもあった、いつものやり取りだ。
「頼ってもらえると嬉しいんだけど、俺もステラがいないとあまり役に立たないんだよな。ステラも来てくれるか?」
カズヤの隣にいたステラは、当然とばかりに小さくうなずいた。
こちらは返答する必要もなかったようだ。
「それじゃあ、ピーナはどうしようか。鉱山は危険そうだから、無理して来なくていいと思うけど……」
「ピーナは行かないよ! お友達と遊ぶ約束があるの!」
カズヤの問いかけにピーナが即答した。
領主館の近くで、ピーナに新しい友だちができたのは知っていた。
ピーナはまだ子どもだ。危険なところに連れ出さず、街で遊んでいる方が自然だろう。
「じゃあ、準備ができ次第出かけようか。新市街の建設や移住も順調に進んでいるし、短い期間なら大丈夫だよな」
カズヤ、ステラ、アリシア、バルザードの四人で戦いに行くのは久しぶりだ。
カズヤたちは、鉱山へ行く準備を進めるのだった。
周りへの段取りの指示や準備をすませると、四人はウィーバーに乗り込んだ。
目的地の鉱山が隣国の山奥とはいえ、ウィーバーに乗ればあっという間だ。一刻もかからずに廃鉱山がある山腹に到着する。
鉱山の周りには、かつてたくさんの人が作業していた跡は見られるが、今は草木で荒れ果てている。
放置されてから、かなりの年数が経っていそうだ。
「それにしても、魔石って採掘できるんだな。魔物や人間みたいな、生き物の身体の中にしか無いと思っていたよ」
「魔力が噴き出していた魔泉でも、結晶化した鉱物があったでしょ。体内の魔石とは大きさや性質が違うのよ」
カズヤの疑問に、アリシアが答えてくれる。
たしかに魔泉の魔力が噴き出している場所に、大きな魔石があった気がする。
魔石は魔導具の動力源になったり、魔法を込めたり様々な用途で使うことができる。この世界では欠かせない鉱物資源だ。
「そういえばアリシアは、魔術ギルドの本部に巨大な魔石があることを知っていたよな。あれはどうやって調べたんだ?」
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