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167話 襲来

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 平和だった部屋の中が、急に慌ただしい雰囲気に包まれる。


 忙しくなったカズヤは、前田たちの方を振り返る。


「突然すみません。恐ろしい魔物がこの街に迫ってきています。奴を追い返さないと大変なことになる。あなたたちのことはそこにいるアリシア姫に頼んだので、彼女の指示に従って下さい」


 カズヤはそう言うと、先程の女性を連れて足早に部屋から出ていった。



「追い返す」というのだから、カズヤたちも戦うのだろうか。


 しかし、いったいどうやって。死んでしまう者もいるのだろうか。まさか、そんな戦争みたいなことが目の前で本当に起きるなんて。


 だが確かにこの世界に訪れたとき、前田たちも巨大なオオカミのような獣に襲われている。


 あのような魔物がいる世界だとしたら、いつ戦いが起こってもおかしくないのかもしれない。



 アリシア姫と呼ばれた高貴な女性は心配そうにカズヤの後ろ姿を見送っていたが、その姿が見えなくなると気持ちを切り替えたようにこちらに向き直る。


 彼女は戦闘には参加しないのだろうか。いや、お姫様というのだから、戦わなくても当然か。


 前田アカリたちは自分たちが置かれている状況を、納得はできなくとも少しずつ理解し始めていた。


 というより、理解せざるを得なかった。いつまでも、この不可解な境遇を嘆いている場合ではなさそうだ。



 アリシア姫の指示に従って、前田たち3人は急いで城の地下へと避難したのだった。




 *


「ふう、何とか追い返せて良かった。フォンがいなかったらどうなっていたことか。助かったよ、ありがとう」


 カズヤたちは、最終的になんとかラグナマダラを追い返すことに成功した。


 しかし、フォンの力を借りても倒すところまではいかなかった。



「いいえ、大丈夫ですよ。カズヤさんの命令なら、いつでも駆けつけますから」


 ハルベルト帝国の皇帝であり剣聖でもあるフォンだが、カズヤのお願いを聞くとすぐに飛竜に乗って駆けつけてくれたのだ。


 カズヤも申し訳ないと思ったが、ラグナマダラ相手では仕方がない。



 初めて対戦するS級モンスターのラグナマダラは、今まで出会った魔物とは全ての面で格が違っていた。


 おそらくSSS級の災害クラスのモンスターだ。


 ラグナマダラは黒い龍のような風貌をしていたが、カズヤはこの世界に巨大な龍型モンスターが存在していることすら知らなかった。


 その身体を護るように覆われた硬いウロコは、1枚1枚が分厚い鉄板のようになっていた。当たり所が悪ければ電磁ブレードさえも弾き返され、まるで効果がない。



 剣聖であるフォンの高い攻撃力と、ラグナマダラの注意を引きつけるカズヤとステラの連携した陽動が無かったら、間違いなく負けていただろう。


 これまでのたび重なる戦闘で経験を積みかさね、今ではすっかり強者揃いのカズヤたちだったが、ラグナマダラが相手になると全滅していてもおかしくはなかった。


 もう駄目かと思われた時に、何とかラグナマダラを追い返すことができたのだ。



 ところがそんな激戦が終わったばかりだというのに、ステラの興味はフォンの服装にある。


「フォン。急に呼びつけたのは申し訳なかったけど、その格好はどうしたの?」


 フォンが着ている物を見て、ステラは眉をひそめていた。


 それもそのはず。フォンの服装はとても戦闘を行なうような格好ではなく、威厳と権威を感じさせる皇帝の正装だったのだ。



「急に呼び出されたので、着替えもせずに飛んできたんですよ。それにこんな格好をした方が素直に従う人も多いんです」


 フォンは、口を尖らせながら反論した。


 支配者にとっては外観も大切なのだろう。


 権威や階級に弱い人間もたしかに存在する。力関係を重視するハルベルト帝国では特に多いのかもしれなかった。



「フォンを急に呼び出した俺が悪いんだよ。ところで、ハルベルトの内政の方は順調なのか?」


「はい。先日、守旧派の貴族を追い落とすことができました。カズヤさんたちのご協力のおかげです」


 フォンはハルベルト帝国を新しく生まれ変わらせるために、改革に反対する守旧派の貴族たちと政争を続けていた。


 その際に、カズヤたちに助言や助けを求めることもあったのだ。



「それなら、これでひと安心だな。それにしても森にあったオートバイといい、迷い込んで来た彼らといい、どうして俺がいた世界から人や物が次々と流れ込んでくるんだろう?」


「情報が少ないため推測でしかないのですが、おそらくこの世界とマスターがいた世界の次元の境界が、薄くなってきているのだと考えられます」


 カズヤの心中を察して、密かに状況を分析していたステラが答えた。



「情報が少ないため推測でしかないのですが、おそらくこの世界とマスターがいた世界の次元の境界が、薄くなってきているのだと考えられます」


 カズヤの心中を察して、密かに状況を分析していたステラが答える。



「ん、次元の境界が薄いって、どういうことだ?」


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