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156話 罠

明日で第4章完結します!

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 不利を悟ったグラハムは、この激戦の場からこっそり逃げようと離れ始める。


 すると今度は大きな悲鳴をあげた。



「ど、どうしたのだ!? 足が、足が思うように動かないぞ!」


 逃げ出そうとしたグラハムが、その場に呆然として立ちすくんでいる。


 誰の何の攻撃も受けていないのに、戦場のど真ん中で棒立ちになっているのだった。



「陛下、危ないからフォンから離れてはいけませんよ。安全のためにその場にいてください」


 再びステラが、グラハムに警告する。


「ステラ! 貴様、儂の身体に何をした!?」


「陛下の安全を守るために、外部から身体を操作できるようにしてあります。フォンの傍から離れるのは危険ですから、そのまま動かないで下さいね」


 移植手術をしたステラが、外部からグラハムの足の機能を止めていたのだ。



「……そういえば陛下。身体をザイノイドに変えて欲しいと命令されましたが、どのようなザイノイドがご希望なのか、詳細をお聞きしていませんでしたね」


 ステラが言い終わらないうちに、今度はグラハムの足から急速に力が失われていく。


 グラハムは立つことすらできずに、その場にしゃがみ込んでしまった。



「自分の身体を他人に任せるには信頼関係が必要です。黙っていれば私が理想の身体にしてくれるとでも思っていましたか? 私と陛下の間に信頼関係はあったでしょうか?」


 詰問するステラの顔は笑っていない。


 今までのグラハムの傲慢な振る舞いを、全て糾弾するような口調だった。



「ふざけるな、儂の身体をもう一度作り直せ! 今度は細かく指示してやる。儂の命令には逆らえないのだろう!?」


「そうですね、陛下の命令には従います。もちろん、再移植もさせて頂きます。しかし、今は戦闘中なので戦闘後にもう一度お願いしてくださいね。この戦闘が無事に終わればですが……」


 ステラは冷ややかな刃のような微笑を浮かべる。


 この戦闘を無事に終わらせるつもりがないことを、自ら宣言したようなものだ。



「フォ、フォン! 戦闘が終わるまで、儂のことを守るのだ!」


「……分かりました」


 フォンがうんざりした表情でグラハムの前に立ちはだかる。


 本当は従いたくないが、渋々従っている気持ちが顔に表れてしまっていた。




 すると、この様子を見ていたカズヤがあることに気が付いた。


 急に芝居がかった声でグラハムに話しかける。


「フォンがグラハム皇帝を守るのなら手も足もでないな。それなら、先にこの宇宙船を破壊してしまおうか」



 突然の発言に、その場にいる全員が耳を疑った。


「き、貴様、何を言っているのだ!?」


 すでに自分の足で立つことができず、ひざまずいたままのグラハムは、カズヤの発言の意図が理解できなかった。



「だから、先に宇宙船を壊してしまおうかと言ってるんだよ。お前に渡すくらいなら破壊した方がいいと思っただけだ」


「な、何だと……!?」


 カズヤの発言に、グラハムはうろたえる。


 この宇宙船を手に入れるために、わざわざ戦争まで仕掛けたのだ。何よりも宇宙船が大切だった。



「この便利な宇宙船は、お前なんかに悪用されるくらいなら、この世界から無くなった方がマシなんだよ。お前なんかには、この宇宙船を絶対に使わせない」


 そう言うとカズヤは、グラハムから背を向けて宇宙船に向かって歩き出した。


 そして、電磁ブレードを取り出すと扉に向かって思斬りつける。


 ザイノイドの力で、扉は一撃で壊れて吹き飛んだ。



「この宇宙船がなければ、ステラがお前を再移植することもできなくなる。お前は今までに行なったことを一生反省して、そのまま皆にひざまずいて生きていけばいいんだよ」


 宇宙船を壊してしまえば、グラハムの治療もできなくなる。


 グラハムは一生ひざまずいた姿で過ごすことになるのだ。



「そ、そんなことをさせるものか! それが無ければ儂の身体を直すことはできん。フォン、宇宙船を守るんだ!」


「……今度は宇宙船を守れ、ということですか?」


 必死になったグラハムが、フォンに向かって叫ぶ。


 指示に驚いたフォンが思わず聞き返した。



「そうだ。この宇宙船さえあれば、後からどうとでも出来る。何度も言わせるな、宇宙船を最優先で守るのだ!」


「……了解しました」



 そのやり取りを見ていたカズヤがニヤリと笑った。


 そしてブラスターを握りしめると、宇宙船に向かって光線を放つ。


 当然のように、フォンが目にも留まらない速さで宇宙船への攻撃を防いでみせた。



「そ、そうだ、フォン。それでいい! 宇宙船を絶対に死守しろ。儂の命がかかっているのだぞ!」


 グラハムは自分が出した指示に満足していた。


 しかし、その傲慢さと過信のせいで、大きな過ちをおかしたことに気付いていなかった。



「どうやらお前は、自分がおかした失敗にまだ気付いていないんだな」


 カズヤは悠然とブラスターを構え直した。


 今度は2台のブラスターを持って両手を広げる。それは、宇宙船とグラハムの両方に狙いを定めていた。



「お前は自分の命令の意味が分かっているのか? フォンが守るのは、"宇宙船を最優先に"だぞ」



「……ま、まさか!?」


 グラハムは自分が下した命令の意味にやっと気が付いた。


 フォンに宇宙船を最優先に守れと命令している。



 それでは、”今の自分をいったい誰が守ってくれるというのだ”……!


 読んで頂いてありがとうございます! 

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