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149話 アリシア対ベルネラ


 二人の様子を遠くから眺めている周りの兵士たちは、恐ろしくて近寄ることができない。


「私は冒険者ギルドに所属する、魔物使いのメリナっていうの。これでも一応Sランクなのよ」


「私はステラです。さっきまで護送車の中に捕まっていました」



「えええっ、あなたがステラさんなの!? 今回の戦いで戦略的な重要人物だと説明されていたわ、どうしましょう……」


「ここは人目につくから、少し戦場から離れましょうか」


 二人の間には、お気に入りの魔物を認め合う者同士の通じ合う空気が流れている。



 ステラとメリナは、しばらく可愛い魔物談議に花が咲いてしまった。



「……マスターが宇宙船を追っています。残念ですが、楽しかった時間もお終いです」


「別れるのは寂しいわね。でも、さすがに戦闘した跡がないと怪しまれちゃうかしら」


 ホワイトドラゴンとウミアラシが、その場で戦った振りをするようにドタバタと激しく騒ぎ立てる。転がっている内に楽しくなってきた二匹は、土まみれになるほど転げまわった。


 挨拶を終えると、ステラはカズヤを追って宇宙船へと向かっていった。




「姫さん。さっきの火球は、きっとカズヤかステラの攻撃ですぜ」


 巨大な火球がハルベルト軍に炸裂したのを見て、バルザードが指摘する。


「そうね、私も自分にできることをしないと。ステラに教えてもらった”かがく”っていうのを試してみるわ」


 アリシアは風魔法を使って、ステラにもらった不思議な粉末を上空へと巻き上げた。



「姫さん。何ですか、それは?」


「理由はよく分からないけど、この粉末を舞いあげると雲ができて大雨が降るらしいのよ」


「雲ですか!? 雨を降らせる魔法なんて聞いたことないですが……。でも、ステ坊が言うことだから試してみる価値はありますね。もし大雨が降ったら、あいつらの進軍を遅らせることができますし」


 

 魔法を使ってしばらくすると、にわかに黒雲が集まってきた。


 そして戦場に大粒の雨を降らせる。


 アリシアが巻き上げたのは、雲粒子の凝結を促進する粉末状の化学物質だ。


 ステラから、雲種改変という気象兵器の一つだと教えてもらった物だった。



「な、なんだ。突然、雨が降ってきたぞ。さっきまで、雲一つない空だったのに……」


 ハルベルト軍の兵士から戸惑いの声がもれる。


 頭上から激しい雨が降り注ぎ、足元がぬかるみ始める。


 ハルベルト軍は10万人もの軍隊を進めなければいけない。大量の兵士を移動させることはリスクでもある。


 大雨で足元を悪くして時間を稼げれば、ハルベルト軍の進撃意欲を低下させるだけでなく、援軍の到着を遅らせることもできる。


 アリシアの攻撃は、戦場で一定の効果をあげていた。




 気象魔法が成功したアリシアが次の戦場に向かおうとしたとき、背後から自分を突き刺すような鋭い魔力を感じた。


「この魔力にはおぼえがあるわ、今度こそ決着をつけてあげる」


「姫さん、待ってください!」


 その場から駆け出したアリシアを、バルザードは慌てて追いかける。



 背後からの攻撃的な魔力を辿っていくと、そこには予想通りの人物が待っていた。


「やっぱり、あなただったのね。そんなに敵意ある魔力を向けられたら、嫌でも気が付くわ。皇帝からの報酬が目当てなの?」


 そこにはすでに、半獣半人へ変身しているベルネラの姿があった。


 蜘蛛のような下半身の上に人間の上半身が乗った、アルクラネと呼ばれる魔物に変わっている。



 蜘蛛のような八本の長い足で身体を支え、その上に人間の上半身が突き出ていて、その顔には残忍な狂気が宿っていた。


 その場にはいるのはベルネラとアリシア、その後ろに控えているバルザードだけだ。


 戦場のど真ん中にも関わらず、異形の姿に恐れをなした兵士たちは既に逃げ出していた。



「報酬なんてどうでもいいわ、アリシア様にどうしても会いたかったの。この前は随分ひどいことをされたから……」


「別に私はあなたに会いたくないけどね。それにしても、なぜこんなに私が目の敵にされるのかしら?」


 いつものアリシアとは違い、痛烈な言葉が口から漏れ出る。



「まあ、なんて無自覚な王女様なんでしょう!? 魔術ギルドに頼らない古代魔術を復活させるなんて、どれだけ凄いことか分かってないのでしょう。ただでさえ王族という恵まれた身分のうえに、魔法史に残る偉業を残すなんて……本当に妬ましい、妬ましい、妬ましい、最っ高に妬ましいわ!!」


 ベルネラの美しい顔が、嫉妬と怒りで醜くゆがむ。



「たった、そんな理由で? 歴史に名前を残すなんて考えたこともないわ」


「王女様には凡人の気持ちなんて分からないんでしょうね。あなたにはこの姿で戦ってあげる。糸でグルグル巻きにして、グラハム皇帝に差し出してあげるわ」


 ベルネラが、にやりと笑う。



「こっちこそ、二度とあなたに会わないように捕らえてあげるから!」


 アリシアが戦闘態勢になって杖を構える。


「姫さん、上半身の攻撃に専念してください。それ以外の防御と攻撃は俺がやります」


 バルザードが後ろから小声で伝える。



 ベルネラの異形の影がゆっくりと動き始める。


 動き方は蜘蛛のそれで、地面の上を不気味に這いまわり隙を伺っている。



 突然、蜘蛛の脚がアリシアに向かって突き出された。


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