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148話 ステラ対メリナ


「……お前の魔法の種は見抜いたぞ」


 様子見は終わりだ。


 エンザの攻撃は、魔法の仕組みさえ分かればどうとでも対処できる。


 エンザは瞬時に近付いてきて剣で攻撃する手段しか持っていない。強力な魔法を使える訳でもない。



(それなら、奴を近付けなければいいだけだ……!)


 カズヤは自分の周囲に、半径3m程の円形の防御シールドを展開させた。まるでバリアのように、カズヤの周りを電撃の筒が取り囲む。



 カズヤはそのままエンザの方へ、ゆっくりと歩き出した。


 エンザが相手を倒す攻撃は剣による物理攻撃しか無い。それならば、剣を持ってこちらに近寄らせなければ良いだけなのだ。



 相手が攻撃する剣の間合いを、全て防御シールドで埋めてしまう。


 電撃のバリアを身にまとったカズヤに、エンザは全く近付けなくなった。



「……くそ、卑怯だぞ!」


 攻撃手段を失ったエンザが、悔し紛れに吐き捨てる。


 別に卑怯でも何でもない。相手の弱点を見抜いただけのことだ。



「さあ、今までのお返しだ!」


 カズヤは電撃を展開したままエンザに突進する。


 エンザは慌てて転移スキルを使って距離を取ろうとするが無駄だった。カズヤはエンザの姿を見つけると全力で何処までも追いかけていく。


 攻撃できないエンザは、ひたすら逃げ回るしか無くなっていた。



「これでお終いだ!」


 エンザを追い詰めると、カズヤは周囲の電磁シールドを拡大させる。


「ぐあっっっ……!!」


 電撃を受けたエンザが悲鳴を上げてのけぞった。



 カズヤはそのままの勢いで、エンザが握りしめる剣に思いきり電磁ブレードを叩きつけた。


 衝撃に耐えきれず、エンザの剣は真っ二つに折れてはじけ飛ぶ。


 呆然とするエンザの顔を、最後は素手で思いっきり殴りつけた。吹っ飛んだエンザは立ち上がることができない。


 カズヤの完全勝利だった。



「やれやれ、おかしな魔法に手を焼いたな」


 カズヤがエンザを拘束しようと近付いたその時、再び姿が消えた。


「くそ、覚えていろよ!」


 捨て台詞を残すと、短い転移を繰り返しながら姿を消していく。



「あの魔法を使われたら、たとえ捕まえたとしても拘束できないか……でもあんな奴より、グラハムを追いかけないと。奴の方が先行して宇宙船に近づいている」


 逃げ出したエンザに構っている場合ではかなかった。


 カズヤはすぐさま、皇帝グラハムと剣聖フォンの後を追うのだった。

 



 ステラの姿を見つけると、ウミアラシがステラをめがけて突進してくる。


 どしどしと響く地鳴りは、周囲の兵士たちが思わず膝まずき立ち上がれないほどだ。



「……ウミアラシちゃん!」


「グオオオオッッ!!」


 笑顔で出迎えたステラが、ウミアラシの顔を撫で撫でしてあげる。



 嬉しそうに振り回すウミアラシの尻尾は突風を巻き起こし、地面をこするたびに地震のように大きく揺らした。


「う、うわあっ、なんだあいつは!?」


「で、でかい……! あいつに踏みつけられたら命はないぞ!」


 ウミアラシの存在は、初めて見たハルベルト軍の兵士を縮みあがらせた。


 これ以上に戦場を混乱させる方法は無い。


 一部のハルベルト軍の兵士は、戦意を喪失して自国へと逃げ始めた。



 すると今度はハルベルト帝国の方から、新たな魔物がこちらに向かって空を飛んできた。 

 ウミアラシの姿を見つけて、あえて近寄ってくる。


 それは、美しい毛並みが輝いている真っ白なドラゴンだった。背中には一人の女性を乗せている。



「か、可愛い……!」


 戦場ということも忘れて、ステラの目が釘付けになる。


 純白の竜に、可愛いもの好きのステラは一瞬で心を奪われてしまった。戦うという気持ちすら、すっかり消え失せてしまう。



 女性を乗せたホワイトドラゴンは、ステラとウミアラシの前に着陸した。


 ウミアラシの前だと小さく感じてしまうが、ホワイトドラゴン自体も10m以上はある大きさだ。


 ホワイトドラゴンの背中から降りてきた女性は、ウミアラシを見上げて驚いたような表情を見せた。



「ウミアラシが、こんなに大人しくしているなんて……。あの、その子はあなたの仲間ですか?」


「いえ、ウミアラシちゃんは私の友だちです。そのホワイトドラゴンはあなたのペットですか?」


 二人の会話は、戦場で交わすには余りにもかけ離れた内容だった。



「この子の名前はビアンカって言うの、長い付き合いなのよ。それより、S級モンスターのウミアラシと友だちになれるなんて凄いです。あなたもテイマーですか?」


「違いますよ。私にもマスターにも、そんな才能はないと思います」



「テイマーでもないのにウミアラシと友だちになれるなんて……。あの、少し触ってもいいですか?」


 メリナは恐れる様子も無くウミアラシに近づくと、優しく頭をなでる。


 頭だけでも家一軒分はありそうな大きさなのだが、気持ちよさそうに目をつぶって撫でられたままになっている。



「そっちの白い子にも触っていいですか?」


「いいけど、大丈夫かしら。この子は好き嫌いが激しいんだけど……」


 しかし、ステラが近付いてもホワイトドラゴンは警戒する様子はない。


 撫でられるがままに受け入れていた。



「すごい! この子がこんなに懐くなんて。この子は気難しいから、敵意が無いだけじゃなくて強くないと認めてくれないんですよ」


「賢い子なんですね。ウミアラシちゃんは意外と人好きなんですよ」


「こんなにも巨大なウミアラシをテイムしようなんて、考えた人はいないと思うわ。あなたとの間に信頼関係を感じるもの」


 お互いの魔物を褒め合い続ける。



 すでに二人は戦場にいることを忘れていた。


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