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146話 救出とピーナ

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 その時、不意に聞き覚えのある声がする。


「ふはははっ、無様だなカズヤ。お前が手錠に付けられた姿を見に来たぞ」


「その声はシデンか!? お前、どうしてここに」



 現れたのは黒曜の翼のシデンだった。

 

 武神のごとき勢いで敵陣の中央を切り裂き、カズヤを助けにきたのだ。シデンの放つ威圧感に、敵の兵士は近づくことすらできない。


 他のメンバーを置き去りにして猛攻撃を凌ぎきると、シデンはたった一人で護送車までたどり着いたのだ。


 

「まったく情けない姿だ。こんな奴らに捕まるとは」


「すまない、後ろに鍵があるはずなんだ。手枷を外してくれ!」


 倒れた護送車の格子窓から、カズヤが顔を出す。


「剣聖ごときに負けるとは、修行不足だぞ」


 シデンはいつもの憎まれ口をたたくと、不敵にニヤリと笑う。


 後部から鍵を見つけると護送車の扉をあけ、手際よくカズヤの手枷を外した。



「シデン、ありがとう。また借りを作ったな」


「いつか、きっちり返してもらおう」


 シデンは一瞬だけカズヤに目をやると、すぐに背を向けて再び戦場へと駆けだしていった。



 手錠を外してもらったカズヤは、ステラを助けるためにもう一台の護送車へ向かう。


 護送車の後部には手錠の鍵と一緒に、カズヤたちの電磁ブレードが無造作に積まれていた。


 これもフォンのおかげだった。


 もう一台の護送車から手錠の鍵を見つけると、急いでステラを助け出す。



「マスター、私の衛星攻撃はいかがでしたか?」


「ま、まあ、結果オーライだよ。衛星の一機くらい無くなっても平気だし……たぶんな」


 得意気に胸をはるステラに、カズヤは苦笑しながら返事する。


 衛星を落下させるなんて思いもよらなかった。



 そこへ、大地を揺るがすような轟音が響き渡る。


 その音の正体を確認すると、カズヤはため息をついてステラを見た。


「ステラ、あいつを呼んだんだな」


「戦場をかき乱すには最適です。手伝ってくれるようにお願いしました」


 ステラは当然のことのようにサラリと答える。


 二人の視線の先には、空を覆うほど巨大なウミアラシの姿が見えていた。



 ステラは護送車の中にいる間に多くの手を打っていたのだ。


 衛星落下やF.A.の救援だけでなく、ボットによるホログラムを使ってウミアラシを戦場に呼び寄せていた。


「では、ウミアラシちゃんの所に行ってきます」


 そう言い残し、ステラは軽やかな足取りでウミアラシの方へ駆けていった。





「カズ兄、無事で良かった!」


「なんだよカズヤ、もう逃げ出したのか!? せっかく檻に入った姿を笑いに来たのによ」


 そこへ雲助に乗ったピーナが、さっそうと駆けつけた。


「二人とも無事だったか!」


 戦場を飛び回るピーナの姿を見て、カズヤはホッと胸をなでおろす。



 だが平穏な時間も束の間、その場所にもハルベルト軍の魔導兵器からの砲撃が飛来し始めた。


 爆発音と共に地面が揺れる。


 砲撃は遠くから放たれているにも関わらず、どんどんと被害を拡大させていく。



「この遠距離砲撃を何とかしないとな……」


 爆発で負傷する兵士たち。


 魔導兵器による攻撃で、エルトベルクとタシュバーンの連合軍は一方的な被害を受けていた。



「ふうん……。カズ兄、ピーナと雲ちゃんで壊してこようか?」


「えっ、本当か? でも、さすがに危険だと思うぞ。俺やみんなと一緒に行かないと……」


「他の人は邪魔だからいらないよ。雲ちゃんいくよ!」


 カズヤの制止する声も聞かずに、ピーナは雲助にまたがって出撃してしまう。



 カズヤは透明化魔法を使えるピーナの無敵さを知っていたが、さすがにたった一人でハルベルト軍に乗り込めるのかは自信がない。


 しかし、カズヤの心配は杞憂だった。



 ピーナたちは易々と、魔導兵器の陣地にたどり着く。


「あれが悪さをしているのね。雲ちゃん、もっと近づいて!」


 透明化したピーナは、魔導兵器の回りでステラから借りたブラスターを撃ちまくる。


「えい、えい、えい、えいっ!」


 まるで公園で水鉄砲でも撃ってるかのような無邪気な姿だ。



 魔導兵器に手が届くくらいまで近付いたら、今度は短めの電磁ブレードを振り回す。


 子どもがホウキの柄を握ってチャンバラしているようにしか見えないが、効果は絶大だ。


 次々と魔導兵器が破壊されていく。



「なんだ!?  誰が攻撃しているんだ!」


 敵兵士たちは突然の攻撃に混乱する。


 辺りを見回しても敵の姿が一人も見えない。それなのに、高額な兵器がどんどん壊れていく。


 ハルベルトは自軍内にいきなり敵が入って来ることを想定しておらず、近距離攻撃に対する準備ができていなかった。


 兵士たちは、まるで悪夢を見るように眺めているしかなかった。



 電磁ブレードとブラスターを振り回して、ピーナがさんざん暴れまわる。


「……これくらいでいいかな!? 雲ちゃん、楽しかったね!」


「こんなしょぼい兵器を売りつけるなんて、マグロスとかいう奴はとんだ詐欺師だな」


 遊び疲れたピーナと雲助が戻ってくる頃には、商業ギルド自慢の魔導兵器は全て破壊されていた。



 ピーナたちのおかげで、ハルベルト軍の遠距離攻撃はぴたりとおさまったのだった。


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