143話 ステラの反撃
人工衛星による宇宙からの攻撃だ。
ゴンドアナ軍との戦いや、スクエアでの魔導人形との戦いでも活躍した攻撃だ。宇宙からの攻撃なので通常は防ぎようがないはずだ。
衛星から、一発のレーザー光線が発射された。
それは、ハルベルト軍の後方を狙った天空からの攻撃だ。
「……衛星からの攻撃か。でもごめんね、ステラ。僕の知識を利用して、その攻撃を防ぐための魔導兵器がすでに完成しているんだよ」
衛星攻撃を察知すると、ハルベルト軍の上空に張られた魔導防衛兵器が起動する。
ステラが放った衛星からの光線は、ハルベルト軍の上空で雲散霧消した。
今までも光学系の攻撃は、魔法と同様に防がれてしまうことがあった。今回の衛星攻撃も、対魔法攻撃用の防衛兵器で防がれてしまったのだ。
<まさか衛星攻撃を防がれるなんて想定外だな……。ステラ、大丈夫か?>
カズヤは上空を見上げて嘆いた。
衛星攻撃は、カズヤたちのとっておきの切り札だった。しかし、それすらも安々と防がれてしまった。
<いいえ、特に驚いてはいません。相手がフォンなので、ザイノイドであれば対応可能な攻撃ですから>
意外にもステラは、いつもの冷静な声で答えた。
<それと、マスター。念のため再確認ですが、攻撃に関して最大限の裁量権を私に渡して頂くということで大丈夫ですよね?>
<なんだよ、怖い言い方だな……。でも、さっき言ったように全部任せるよ。何としてもこの状況を打破しないと>
<了解しました。それでは衝撃に備えていて下さい>
予測できない恐ろしい発言をすると、ステラからの通信が途絶える。
そして、しばらくしてカズヤが上空を見あげたとき、我が目を疑った。
なんと真っ赤な火球が、うなりをあげて空から地上めがけて落っこちてきているのだ。
「……すごいよ、ステラ。それは僕でも防ぎようがない。本気なんだね」
上空を見たフォンも、思わずつぶやいた。
それは、真っ赤に燃えて落下している人工衛星だった。
この世界での科学による光学系の攻撃は、魔法と同様に防がれてしまうことが多い。
そこで、物理的な威力で防御網を突破しようとしているのだ。
ステラは護送車で囚われている間に、衛星を落下させる角度、速度、空気抵抗、質量、落下地点を正確に計算していた。
その無慈悲な攻撃は、ハルベルト軍の本隊がある中盤から後続にかけてを標的にしていた。
「な、なんだこれは!? 巨大な火の玉が空から降ってくるぞ……!」
ハルベルトの兵士から、この世の終わりのような叫び声があがる。
落下する衛星は、レーザー攻撃を防いだ防衛用の魔導兵器を軽々と貫通していく。
そして、ハルベルト軍のど真ん中で炸裂した。
隕石が落下したような激しい衝撃と爆風が、ハルベルト軍を吹き飛ばした。
地面が跳ねあがって土埃が舞い上がり、地割れが起きるような爆音と轟音が怒濤のように広がっていく。
その衝撃は、皇帝やカズヤたちを乗せている護送車がある前線まで届いた。
爆風により護送車が吹き飛ばされて、何度も回転して転がり続ける。
ハルベルト軍は、衛星の爆発により大混乱におちいった。あたりは混沌となり、カズヤたちの護送車どころではなくなる。
ステラの衛星落下攻撃により、エルトベルク・タシュバーン・レンダーシア連合軍の反撃の狼煙が上がったのだ。
*
ハルベルト帝国との開戦が決定すると、土魔法使いであるアデリーナ王妃と魔導人形のデオは、闇夜に紛れて旧首都エストラを出立した。
密かに北方にあるレンダーシア公国方面へ進んでいく。
その周囲にはわずかな護衛しか付いていない。大勢で行軍することで、敵軍に見つかってしまうことを避ける狙いがあった。
もっとも、すでにエストラには十分な兵力がいないという苦しい事情もある。
デオは自我が無い魔導人形をコントロールできるという、規格外の魔法を使うことができる。
その能力が、以前は魔導人形がレンダーシア公国を支配するという悲劇の原因にもなってしまっていた。
しかし、それを利用しようとした魔術ギルド総帥ジェダが開発した3万体もの魔導人形は、すでにアデリーナたちの手に渡っている。
アビスネビュラからの攻撃に備えて、エルトベルク王国・タシュバーン皇国・レンダーシア公国の三か国で、それぞれ1万体の魔導人形を配備していたのだ。
ハルベルト軍の侵攻が始まってから、すでにエルトベルクとタシュバーンにある2万体の魔導人形には、デオの魔法がかけられて行進を始めている。
ハルベルト軍と接触したところから戦闘が始まっているはずだ。
しかし問題は、レンダーシア公国にある魔導人形だ。
デオの魔法には距離による限界があり、レンダーシアにある1万体の魔導人形に指示を出すためには、もう少し近付く必要がある。
レンダーシアにいる魔導人形に指示を出すことができれば、ハルベルト軍の背後から攻撃することができる。挟み撃ちにすれば、戦況にも大きな影響を与えるはずだ。
しかしハルベルト帝国の電撃的な侵攻により、エルトベルクとレンダーシアの国境付近はすでに分断されている。
開戦が決定したと同時にアデリーナたちは夜中にも関わらず出発したのだが、レンダーシアの魔導人形になかなか近付くことが出来ず、指示を出せていない状況だった。
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