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137話 三ヵ国首脳会談


 バルザードはアリシアを脇に抱え込むと、バルコニー型になっている窓を壊して飛び降りた。


 雲助に乗ったピーナも、その後をついてくる。



 しかし、そこはまだ城内だ。

 

 部屋のバルコニー下もすでに兵士に囲まれている。


「くそ、キリがないぜ。敵の城のなかだと逃げ場がないのか」


「アーちゃん、ここの下にも通路があるよ! ピーナが隠れんぼしてた時に見つけたの!」


 ピーナが指さす地面を、アリシアがすぐさま魔法で破壊する。


 すると、真下に石がむき出しになった地下道が現れた。



 アリシアたちは地下通路へ降りると、城の外へ向かって走り出す。


「カズヤたちのウィーバーを借りて逃げましょうぜ。姫さんが呼んでください」


 ウィーバーの乗務員として登録されているアリシアなら、離れていてもウィーバーを呼び出すことができる。


 ステラに教わった通り、アリシアは心の中でウィーバーを呼びつけた。



 地下通路を抜けると宮殿の中庭で、そこには先回りしたウィーバーが待っていた。


 前方にアリシアが乗り込み、後方にバルザードが飛び乗る。


 雲助に乗ったピーナも、慌ててウィーバーにしがみついた。



「行くわよ!」


「姫さん、スピードおおお!」


 ハンドルに手を乗せたアリシアが念じると、ウィーバーは弾丸のような速さで空に飛びだした。


 バルザードの悲鳴を残して飛んでいく。


 グラハム皇帝の宮殿が、あっという間に小さくなっていく。



「ごめんね、みんな。必ず助けに戻るから!」


 アリシアが後方を振り返って、見えない仲間たちと約束する。


 一気にハルベルト国外へ抜け出すと、父親の国王がいるエストラへと向かっていった。




 エルトベルク王国の使節団であるアリシアたちが、グラハム皇帝を襲ったというニュースは、すぐに他国へも広まった。


 それは商業ギルドが管理する情報組織が、他国へと間違った噂をばらまいたからだ。


 紙媒体である新聞のようなメディアも使って、反エルトベルクを宣伝する。



 商業ギルドは、平和条約を申し出たのに断られたという振りをするハルベルト帝国側についており、エルトベルクとの戦争も止む無しという世論を煽っていた。


 そんな逆境のなかアリシアとバルザードがエストラに到着すると、すぐに国王と王妃に報告を行った。



「……やはり今回の条約は罠だったのか。平和条約を騙りながら争いをあおるとは、なんと恥知らずな連中だ」


「まずは、カズヤとステラの返還を要求しましょう。そうすれば、彼らの狙いがはっきりするはずよ」


 国王は大国の横暴に嘆息する。


 王妃であるアデリーナは、外交手段でカズヤたちを取り返そうと考えた。



『貴国にて、我が国の要人カズヤ・ステラの両名が不当に拘束されている。至急、理由を説明のうえ、2名の身柄を解放されたし。エルトベルク国王』


 エルトベルク王国として正式に一連の事件の説明と、カズヤたちの返還を求める外交文書を発行すると、ただちにハルベルト帝国に届けられた。



 すると、ハルベルト帝国からの返信がすぐに届いた。


『拘束した両名は、我が国の皇帝に対して暗殺を企てた不届きな犯罪者である。彼らが貴国の要人だと認めるのであれば、エルトベルク国王からの正式な謝罪と、今回の原因となった貴国が隠し持っている宇宙船を、至急我が国に引き渡すべし。未知の技術である宇宙船は、我が国の安全を脅かすものである』



 返書を見た国王たちは、次の方針を模索し始めた。


「やはり話し合うつもりは無さそうだな。予想通り、軍事力を使ってエルトベルクを支配する口実を作るためだったか」


「彼らの狙いが”ウチュウセン”という物だということは分かったわね。アリシア、何のことか分かる?」


「多分、ステラの乗り物のことだと思うわ。どこにあるのかは正確には分からないけど、エストラの北東の森にあるはずよ」


「それならステラさんの許可がいるわね。でも、例え素直に渡したとしても、ハルベルト帝国のことだから戦いは避けられないわ。タシュバーンやレンダーシアにも協力を求めましょう」



 すぐさま、三国首脳会談が行なわれた。


 同盟となった二国にはステラが用意したボットが配備されているので、いつでもホログラム上で会議が開けるようになっている。


 エルトベルク国王の話を聞いて、シデンの父親であるタシュバーン皇国の皇主が口を開いた。



「……奴らはエルトベルクへ進軍するにあたって、何の断わりもなく我が領土を通っていくつもりだ。このような態度は、我が国も敵国と見なしているからに違いない。エルトベルクを葬れば、その帰り道に我が国にも仇を成していくだろう。今回の事件は、エルトベルクだけでなく、他の二国に対しても宣戦布告したものと見なす」



 カズヤたちによって助けられた、レンダーシア公国のレンドア公爵も同調する。


「もちろん、我がレンダーシアも参戦する。これは我が同盟三か国に対する戦いだととらえている。狙うならグラハム皇帝だ。今回は皇帝自身が戦場に出てくるという情報が諜報機関からあがっている。剣聖を連れてきているとはいえ、皇帝さえ捕らえれば戦争は終わるはずだ」


 レンドア公爵の言葉に、他の二人もうなずいた。


 ホログラムによる会議は、三か国の協力体制を確認することで終わった。



「三か国の協力が確認できたのは良かったけど、戦力の差が大きすぎるわ。デオ、彼らが用意した魔導人形を、逆に使う良い機会だと思うけど」


 アデリーナ王妃は、後ろに控えている魔導人形のデオに向かって提案した。


 魔術ギルド総帥のジェダが、エルトベルクを襲うために3万体の魔導人形を用意していた。


 今が、まさに活用するときだ。


 デオは、アデリーナの言葉にゆっくりとうなずいた。


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