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135話 戦闘


「ステラ、君なら分かっているだろう? 左腕が使えなくても、情報処理型の君よりも僕の方がはるかに強いんだ。大人しく従ってくれないかな」


 フォンが悲しそうな顔で提案する。


 カズヤたちと戦いたい訳ではないが、グラハム皇帝に命令されて逆らえないのだ。



「あなたの方が強いと分かっていても、戦わなければいけないのよ。この場からマスターを逃がすためにも」


「君がそんなことを言うなんて珍しいね。よほど素敵なご主人様に出会えたようで羨ましいよ」


 剣聖フォンは、腰にかけた剣を引き抜いた。



 カズヤは、今回の平和条約の茶番劇の全体像が分かってきた。


 やはり平和条約は罠だったのだ。


 平和条約を断れば戦争をするつもりだと脅し、乗ってくればカズヤたちを捕まえるシナリオだ。これもある種の自作自演だ。



「ピーナ。ここから逃げ出して、急いでアリシアに危機を伝えてきてくれ!」


「いいけど、カズ兄たちは大丈夫?」


「俺たちは大丈夫だ。むしろアリシアたちの方が心配だ」


「分かったよ! きっと助けに来るからね!」


 ピーナが雲助に乗って扉へ向かう。



「フォン、あの子どもを捕らえろ!」


 グラハムの命令を聞いて、フォンが捕まえようと動きだす。


 だが、半透明のピーナはするりとフォンの腕をすり抜けてしまう。


「な、なんだ、この子は!? 陛下、捕まえられません!」


 剣聖も驚いて手出しができない。



 ピーナの魔法には、ステラも驚いていたのだから当然だ。


 相手が剣聖だろうと戦闘型ザイノイドだろうと、やはりピーナは無敵なのだ。


 ピーナは扉を通り抜けると、雲助とともに部屋から出ていった。



 その一瞬の隙をついたステラが、皇帝グラハムに向かって襲いかかる。片手には短い電磁ブレードを握りしめ、光線で作られた刃を剥き出しにする。


 いっさい遠慮はしていない。完全に皇帝を失神させるための攻撃だ。



 しかし、フォンが瞬時にステラの前に現れて立ちふさがった。


「は、速い!」


 カズヤの目では捉えきれない程のスピードだ。


 ステラが持っていた電磁ブレードを手刀で弾き飛ばすと、体当たりでステラを後方に吹き飛ばした。



「ふははっ、儂を狙っても無駄だ! 剣聖には儂を最優先で守るように命令してある」


 グラハムが余裕の表情で高笑いする。


「マスター、私が時間をかせぎます! 早くここから逃げて下さい!」


 体勢を建て直したステラが、必死の形相でカズヤに指示を出す。


 ステラはスカートの中に隠し持っていたブラスターを素早く手に取った。そのままフォンに向けて乱射する。


 だがフォンは咄嗟に距離を取ると、撃たれた光線を全てかわした。



 ステラはブラスターを撃ち続けたまま、部屋の壁から天井へと滑るように駆け上がる。


 そして天井から逆さまになったまま、フォンの頭上に光線を雨のように降らせた。


 初めて見るザイノイド同士の本気の戦いは、想像を超えて凄まじかった。


 ステラは片手のブラスターを撃ちっ放しながら、もう片方の手で握りしめた電磁ブレードでフォンに斬りかかる。


 カズヤは、これほどまでのステラの本気の攻撃を見たことがない。全力の戦闘を初めて見た。



 だが、ステラの攻撃をフォンは涼しい顔で避け続ける。


 ステラの電磁ブレードの攻撃を軽々と受け止めると、腕を掴んでひねり上げた。



「ステラ!!」


 ステラがフォンに捕まったのを見て、今度はカズヤは駆け出した。


 ステラを助け出そうと剣聖に殴りかかる。


 しかし、その攻撃もフォンに容易くかわされてしまう。たちまち腕を取られると、地面に頭が着くように抑え込まれてしまった。



「……マスター、逃げて下さいって言ったじゃないですか」


「お前を置いて行ける訳ないだろ……!」


 顔を床に押さえつけられながら、カズヤが声を絞り出す。



 押さえつけられたカズヤとステラを見下ろすように、グラハム皇帝が近寄ってきた。


「……ふむ。二人ともなかなかの強さだが、剣聖の相手にはならないな。こいつらを儂の支配下におけないのか?」


 だが皇帝の質問に、フォンはすぐには答えない。


 答えたくないことに精一杯の抵抗をしているようだ。



「どうした、答えろ!? 命令だ、剣聖フォン!」


 グラハムが脅すような声でわめきたてると、フォンは振り絞るような声で答えた。


「……カズヤさんの方は、どうやら元は人間だったと思われます。おそらく、怪我や病気で失った部分をザイノイドで補っているようです。元々人間種であるザイノイドを支配下におくことはできません」



「まあいい、この男の使い道は後々考えよう。女の方はどうなんだ?」


 フォンは再び黙り込む。


「フォン!!」


「……すでに宇宙船の所有者であるデルネクス人の作戦は崩壊しているので、このカズヤさんに従っているのはステラの自由意思だと思います。強制的にでもステラを支配下におきたければ、宇宙船で陛下を指揮官に任命し、その後にクライシス・モード《危急情勢》を発動できれば可能です」



「なんだ、できるのではないか。そのクライシス・モード《危急情勢》とやらを発動すれば良いのだな。そうなると、やはり宇宙船が必要だ。こいつらの宇宙船はどこにあるのだ!?」



「陛下にも以前ご報告した通り、僕がいた軍事セクションには情報用ボットがないので、宇宙船の正確な場所は分かりません。推測ですが、彼らが現れたエルトベルク国内が怪しいとは思いますが……」


 フォンの予想に、カズヤはどきりとする。


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