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129話 冒険者ギルド総本部


「ただ、治安の方はどうなんだろうな。見るからに物騒な人が多いんだけど……」


 思わずカズヤがつぶやくくらい、街なかでも武器を身につけている人がとても多い。


 街の大通りを堂々と進んでいるアリシアの馬車を見つめる人々の目つきも、少し鋭く感じる。


「ここには色んな人種や職業の奴らが集まるから、正直治安はあまり良くないぜ。警戒心が高くなるのも理解できる」


 かつて、この街に何度も来たことがあるバルザードが教えてくれた。




 しばらく大通りを進むと、前方に真っ白い大きな建物と塔が見えてきた。繊細な装飾がほどこされ、荘厳な雰囲気を放っている。


「アリシア、あの立派な建物はなんだ?」


「あれはサルヴィア教の大聖堂よ。総本山のサルヴィア神聖王国が、すぐ東隣にあるからね」


 すると、その聖堂に入っていく白い服を着た集団が目に入った。


 いかにも崇高な雰囲気をかもし出し、立派な鎧を着込んで腰には長剣をさげている。



「あの白服の集団は?」


「サルヴィア教の神聖騎士団ね。神聖王国だけじゃなくて、こんな風に他国に出入りすることもあるわ」


「えっ、他国の騎士団が勝手に出入りしても大丈夫なのか?」


「言われてみれば確かにそうね……でも昔から神聖騎士団だけは特別なの。エルトベルクは小国だからめったに来ないけど、エストラの教会に出入りすることもあるのよ」


 この世界では、サルヴィア教と神聖騎士団は特別扱いされているのか。


 国と同じように考えるのはおかしいのかもしれないが、他国の騎士団が平気で出入りしていることに、カズヤは少しばかり違和感を覚えるのだった。




「マスター。以前にもお伝えしましたが、この首都全域では衛星やバクボットの情報が一切入ってきていません。ご注意ください」


 ステラが念のため、といった感じでカズヤに重ねて報告する。


「これだけの軍事大国だから防衛もしっかりしているんだろうな。魔法障壁や認識阻害魔法で街全体を守っているのかもしれない」



 城壁を通ってきた感じでは、魔法で覆われている感じはしなかった。それでも、ボットたちの侵入を防ぐ機能があるようだ。


 カズヤたちは衛星やバクボットを重宝しているが、弱点は魔法障壁や認識阻害による魔法だ。


 ブラスターのレーザー光線を防ぐ防御魔法があるように、この世界には衛星からの映像やバクボットの侵入を防ぐ魔法障壁が存在している。


 この世界ではテクノロジーと魔法が同列の扱いになるのが、カズヤにはいつも不思議だった。



「それと、マスター。この街は闇ギルドと呼ばれる裏組織の総本山です。怪しい連中にも用心してください」


「なんだよ、闇ギルドって?」


 こっちの話は初耳だ。


「対価さえ支払えば暗殺や誘拐・略奪など、何でも行なう組織のことです。表向きはヴェノムベイン傭兵団という名前を使っていますが、実際に行なっている活動は暗殺者やスパイを抱える盗賊ギルドと同じです」


 軍事大国というだけではなく、そんな奴らが活動している街なのか。


 不穏な情報を聞いて、カズヤは改めて気を引き締めるのだった。




「そういえばバル、会談の前に冒険者ギルドに用事があると言ってたな」


 カズヤは街を歩きながら、後ろにいるバルザードに尋ねた。


「ああ、そろそろ行かせてもらうぜ。ルガンから大事な要件があると言われたから、無視できねえんだ」


「そのルガンって誰なんだ?」


「冒険者ギルドの総帥だよ」



「総帥って……、ギルド長じゃなくて総帥なのか!?」


「ああ、そうだぜ。冒険者ギルドの総本部がハルベルト帝国にあるんだ」


 総帥と聞くと、カズヤは嫌な思い出がよみがえる。



 カズヤの記憶を魔法で消し、スクエアという収容所に閉じ込めた張本人である魔術ギルド総帥のジェダのことを思い出したからだ。


 ジェダは魔術ギルドという組織のトップというだけでなく、個人としても信じられない程の戦闘力を持っていた。


 そしてアデリーナを誘拐して魔導人形のデオを支配し、黒耀の翼のイグドラを殺した張本人だ。



「なあ、俺も一緒に行っていいか? 総帥も気になるし、冒険者ギルドの総本部がどんなものなのかも見ておきたいんだ」


「まあ、姫さんの警護はステ坊が付いていれば大丈夫か。いいぜ、来いよ」


「ピーナもいるから大丈夫だよ!」


 カズヤは社会経験のつもりでピーナを連れてきたのだが、本人は一丁前にアリシアの護衛のつもりでいるみたいだ。



「総帥のルガンとは長い付き合いだが、ジェダのような奴ではないぜ。もっとまともだ」


 ギルド総帥というとアビスネビュラに繋がっていそうな気がするが、冒険者ギルドは違うのだろうか。


 カズヤは、それを探るチャンスの一つだとも考えていた。



「それじゃあ姫さん、お伝えしてたように冒険者ギルドに行ってきますぜ。ステ坊がいるから問題ないと思いますが、十分用心してください」


 アリシアに挨拶をすると、カズヤとバルザードは別行動をとった。



 隊列を外れたバルザードの後ろを、カズヤが付いていく。


 バルザードは本通りを外れて脇の道へそれていくが、それでも大きな通りが続いていく。ハルベルト帝国の首都は想像以上に大きな都市だった。



「……それにしても、なんでそのルガンって奴が急にバルを呼び出したんだ?」


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