122話 第3章:エピローグ
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ジェダとの戦いが終わると、カズヤたちは王宮に向かった。
そこで、牢屋に閉じ込められていたレンダーシア公国君主――レンドア公爵を助け出した。
「助けてくれて感謝する。奴らは儂を利用する為に生かしておいたのだろうが、むしろ仇になったな。アビスネビュラの支配に決して屈してはいかん、奴らと戦うのだ!」
レンドア公爵の宣言を聞いて、周りの兵士たちから歓声がわいた。
「すまないな、イグドラ……。お前の無念は、必ず俺が晴らしてやる」
ジェダとの戦闘の後、イグドラの前にたたずむシデンの姿があった。
「カズヤ、今回の件は父上に伝える。我々タシュバーンも、アビスネビュラと敵対することは間違いない。いずれ正式に、エルトベルクとレンダーシアに同盟の使節が向かうだろう」
そう言いながら、シデンたち黒耀の翼はタシュバーン皇国へと帰っていった。
その後、タシュバーン皇国を魔導人形で支配するというアビスネビュラの計画を、シデンは父親である皇主に伝えた。
事態を重くみた皇主は、アビスネビュラから離反することを決意した。
ここに、エルトベルク王国・タシュバーン皇国・レンダーシア公国の三ヵ国で、対アビスネビュラ同盟を結ぶことが宣言されたのだ。
また、レンダーシア公国のサークルに置かれていた3万体の魔導人形は、デオの指示により、3カ国にそれぞれ1万体ずつ配置することが決定された。
全体を動かせるのがデオしかいないが、いざという時にはデオが出向けば一斉に起動することができる。
アビスネビュラが作っていた魔導人形の兵士を、こっちが利用してやるのだ。
3万体もの魔導人形がいれば、数でまさるアビスネビュラの侵略を防ぐ、有効な手段になるのは間違いなかった。
スクエア周辺でカズヤたちと別れたレンダーシア軍は、カズヤが閉じ込めていたギムたち魔導人形を連行していた。
自我のある魔導人形たちと話し合いの場を持つが、人間と同レベルで話しあえる魔導人形はまだ多くない。
ギムたち自我のある魔導人形には、戦争を強制しないことを伝える。
その代わり、魔導人形が自分たちで勝手に仲間を増やさない約束をかわした。増やす際には、お互いの協議が必要になることが取り決められた。
「ステラ、ひょっとしてザイノイドも自己増殖できるのか? そうだとしたら人間の地位が脅かされる気がするんだが……」
「もちろん、ザイノイドによる自己増殖は法律で禁止されています。ザイノイドがその気になれば無限に増やすことができますから。人間が管理したいのであれば、制限することも必要です。それよりも……」
「ん、どうした?」
「いえ、私の勘違いかもしれませんが……魔術ギルド総帥のジェダの強さに驚きました」
カズヤたち全員の攻撃を防ぎ切ったジェダの存在に、ステラも信じられないほど愕然としたのだ。
奴が生きている限り、脅威なのは変わらない。
そして、その脅威は特にアリシアが大きく感じていた。
(魔術ギルドの総帥にもなると、とんでもない強さなのね。今のままの魔法で、私はみんなの戦力になれるかしら……)
ジェダとの戦闘では、結果として近接戦を行なったカズヤとバルザード、ステラの攻撃が功を奏した。また、ピーナと雲助の不規則な攻撃も効果的だった。
ベルネラとの戦いでは戦果をあげたアリシアだったが、自分の魔力を大きく上回る魔術ギルド総帥のジェダに対しては、全く相手にならなかった。
(ピーナちゃんは大活躍だったのに私は……)
ジェダとの戦いで、アリシアには大きな課題が残ったのだった。
スクエアから助け出したカズヤの仲間たちは、それぞれ自分たちの郷里へと帰っていく。
そのなかで身寄りがない者たちはセドナへと招いた。セドナでは仕事があふれている。新市街の建設に協力してもらえると助かるからだ。
そして、4年ぶりに王妃が帰ってくることになり、アデリーナは旧首都エストラで大歓迎された。
沿道には市民が詰めかけ喜びの歓声をあげる。アデリーナ王妃が、どれだけ民衆に慕われていたのかよく分かった。
王宮に着くと、門のところで国王が出迎えて待っていた。
「ご心配をおかけしました、陛下。ただいま戻りました」
「よくぞ帰ってきてくれた、アデリーナ。そなたを助けられずに申し訳なかった」
国王が優しく王妃の肩を抱いた。
国王の顔色が明るくなっている。王妃が戻ってきたことで、国王の体調も少しずつ良くなっていきそうだった。
「私たち三か国で、アビスネビュラに立ち向かうために結束しましょう!」
王妃の席に戻ったアデリーナは、開口一番、アビスネビュラに対して団結することを求めた。
王妃の言葉は、不当な扱いを受け続けるエルトベルク王国を更に結束させた。
「……そういえば、リナ。ジェダに何代目の魔術ギルドの総帥だとか聞いていたのは何だったんだ?」
帰還する様子を見ていたカズヤは、ジェダとの会話で気になっていたことをアデリーナに尋ねた。
尋ねる口調は以前と変わりはない。たとえアデリーナが王妃だったとはいえ、カズヤにとっては同居人のリナに違いないのだ。
「ああ、あれね。以前、魔術ギルドの総帥がジェダに変わったときに、前総帥とジェダの魔力の質が変わっていないように感じたの。あの人が持つ魔法は恐ろしすぎるわ」
魔力の質が変わらないというのは、ジェダが以前の総帥の力を乗っ取ったとでもいうのだろうか。
高位の魔法使いであるアデリーナにも、ジェダの強さの底が見えないみたいだ。
「それにしても、私の娘とカズヤが知り合いになっているなんて想像もしてなかったわ。二人はもうお付き合いをしているの?」
「お母様、カズヤとはそんな関係じゃないのよ!」
アリシアは慌てて否定する。
その姿は、カズヤがよく知るいつものリナだった。カズヤの頭を悩ませる、余計なひやかしが増えてしまった。
「マスターは、まだ誰の物でもありませんから」
牽制するように、ステラがカズヤの前に立ちはだかる。
「ステラちゃんも可愛いわよね。カズヤも隅におけないわ」
「いやいや、そんなつもりは無いから!」
思わずカズヤの声が強くなる。
カズヤを取り巻く環境は、いろいろな意味で複雑さを増しているのだった。
第3章 完
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