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109話 魔女ベルネラ

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 ギムがいた部屋の奥には、さらに多くの人間が囚われていた。カズヤは事情を説明しながら、次々と解放していく。


 しかし、一番お世話になったリナの姿がまだ見えない。


 後ろから駆けつけてきたアリシアたちと合流した。



「アリシア、赤毛の年配の女性を見なかったか? リナというんだが……」


「いいえ、そのような人は見なかったわ。そんなに重要人物なら、もっと奥に囚われているんじゃないかしら」



「その可能性が高いな。ステラ、ボットたちの情報はどうだ?」


「すでに、ほとんどの人を助け出しています。しかし、ここから奥の広場には二重に魔法障壁が張られていて、中を見ることができません」


「そこが怪しいな。みんなで行ってみよう」



 カズヤたちは更に奥へと進み、ついにスクエアの最深部の広場へと続く扉までたどり着いた。


 突入しようと、カズヤが扉に手をかけようとした瞬間。



「ちょっと待って! そこの扉から恐ろしい魔力を感じるわ。触らずに破壊した方がいいかも」


 アリシアが、カズヤの腕をつかんだ。罠が張られていたのか。 



「姫さんが魔法を使うまでもねえ。俺様が壊してやる、離れてろよ!」


 バルザードが得意の槍に雷の魔力を込めると、一撃で扉を破壊した。


 すると、扉に込められていた魔力が、誘導されて更に爆発する。



 すると破壊された扉の向こうから、明らかに普通ではない雰囲気をまとった女性が現れた。


「やっぱりその程度の罠ではバレてしまうのね。さすがはアリシア様」


 その女性の髪の毛は、ピンクと紫色のけばけばしい色で無造作に飛びはねている。


 黒いローブをまとっているので魔法使いだと思うが、見た目は若そうだ。もしくは若く見えるように偽装しているだけかもしれない。


 なによりこの女性は、カズヤたち4人の戦力を見ても全く恐れる様子がない。



「ベルネラ! なぜあなたがここにいるの!?」


「魔術ギルドに命令されたのよ。腹立たしかったけど、こんなに楽しいイベントがあるなら悪くはないかもね」


 アリシアがベルネラと呼んだ女性は、この状況を楽しむかのように舌舐めずりする。



「アリシア、あいつは誰なんだ? 友だちとは思えないけど」


「あの人はベルネラよ。魔術ギルドのSランク魔法使い。恐ろしい魔法を使うから気を付けて」


「Sランクだって!?」


 Sランクといえば、バルザードやシデンに匹敵する強さだ。なかでもSランクの魔法使いを相手にするのは、カズヤにとって初めてだ。



「ベルネラの名前なら俺様も聞いたことがあるぜ。魔女というあだ名の凄腕の魔法使いだ。あらゆる属性の魔法を使いこなすだけじゃなくて、あいつの特技は……」


「獣人さん、私の紹介をありがとう。ただ、死んでいく人に褒められても嬉しくないわ。私の魔法は身体で思い知った方が気持ちいいのよ?」


 ベルネラの余裕にあふれた態度は揺るがない。



「おい、リナはどこにいるんだ!?」


「リナ……? ああ、アデリーナのことね。あなたたちの一番の目的は彼女だと分かっていたから、後ろの一番奥の部屋に閉じ込めておいたわ。私を倒せるなら会えるかもね、倒せるならね」


 うふふっと、ベルネラが小馬鹿にしたように笑う。



「なぜ、俺たちの狙いがリナだと知っている!?」


「だって、そこにお姫様がいるじゃない。魔術ギルドに反抗的で有名なアリシア様が」


 ベルネラがにやりと笑う。



 なぜアリシアがいることと、リナが繋がるのだ。


 しかし、ベルネラの言葉を聞いたアリシアの表情が一変する。


 血相を変えてベルネラに詰め寄った。



「ベルネラ、あなた今なんて言ったの!? もう一度名前を言いなさい!!」


「あら、あなたたち知っててここに来たんじゃないの? あなたの母親が捕らえられているって……」



 カズヤはそれを耳にした瞬間、雷に撃たれたように硬直した。


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