107話 スクエア突入
「よし。みんな衝撃に備えてくれ、派手にいくぞ!」
「作戦って、あれのことよね」
アリシアが空を見上げる。
「そうだ、憎きスクエアの正門をぶち壊してやるんだ」
「……発射します」
今までの思いが重なったカズヤの憤激と、ステラの冷静な声が重なる。
ステラが声を発するやいなや、天から光の束が落ちてきた。
宇宙からの衛星攻撃が、スクエアの正門に直撃したのだ。
着弾と共に、スクエアからとてつもない衝撃と轟音がとどろいた。
みんなは耳を押さえて地面にはいつくばる。激しい振動と共に一瞬身体が宙に浮き、その後に土砂混じりの暴風が吹き付ける。
門を壊す程度に威力を加減してもらったはずだが、それでも凄まじい破壊力だった。
「なんじゃ、なんじゃ、なんじゃー!! 何じゃ今の攻撃は!?」
なぜか遠くでゼーベマンが騒いでいる。
シデンには作戦を伝えておいたはずなのだが、ゼーベマンには誰も教えていなかったのだろうか。
「囚われている人を外へ逃がすんだ! ピーナは先に入って、俺たちが助けに来たことを皆に伝えてくれるか」
「分かったよ! 絶対にリナおばさんを見つけて来るからね」
「ピーちゃん、オイラに乗れよ!」
半年前とはいえ、今でもピーナのことは全員覚えているはずだ。内側からも協力してもらえると攻撃しやすい。
ピーナの姿が徐々に消えていく。
消える直前に雲助にまたがる姿が見えた。雲助に乗って飛んでいけば侵入は容易いはずだ。
「ムルダは脱出してきた人達を、スクエアから離れた安全なところに誘導してくれ」
「分かったぜ、任せておけ」
ムルダが敵の目を避けながら、スクエアの方に駆けていく。
「マスター、今の攻撃で建物の魔法障壁が無くなりました。バグボットたちを中に散開させて情報を収集します」
「それは助かる。人間がいる場所が分かったら教えてくれ」
魔法さえなければ、ステラからの情報も期待できる。
壁を破壊されたことで混乱していた魔導人形だったが、門の外にいたカズヤたちを見つけると襲い掛かってくる。
これらの魔導人形は、かつてのカズヤにとっては恐怖の対象でしかなかった。
「……でも、昔の俺とは違うんだよ」
カズヤが電磁ブレードを振るうたびに魔導人形が宙を舞う。
スクエアの中にいるのは、自我もなく、命令された通りに侵入者に攻撃をしかけてくる普通の魔導人形だ。
カズヤが人間だったときには手も足も出なかったが、今のカズヤでは相手にならない。
魔導人形を破壊しながら、カズヤはスクエア内に突撃を開始した。
正門は衛星による攻撃で木っ端みじんに破壊され、まだ土埃がもうもうと舞っている。
この土埃に紛れて侵入するつもりだ。
しかし、瓦礫を乗り越えて、一番乗りで建物に飛び込んだカズヤは、目の前の光景を眺めて立ちすくんだ。
「……な、なんだこの形は!? 建物内の様子が、俺たちがいた時とはまるで変わっているぞ」
スクエア内の形状は、カズヤが知っていた配置とは大きく変わっていた。
以前は口の字の形をした、ただの入れ物のような形だった。
しかし、今はその中に部屋と部屋との区切りができていて、見通しが悪く行動しづらかった。
これでは、どこに仲間がいるのか分からない。それどころか、食事の時間なのに人間たちが一か所に集められている気配がない。
「やはり助けにきたのがバレていたのか……。とにかく、急いでみんなを探さないと」
襲い掛かってくる魔導人形を排除しながら、カズヤは手当たり次第、建物の壁をぶち抜いた。
そして、魔導人形を倒しながらスクエアの真ん中まで差し掛かった時。
カズヤはやっと、囚われていた人を発見した。
「みんな、大丈夫か!?」
せまい部屋に5人ほどの人間が閉じ込められていた。どの顔も見たことがある。
「お、お前は、ひょっとしてカズヤか……!? 川に落ちて死んだと聞いていたけど、生きていたのか!?」
久しぶりにカズヤの姿を見た仲間たちに、笑顔が広がる。暗く怯えていた顔に光が差したようだった。
「ああ、記憶を失っていたせいで、助けに来るのが遅くなってしまった。皆、すまない」
「いや、いいんだ。その代わり、いま助けに来てくれたんだろ?」
男たちの顔に笑顔が戻る。
その返答を聞いて、カズヤも救われた気持ちになった。
「それより、俺がいた時とは建物の形状が大きく変わっている。何があったんだ?」
「お前たちが脱走してから警備が大幅に強化されたんだ。俺たちを一度に集めることもなくなって、個室に閉じ込められてしまったんだ」
「そうか、そうだったのか……」
考えてみれば当然のことだ。
カズヤたちが脱走したせいで、さらに監視と警備が強くなってしまったのだ。
「俺たちのせいですまない。なかなか皆を発見できないんだが、どこにいるか知っているか?」
「いや、申し訳ないが分からない。今朝の作業中に、急に集められて部屋に閉じ込められたんだ。お前たちが来るのを分かっていたかもしれないぞ」
ということは、今日の朝方には既に情報が伝わっていたということだ。
もしカズヤたちが予定通り徒歩で進んでいれば、今日たどり着くことはない。ウィーバーに乗り込んだのを見て、通信用の魔石で連絡でもしたのだろうか。
想像以上に迅速な対応に、カズヤは嫌な予感が頭をかすめた。
読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→★★★★★』と、『ブックマークに追加』をして頂けると新規投稿の励みになります!




