101話 黒耀への依頼
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「実は今、ピーナが何処にいるのか俺にも分からないんだ。……ピーナ、そろそろ出てきなよ」
「わあっ!!!!!!」
「ぎゃあ!!」
悲鳴をあげたのはカズヤだった。ピーナはカズヤの背後に立っていたのだ。
「お、驚いたあ……。お姉さんたちを驚かせようと言ったじゃないか、俺を驚かせてどうするんだよ」
ピーナはカズヤを驚かせることができて、楽しそうにニカニカ笑っている。自慢げに話していたカズヤも体裁が悪い。
「それにしても、こんな魔法は聞いたこともないわ……」
「儂だって聞いたことないわい。ピーナちゃんといったね、タシュバーン皇国に来ないかね? 国賓として大歓迎じゃよ」
あいかわらずゼーベマンが勧誘しているが、国賓の意味すら分からないピーナはキョトンとしている。
それに、すでに誰もゼーベマンの相手をしていない。皆の目は黒妖精族のリオラに向けられていた。
ステラが黒耀の翼にいたときの話で驚いたのが、このなかで一番年上なのがリオラだということだ。
黒妖精族の寿命は500年以上あり、リオラはすでに200歳を越えている。
見た目は明らかにゼーベマンの方が年上だが、美しくて妖艶なリオラが最年長だとは、カズヤは説明されてもしばらくは信じられなかった。
「……残念ですが、私もこのような魔法は聞いたことがありません。でも、エルフ族の子どもは幼少期に特別な魔法を使えることがあると聞いたことがあります。大人になるにつれて消えていくとか。ひょっとしたら、子どものうちだけの特別な能力かもしれません」
なるほど、この透明化魔法はピーナが子どもの時だけ使えて、大人になる頃には消えてしまうのか。
その説明は、すんなり納得できた。
なぜならピーナの能力は無敵過ぎるのだ。このまま大人になっても使い続けられるとしたら、世界征服だって可能だろう。
「ピーナちゃんがこんな魔法を使えるなら問題ないわね。一緒に行きましょう」
ピーナの能力も見て、アリシアも納得してくれたようだ。
そして最後に、カズヤにはどうしても力を借りたい男がいた。
「シデン。黒耀の翼として、この事件を解決してみないか?」
「興味深い話だが、俺たちがただで動く訳にはいかないな。お前らが依頼主にでもなれば話は別だが」
興味深そうに話を聞いていた割には、条件をつけてくる。
黒耀の翼に対して、冒険者として依頼を出せということか。
「いくら払えばいい?」
「1日500万Eだ。人間たちの解放に成功したら、更に成功報酬をもらう」
シデンがにやりと笑った。
500万E……。そうなのだ、こいつはこういう男なのだ。
気位が高く冷酷な雰囲気を出しながら、”実は相手のことを気遣っている”。
1日500万という金額はとてつもなく大きいが、通貨をエルトベルクが流通させているEにしてくれた。
Eはアビスネビュラのせいで、タシュバーン皇国の一部の都市を除いて、他国との取り引きでは使えない。国内でも余っている通貨だ。
Sランク冒険者の黒耀の翼を、1日500万Eで雇えるなら十分安いのだ。
カズヤはアリシアの方を確認する。アリシアは肯定するように深くうなずいた。
「分かった、出そう」
「出発はいつだ?」
「明後日にしよう。セドナの旧市街へ来てくれ」
「分かった、それまでに準備しよう」
これで奴隷として囚われている仲間を助けに行く陣容は整った。
記憶が無かったとはいえ、仲間たちを放置していたことに、カズヤは申し訳なさが募る。
1日でも早く助け出したい。
セドナに戻ると、カズヤたちは急いで準備を進めるのだった。
*
出発の前日、アリシアから意外な提案があった。
「冒険者として出かけるなら、パーティーとして名前を付けた方がいいと思うんだけど」
確かに冒険者がグループになって行動するなら、パーティーになっていた方が違和感は無い。
メンバーになるのは、カズヤとステラ、アリシアといったところか。バルザードは冒険者ランクを剥奪されているので入れないだろう。
「いいけど、どんな名前にする?」
「カズヤなら、どんな名前がいいと思う?」
質問に質問で返されてしまった。アリシアのことだから、すでに名前を考えついてそうだが。
「うーん……、いいのが思いつかないな。ステラなら何て付ける?」
カズヤもすぐには思いつかず、たらい回しのように質問を振っていく。
「そうですね……。"センチュリオン"なんて、どうですか?」
「かっこいいけど、この世界には少し似つかわしくない気がするなあ」
地球の戦車にもセンチュリオンという名前があった。
ステラがどうやってこの名前を思いついたのかは知らないが、ここの魔法世界には少し合っていない気がする。
「私はいいのを思いついているの。"翡翠の幻想 戦乙女団"なんてどうかしら?」
アリシアがドヤ顔でこちらを見る。しかし、カズヤがいるのに戦乙女は無いだろう。しかも長い。
微妙な空気で皆が黙りこくっていると、バルザードが口を開いた。
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