100話 ピーナの才能
祝100話!
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「俺たちが助けに行って、セドナを空にしても大丈夫かな?」
カズヤは確認するようにステラを見る。
「前回の戦闘でゴンドアナ軍やメドリカ軍を壊滅させているので、すぐに襲ってきそうな周辺国はありません。エルトベルク国内でも、大きな動きはしばらく無さそうです」
しばらく問題はなさそうだ。不穏な動きがあったら、すぐにステラに教えてもらえばいい。
セドナの新市街の建築や、エストラの往復はボットたちに任せておけばいい。移住者の受け入れは指示をして、非常時の連絡さえしてもらえれば、カズヤたちがいなくても何とかなるかもしれない。
「分かった、アリシアが助けてくれるなら有難いよ。ということは、バルも来てくれるんだな?」
「もちろんだぜ。そんな危険な場所に、姫さん一人で行かせる訳にはいかねえ」
カズヤにとっても、アリシアとバルザードの協力が得られることは大きかった。
「ムルダも一緒に来てくれるんだろ?」
「ああ、そのつもりだ。戦闘では役に立てないと思うが、俺だって皆を助けたい。出来ることがあれば何でも手伝うぜ」
「そうなると、スクエアの正確な場所が知りたいな。ステラ、レンダーシア公国のどの辺りにあるか分かるか?」
「そのことなんですが……。マスターの話を聞いてから、すでに人工衛星を使ってレンダーシア公国内を探しています。四角い怪しげな建物は見つけたのですが、認識阻害の魔法がかけられていて詳しく調べられません」
スクエアのトップは魔導人形のギムだったが、更にその上にいたのは人間の魔法使いだ。
カズヤの記憶を消したあいつなら、建物全体に魔法をかけることくらい可能な気がする。
「おそらく、そこがスクエアで間違いない」
「もちろん、ピーナも行くからね! 絶対リナおばさんを助けるんだから!」
「ピーちゃんが行くなら、オイラも行くぜ」
元気な声でピーナが手を上げる。
収容所ではずっとリナおばさんの世話になっていた。脱出する時に、ピーナはリナを助けに行くと約束しているのだ。
そして、ピーナが行くなら雲助も付いてくる。
「……でも、ピーナちゃんの気持ちは分かるけど大丈夫かしら。戦闘になったときに守り切れる保証は無いのよ」
小さな女の子が戦場に行くことを、アリシアは心配している。
しかし、ピーナに限ってはその心配は必要ない。
「いや、大丈夫だぞ。むしろピーナがいてくれた方が助かると思う。脱走だって、ピーナがいなかったら不可能だったんだから」
「えっ? そこの雲助ちゃんって子のおかげかしら。たしかに空を飛べるのはありがたいけど……」
カズヤの言葉を聞いても、アリシアはまだ心配している。たしかに、ただの小さな女の子なら戦場に連れて行くわけにはいかない。
しかし、ピーナは特別なのだ。
「みんな、ピーちゃんの力を甘く見ているようだな」
雲助も、ピーナへの信頼は揺るがない。
「そうなんだ。ピーナの魔法はそんなものじゃないんだよ。ピーナ、まだあの魔法は使えるのか?」
「いつでも大丈夫だよ!」
「よし、それなら、ここのお姉さんたちを驚かせてやろうか」
「ふふふっ、分かったよ!」
元気な声で答えると、ピーナの姿がだんだんと薄くなってくる。
後ろにある部屋の壁や机が、ピーナ越しに透けて見えてきた。
「ちょ、ちよっと、どういうこと!? まるで幽霊のように姿が半透明になったわ」
この世界にも幽霊がいることの方にカズヤは驚いた。しかし、アリシアはそれ以上に驚いている。
ステラが半透明のピーナに触ろうと手を伸ばすが、スルリと通り抜けてしまう。
「熱探知や電磁スペクトル上では、彼女は確かにそこに存在しています。しかし、視覚的に見えないだけでなく、物質的にもさわれないなんて……」
ステラが驚くのはかなり珍しい。
「こんなもんじゃないぞ。ピーナ、完全に姿を消してやれ」
カズヤの言葉を聞いてピーナはニコリと笑う。
ピーナの姿は更に薄くなり、完全に透明になってしまった。
「信じられません。光学的に姿が見えないように偽装することは可能です。しかし、物理的にも姿を消す方法は、私にも分かりません……」
ステラの戸惑いが伝わってくる。
「ステラにも分からないことがあるんだな」
「基本的に私たちザイノイドは、物質や物質の運動など、実在するものを観察するところから考えます。しかし、この世界の魔法は、目に見えない心象や想像力から炎などの物質を具現化します。出発点が真逆なので理解するのが難しいのです。最後には同じところにたどり着くとは思うのですが……」
ステラなりに、何とか魔法を理解しようとしているようだ。
「それに気付いたかい? ピーナだけでなく、着ている服や雲助の姿も見えないだろう。小さな物しか出来ないんだけど、ピーナが触れている物も一緒に消えるんだよ」
「ちょっと信じられないような魔法ね。これは、どのくらいの時間消えていられるの?」
「半日は余裕じゃないかな。ピーナと隠れんぼをすると、絶対に見つけられないんだ。魔導人形の奴らが、何度もピーナに手錠や足枷を付けようとするんだけど全く効果ないし。脱走するときには壁を通り抜けて、裏から扉の鍵を開けてくれたんだよ」
もちろん敵の攻撃を受けることだってない。
ピーナはまさに無敵なのだ。
カズヤはまるで自分の手柄のように得意気に話している。
「実は今、ピーナが何処にいるのか俺にも分からないんだ。……ピーナ、そろそろ出てきなよ」
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