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神の力、人の力


「あのインチキ野郎をどうやって倒せばいいんだ?」


 俺に不意打ちを仕掛けたツクヨミは、今は師匠と戦っている。


 彼女が振るう剣に対して、奴は腕を刃に変えて切り結んでいる。剣術は師匠の方が上みたいだ。ツクヨミはたびたび腕や足を切り飛ばされている。


 だが、いくら手足を切られてもツクヨミは死ぬ様子がない。

 切り落とされた腕が落ち、床の上で溶けたかとおもうと、元に戻っている。


 こんなHP無限チート野郎を相手にどうしろと?

 いや……何か方法があるはずだ。


『師匠がぶった斬りまくってるのに、アイツ全然効いてないよ?』


『まるでダメージになってないみたいですね。これではキリがありません』


 光で実体化……概念とかなんとか……。

 ダメだ。何か繋がりそうだが、手がかりが曖昧(あいまい)すぎる。


 トラップは効いたが、ダメージと言うには微妙だ。

 もっと根本的な対策をする必要がある。


「なぁ、大国主(オオクニヌシ)、ツクヨミはミラービーストの信仰で肉の体を得たとかなんとか……そんなのあり得るのか?」


『うむ、その者たちの強い信仰を後押しにして、こうして現実の世界に現れているんじゃろう。じゃが、まだ薄いのう』


「完全に現れるには、まだ信仰が足りてないってことか?」


『うむ。じゃからこそ、触手や刃にした手足と言った、末端だけを実体化させて、こちらに干渉しているんじゃろうな』


 信仰が、祈りが足らない。だから肉体が中途半端ってことか。


 ――あっ、ふーん……。


 配信の様子は……お、これならいけるんじゃね?


大国主(オオクニヌシ)、ちょっと相談が――ゴニョゴニョ」

『ふむふむ……行けると思うが、お主ってホントにアレじゃな』

「ま、いいだろ? モノは試しだ」

『まぁやってみぃ』



<ギィン!>

<カキィンッ!!>


「少し疲れが見えますよ。そろそろ休まれては?」


「あんたみたいな男の相手が、かったるくて仕方がないだけだよ!」


<ギンッ!!>


「ツルハシ! こいつを何とかでき……なんとか……?」


 俺は師匠とツクヨミの前に立ち、Gomazonで買った下から1番目のお神酒(工業用アルコール添加、飲用不可)を捧げるようにして腰を前に折った。


「ツクヨミ様!! 私が悪ぅございました!!!」

「ちゅるはしは貴方様のシモベでございますぅぅぅぅ!!!」


『はぁ?! なにやってんのツルハシ!?』

『ツルハシさん!?』


「ツルハシ、キサマ……私に祈る、だと……? ――まさかッ!!」


「配信をご覧の視聴者の皆さん、ツクヨミに祈ってください!!! ダンジョン安全でも学業成就でもなんでもいいです!! そうすればこいつは実体化して――」



「ブン殴れるようになります!!!」


「キ、キサマァ……!!」



 俺は配信を見ている視聴者に語りかけ、眼前のツクヨミに祈るよう頼んだ。

 いつの間にか、配信画面に表示されている視聴者は100万近くになっている。


 このうちの10人に一人が祈ったとしても10万人だ。この物量なら、ミラービースト1体の祈りの重さなんか、軽く飛び超えるだろう。


 ケヒャヒャーーー!!

 ツクヨミのアホめ、現代の配信文化を甘く見たな!!

 俺様の元◯玉を喰らえええええええ!!!


「なんてったって実際に居るんです!! さあツクヨミにお祈りしましょう!! 合格祈願、交通安全、病気平癒! 何でも引き受けてもらえますよ―!!!」


「祈るなら今!! さぁ皆さんご一緒に! ツクヨミさまー!!」


『ゲ、ゲスい……!!』

「こんな斜め上で来るとはねぇ……」


『そういえばそうでした。ツルハシさんは遠慮なく他人を頼って、こういうことをする人でした……』


 視聴者に祈りを捧げるよう、俺が頼んでから間もなくそれは起きた。

 ツクヨミの体に異変が起き始めたのだ。


「『不味イ、この肉体には、祈りが収まりきらン……ッ!!』」


 ツクヨミの体がねじまがり、その姿を変える。

 形の良かった顔は潰れ、無定形の肉の塊となり、ポッカリと穴の空いた円錐形の頭部に変わる。長いすらっとした脚は3本の肉肉しいものに生え変わった。


 しなやかなだった手も。鉤爪(かぎづめ)のある触手のような腕に変わり、拍動するように伸び縮みしている。


 その姿は、まさに()い寄る混沌(こんとん)が形を取ったようだ。


「こいつは……『邪神・ニャルラトホテプ』!!」


「知ってるんですか、師匠?」


「ああ。千の(かお)を持つ神。無数の神々の力を宿した、神の集合体。こいつはそこに居るが居ないなんて言われてる。だから《《ズレ》》てたんだね」


「よくわかんないですけど、神様の力の借りパク野郎ですか」


「『おい!!! 言い方ァ!!!』」


「ツクヨミの名を(かた)って、借り物の力を手に入れたのは良かったけど、アンタの配信の視聴者の祈りがまともに注ぎ込んで、間に合わせの体じゃ間に合わなくなった。そんなところかね」


『完全に実体化した邪神なんて始めて見ましたよ……』

『あんまりしたくない体験だね―』


「『ツルハシ男、あなたは本当に面白いことをしますね……』」


「照れるわ」


「『褒めてませんよ。しかしここは退くとしま……退く……アレ?』」


「ツルハシの視聴者から、あんだけの信仰を受けて実体化したんだ。いまさら影になって逃げられるわけ無いだろ」


「『アッ』」


『さて、逃げる心配がなくなったところで』

「おしおきタイムといくかね」


「『アッアッアッ』」



 俺の言語能力ではとても言い表せないような、きっついお仕置きを受けたニャルなんとかという邪神は消えた。恐ろしい戦いだった……。

 ぶっちゃけ俺、何もしてないけど。


「ふぅ。正義の勝利ですな」

『あれを正義と言ったら、何か大事なものを失いそうです』


『ま、それはそうと』

「だね」


『ツルハシの友だち……やっぱやめよっかなー』

「あたしらにも世間体ってもんがあるしね」


「そんなぁ?!」

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