狩人とキツネ
「いま一層ですが、……熱がすごいですね。対策装備をして前に進みます」
俺は火鼠の皮を使った、サンダル状の靴を今の靴の上から履く。えーと、みんなも持ってるな、ひとまずこれで問題ない。
配信を開始して間もないのに、視聴者数のカウントが回りまくってる。
あっという間に3万を超えたな。まだまだ数字の増加は収まる気配がないぞ。
「廊下が悪意マシマシで作り変えられてますね。ギロチンと……遺体を見るに、横からの射撃の組み合わせですか。なかなか無駄のない構成ですね」
「ですが、俺は壁を崩せます。早速、崩していきましょう」
『ツルハシさん、待ってください』
廊下の横を掘っていこうとした時、ラレースからストップがかかった。
なんだろう?
『ミラービーストはツルハシ男さんの存在を知っています。何か対策がされていてもおかしくありません』
(――あっ、それもそうか)
「そうですね。おっしゃるとおりだと思います」
『何か壁の奥を探索できる手段があれば良いのですか……』
「なら、あれを使ってみますか」
俺はジジイから預かっていたヒトダマを所持品から取り出す。
この子は壁を超えて連絡をするために、仮拠点で使用していたものだ。
ヒトダマならダンジョンの壁を通り抜けられる。
つまり、壁の裏に何があるかを探れるということだ。
この子を使えば、ミラービーストのやった「対策」を見破れる。
「ピュ~イ?」
「ちょっと頼みがある。この壁の裏に何かないか、見てきてくれ。」
「ピュイ!」
……そう言えば、水葬海域でラレースがイクソシズム使った時、俺、そのそばに居たよな。ヒトダマが所持品欄に入っててよかった……。
うっかり消滅してたら、ジジイにどう説明すれば良いかわからん。
「お、帰ってきたよ」
『ヤバ、ちょっとかわいいかも』
「どうだった? 壁の他に何かあったらその場で一回転してくれ」
一回転。
ラレースの言う通りだった。
ミラービーストのやつ、壁の中に何か仕込んでいるみたいだ。
うっかりそのまま掘っていたら、危ないところだったな。
「何かあるみたいですね。注意して掘っていきましょう」
『ツルハシさん、援護します』
ラレースが防御スキルを展開して、俺を保護の範囲に入れる。
これで多少は安全になったな。
ギロチンがジャキンジャキンとリズムを刻む、地獄の廊下。
俺はその廊下を支える右横の壁を掘ることにした。
いきなり爆発とかしないでくれよ……!
俺はブロックの真正面に立たないよう、立ち位置を調整する。
そして、ツルハシを注意深く真横に振った。
<ガチン!>
壁が消えた瞬間、壁の中から槍が突き出された。
銀色の穂先はラレースの展開した光の盾をこすって火花を散らす。
<ギィィィン!!>
「おぉ、ラレースさんの言う通りでしたね……」
――いいセンスだ。これはなかなか避けづらい。
おそらくこの横にも、この槍トラップが並べられているに違いない。
……しかしひっでぇ事するな。これミラービーストだよね?
俺の性格が幻影に反映とか、されてないよね?
『これは……「お返し」でしょうか?』
「お返し?」
『ミラービーストは、ツルハシさんの置いた、槍のトラップで絶命しましたから』
「あぁ……」
ミラービーストのやつ、どうやらあの事を恨んで、忘れていないらしい。
いい性格してるよ。
さて、不意打ちならまだしも、ネタが割れたら大したことない。
「いっせーの……ちょいっとな!」
槍が伸びるのに合わせて、ツルハシを当てる。
すると槍ブロックもそのまま消えて俺の所持品に入った。
「こんな感じに、ひとつひとつ解除して、道を拓いていきます。」
「あちらが罠の達人なら、こちらは開拓の達人です。狩人とキツネの知恵比べと行きましょう」
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地獄のギロチン廊下の壁の中には、トラップがたっぷり埋め込まれていた。
どうやらミラービーストのやつ、俺とトラップ対決でもするつもりか?
あとに続く探索者の安全のために、ギロチン廊下も破壊しておくか。
壁を破壊し、スケルトンスナイパーのドタマを、ラレースが背後からカチ割る。
そしてこっちを向いて配置されていたスナイパーを、バーバラが銃で仕留めた。
「この廊下のギロチンは足止め用みたいですね。振り下ろされたギロチンが元の位置に戻るのを待ってる間、左右から矢を射かける。これが本命ですね」
『凄まじい悪意ですね』
うむ。あまりにもクソゲーすぎる。
ミラービーストのやつ、絶対テストプレイとかしてないな。
俺はギロチンを全て回収すると、先を急いだ――




