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ネオ・エキセントリック・デス浜離宮

「なんか……」

『雰囲気が以前と変わってますね』


「なんだいこりゃ、まるでゴーストタウンじゃないか」


 浜離宮に到着した俺たちは、入ってすぐの探索者村を訪れたのだが、村は閑散としていた。飯を売る屋台にいつものような人の姿はなく、宿も空っぽだ。


 宿には探索者が使ってた寝袋や食器がそのままになっている。

 慌てて逃げ出したのか、それともまた帰ってくるつもりだったのか……。


『探索者村がここまでガラガラなのは初めて見ますね』

『どーなってんの?』


「おい、騎士さんたち、ダンジョンの中に入ろうってのかい? やめときな」


 俺たちが探索者村を見回していると、ドリンクスタンドのオッサンが話しかけてきた。オッサンはひどく疲れ果てた感じで、古い雑巾が人になったみたいだ。


『何があったんです? 私達は数日前までここにいたんですが、こんな風ではなかったと記憶しています』


「まぁまぁ、その前に何か買っていこう。オッサン、4人前だ」

「あいよ!!」


(ツルハシさん!?)

(客がいなくて困ってそうだからな。せめてなんか買っていこう)

(あ、なるほど……)


 一応変装らしきものをしている俺は、ちょっと声を裏返させてオッサンに話しかける。初対面ならわからんやろ。多分……。


「そんでなにが起きたンだ?」


「ツルハシ男って奴のせいで、ダンジョンがムチャクチャになっちまったのさ」


『ダンジョンがムチャクチャに、ですか』


「罠の位置は変える、モンスターは別の場所に誘導する。でもって、ダンジョンの難易度が完全におかしくなっちまった」


「第一層でレベル40のパーティが壊滅したって話だ。ほとんどの探索者は、別のダンジョンにいっちまったよ」


 ツルハシ男なら、目の前にいますけどねー。

 そんな事をした記憶は俺にはない。ミラービーストのしわざだな。


「じゃぁ、ダンジョンの中は今は空っぽって事か?」


「最初は配信のために面白がって入ってる奴らもいたけどさ……」


「なにせ、すぐにおっ死んじまうし、ダンジョンが難しすぎて死体も回収に行けないってなると、そんな連中もすぐにいなくなった」


 頭が悪いことで有名な凸系配信者も、殺意マシマシの相手には弱いからな。

 まともに攻略出来ないなら、攻略系配信者もくるわけもなし。


「こンな有様になるわけだ。オッサンはどうして残ってる?」


「はぁ、どこか他所へ行くにしても、護衛を雇う金もないからな。」


「レモネードの味が薄くなるわけだ。よし、なンとかしてみるか」


「あんたら、ここまで聞いても行くのかい?」


「あぁ、帰りも寄るから、砂糖を倍にしてまっててくれ」


◆◆◆


 俺たちは屋台を後にして、ダンジョンの入口へ向かった。

 そういえば、ひとつ気がかりがあったな。


「心配なのが師匠なんですよねー」

『師匠がですか? 師匠は何があっても大丈夫そうですけど』


「師匠は平気だと思うんですけど、ミラービーストが師匠を幻影化したら……」

『あ、ヤバいやつじゃんそれ』


「なに言ってんだい。それが面白いんじゃないか!!」


『……師匠の言った、「面白そうだからついて来た」って……』

「まさかそっち?!」


「幻影とはいえ、自分と戦うなんて稽古にはもってこいだからね」


「怪獣同士の戦いに巻き込まれたら、こっちはフツーに死ぬと思うんですけど」

『ツルハシさん、諦めてください。師匠ですから』

「デスヨネー。」


 そして俺たちはダンジョンの第一層に足を踏み入れたのだが……。

 なんか、思った以上にすごい事になっていた。


「……ネオ・エキセントリック・デス浜離宮って感じ」

『ですね……』

『リアルにヤバすぎて、秒で死にそう』


 第一層は完全にその姿を変えていた。


 「炎威の獄」さながらに床から炎が吹き上がっている。もうこの時点でダンジョンが人の立ち入りを拒絶しているのがわかる。


 そんで、一体どっから持ってきたの?

 通路にはギロチンが並んでいて、地面に刃を落とす音でリズムを刻んでいる。


 トラップだけではない。

 ギロチンの横には何かの穴があり、矢の突き刺さった死体が転がっている。


 目をこらして見てみるが、矢はトラップにありがちなダーツじゃない。

 あの横穴、多分スケルトンスナイパーがいるな。


「過酷な環境に加えて、致死的トラップ。そしてモンスターのあわせ技か」


『偽ツルハシやばない?』

「ヤバイですね。ここまでやるとは思ってなかったわ」


「ただまぁ……こんだけメチャクチャになってると、逆に助かるかな」

『ですね』


 俺はフードを脱ぎ、いつものヘルメットを晒す。

 そして二拍手で表示枠を出すと、配信の準備を始めた。


大国主(オオクニヌシ)、カメラを頼む」

『承ったぞい。今回はお主を多めに写せ、じゃな?』

「わかってるじゃない」


 ……よし、設定終わりっと。


「なんか久しぶりすぎて、変な感じ」


『あーツルハシのそれ、わかるかも。前やってたスポーツ久しぶりにやると、手とか足の神経がつながり直すみたいなのあるよね』


『配信でも、そういうのってあるんですか?』

「はい。普段使わない脳みそ使うんでコレ……」


 ――深呼吸。よし、放送開始だ!

 大国主が俺に向けたカメラに対して、俺は語りかける。



「えー皆さんお久しぶりです。『ツルハシでダンジョン開拓します』のツルハシ男です。ちょっと出掛けてまして、数日ぶりに浜離宮に帰ってきたんですが……なんかすごいことになってますね」


 俺はダンジョンの様子を映して、話を続ける。


「トラップだらけになって、モンスターも配置が変わってるようですね」


「コレは俺、ツルハシ男の仕業じゃないです」

「ニセツルハシ男、俺はミラービーストと呼んでいますがそいつの仕業です」


「こいつは新種の【はぐれボス】で、出会った探索者を幻影として呼び出し、その探索者のスキルを行使することが出来ます」


「今のダンジョンの惨状は、その【はぐれボス】がやったことです」


「いくら幻影とは言え、俺にも原因があるので、始末をつけましょうか。」


「今回の配信ではミラービースト……いや、」



「ニセツルハシ男を退治します。」

 

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