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ふたたび浜離宮へ


『浜離宮に戻るの、何故かすごい久しぶりな気がしますね』


「ほんの数日で、色々ありすぎましたからね……で、だ」



「――なんでバーバラさんと師匠もついてきてるの!?」


「面白そうだったからね」

『それに、船出す人が必要っしょー?』


「それはそうなんですけど……」


 一夜明け、俺とラレースは対ミラービーストの作戦を決めることにした。

 それにはスレの住人も交え、あれこれと話し合って綿密な打ち合わせをした。


 その後、やることが決まった俺たちは、教会の持ってるモーターボートを拝借し、浜離宮へと向かっているのだが……。


 なぜか、船の上にはバーバラと師匠までいる。 

 いや、助かるんだけど、師匠はともかくバーバラは大丈夫なんだろうか?


「バーバラさん、俺たちについて大丈夫なんですか?」

『そこはほらアレ、センパイの使うトリックってやつですよー』

「なるほど?」


『人聞きが悪いですね。今回は正攻法、研修という事にしてねじ込みました』


「……なんだかんだラレースさんって――」

『センパイは総長と違って、頭がやーらかいですから。』


「ま、ミラービーストの対策を練ってるときも思ったけど、ラレースさんって俺とはまた違うエグさがあるっていうかな……」


『センパイって容赦なく詰めるタイプだよね』

「あー! そうそう。」


「ラレースと話してると、俺の立てる作戦って、穴が多いんだな―って思うわ。そういうのに気づいて、ポンッて埋めてくれるんだよな」


『そういうとこはセンパイ、マジでヤバイからね。でも――』


(一人だと割りかしポンコツだよな)

(うん、わかりみ)


『聞こえてますよ!!』


◆◆◆


 1時間程度の航海で、俺たちは浜離宮近くの放棄された桟橋についた。


 船を降り、ボートを桟橋の杭につなぎ留める。

 だが、このままにしておくと盗まれそうだから「対策」をしておく。


「さて、自前のハンマーの威力を試しますか」

『ようやっと自分で作るか。お主も成長したのう』


「やかましいわ。元はと言えば大国主(オオクニヌシ)が俺がツルハシしか持ってないのを忘れてたせいだろ」

『むむむ。』


 俺は設計図をボートの周りに置いて、船を完全に囲い始める。

 閉じ込めてしまえば、盗みようがないだろっていう寸法だ。


 手近な地面から床を伸ばし、船の周りを完全に囲った。

 よし、ハンマーを振るうとするか。


 これは俺自身の力で、どれだけ建築ができるかのテストでもある。


 お台場は人が多かったから、実験したくても中々出来なかった。けど、浜離宮にほど近いこの海岸は、ほとんど人が来ないので、実験にはうってつけだ。


 まず、ラレースと俺には「槌術」、スキルの大きな差が有る。


 彼女の「槌術」は90後半。師範(マスター)クラス。

 一方の俺はほぼ0。駆け出し(ビギナー)だ。


 大国主(オオクニヌシ)によると、このスキルの差は建築した物の性能に関係するらしい。だとすると、ちと問題が出る。


 もし、対ミラービースト戦で建築をするなら、俺が自分で作るよりも、彼女に頼んだ方が良い物ができる、という事になるからだ。


 しかし、どこまで性能に差が出るかは、作ってみないとわからないそうだ。

 ま、大国主のジョブだしな。適当なのはしょうがない。


「さて、やってみるか!」


 俺は手近な床の幽霊にハンマーを振り下ろした。

 1回。2回。まだ出来ないが、ちょっと木の色がはっきりしてきた。


 3回、まだか、4回! ……できた!!


 スキル0の俺がどこの馬の骨かわからんスレッジハンマーを振り下ろすと、4回で完成するらしい。ラレースとの差がエグいな……。それに――


『ねー、なんかショボくない~?』

「なんか板の一本一本がガタガタだし、形も(ゆが)んでるねぇ」

『これは……「槌術」の差が露骨に出ていますね』


 そうなのだ。

 出来上がった木の床の見た目がもうやばい。

 小学生の工作の方が、まだマトモに見えると思う。


「見た目だけでも、ここまで差が出るのか……もしかして、耐久とかも?」

『有り得そうですね。叩いてみましょうか?』


「ラレースさんや師匠だと強すぎるかも? バーバラ、ちょっと頼む!」


『え、あたし? まぁいいけど……スキルなしで叩けば良いんだよね?』

「うん、それで頼む」


 バーバラが銃のストックを、俺が作った床に振り下ろす。

 すると、床はその場でバラバラに崩れ落ちた。


「……えぇ?」

『なんかかるーく、ぺいって叩いただけで壊れたんけど』


『何もしてないのに壊れる、までありそうですね。』

「うーん……ここまでダメダメだったかぁ……」


『逆に、センパイが作ったのって、どんくらい頑丈なの?』

「ラレースさん、お願いできます?」

『はい!』


 俺は壊れた床の上に、新しくラレース用の設計図を用意する。

 そして作ってもらったのをバーバラに叩いてもらったのだが……。


<ガンッ! ドンッ! ダンッ!>


 何度叩いても壊れる様子がない。

 こ、これは……。


「ラレースさんの、頑丈さが全然ちがいますね……」

『無理! コレ無理! 叩いても叩いても、全然びくともしないよ!!』


『なんかこー、見えない力の膜? みたいなのがあって、ぽわ~んってする!』

「あ、ほんとだ、何これすげぇ!!」


 バーバラの言葉に半信半疑で、俺はスレッジハンマーの柄で床を叩いたのだが、本当にぽわ~んとしか言えない感触が手に返ってくる。

 なぁにこれぇ?


「私も叩いてみようか?」

「師匠なら流石にぶち抜くんじゃ……?」


 ちょっとワクワクした感じの師匠が、剣を抜き打って床に斬りつけるが、床は木片を多少散らして水面に波紋を広げただけだった。


 ……耐えちゃったよ。


「フライング・ダッチマンを斬った剣に耐えちゃった……」


「スキルを使ったわけじゃないから、比較にはならないけどね。これは物理攻撃に対しての耐性が付いてるね。それも固定値と割合の複合っぽいかね?」


「えーと、つまり何です?」

「アタシのスキルをブチ喰らっても、何発かは耐える」

「ヒェッ」


「こりゃ面白い。ラレースの手持ちのスキルが関係してそうだね。特定のスキルは別のスキルの影響を受けて強化されることもあるからね」


「いわゆるコンボ効果ってやつですか? たくさんスキルを持ってるだけ強くなるみたいな」


「そうだね。ただ、人ひとりが持てるスキルはそう多くないから、コンボ効果だけ狙ってスキルを取得、そこまでするやつは少ないね」


「なるほど、コンボ効果か……師匠の言う通りかもしれませんね。耐久性がちょっと異常です」


 建築で作った床の異常な耐久性について知れたのは良かったが……。


 建築に関してはしばらく、ラレースに頼るのがベストってことか。


 せっかくハンマー買ったけど、こりゃしばらくスキル上げだな。とほほ。

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