血の対価
『募集の条件を繰り返すぞ!』
『信仰を持たないこと!! そして熱意とやる気は誰にも負けないことだ!!』
『合格したものはもちろん、「都市」で暮らす資格を持つ。』
『自薦、他薦は問わない、誰ぞいるか!!』
「「「わあっ!!!!」」」
手を上げた者が先を争って、お立ち台のオッサンに殺到した。
両脇の護衛がそれを押し返そうとするが、数の差がありすぎる。
たちまち人の波に飲み込まれた。
「俺を中に入れてくれ!!」「俺を!「わー!」私を!」
『ど、どうしますか?!』
『えぇい!! これではキリがない! 構わん、撃て!!』
『ハッ!』
<ズドン!! ダダダダ!!>
「「「わぁ!!! きゃーーー!!!」」」
「なッ! いきなり撃ち出した!?」
護衛が水平に近い威嚇射撃で集まった群衆を追い散らす。
おい!! あいつら一体、何がしたいんだ?
『ツルハシさん。これがこの「都市」のもう一つの顔です』
「もう一つの顔?」
『はい。この「都市」、国際展示場がその価値を保っていられているのは、外から優れた技術を持つ人……必要な人材を取り入れているからなんです』
「必要な人材を? ジョブを持ってる人ってことか?」
『はい。普通、都市には色んな人がいるはずですが……この「都市」はそれを許さないんです。不要となれば、容赦なく追放されます』
「老人や子供は、都市の中にいる価値なしってことか?」
『よそ者に限り、ですけどね。代々この「都市」に住み、財産を持つ人達は自分たちの生存《《券》》を買っています』
「銀座も危険で、良い場所じゃないけど……ここよりはマシだな」
『そうなのですか?』
「あっちの場合は、床に敷く物さえ持ってりゃ良いからな」
『えぇ……?』
「この『都市』が大体わかってきた。安全っていうエサをちらつかせて人を集めて、良い人材だけ集めて喰い物にしてるんだな」
『そういった感じです。持たざるものは、富豪として生まれついたものに、家畜のように飼われるしか道が無いんです』
「でもそれだと、今のおかしくないか?」
『さっきの募集は信仰を持たないこと。つまりジョブを持たない人を募集していました。そんなのは始めて耳にします』
「なんか変だよな」
『いえ、奇妙な募集は前々からあります。一発芸の出来る市民を求めることも珍しくはないですので、それかと……』
「考え過ぎか」
しかしこの門前町、ジョブを持たない連中も結構いるんだな。
募集に並ぶ連中があまりにも多すぎる。
ユウキが『都市』に入るチャンスではあるが、これでは……。
「「ざわざわ」」「「がやがや」」
『秩序を持って並べ、さもなければ殺すぞ!!』
「「…………」」
『募集に応じたのは何名だ』
『30名以上います』
『多すぎる。募集は予備を含めても3名までだ。選り抜かんといかんな』
『であればそうだな……閃いたぞ』
『募集に応じてくれてありがとう、市民候補の諸君!! 諸君の熱意とやる気は誰にも負けないことだろう。そこでだ……』
お立ち台のオッサンが横に居た兵士に何かを促す。
すると、兵士はナイフを取り出し、オッサンが立つお立ち台の前に置いた。
『熱意とやる気を……私に示してほしい!!』
『そのナイフで腕の肉を切り取れ。』
『切り取った肉が他の者より重かった者。上位3名を市民として受け入れよう』
その言葉を聞いて、人だかりはまるで引き潮のように下がった。
さっきまでの勢いがウソのようだ。
ゲンキンな連中だ。
これを見た護衛の兵士は、嘲るようにくつくつと笑い出した。
『どうした? 居ないか!? 諸君の熱意とやる気を私に見せてくれ!』
『与えること無く、求めるだけの者に、未来などないぞ!!』
「や、やる!! やります!!」
『おっと、最初の挑戦者だ。』
『――さぁ、君の熱意はいかほどだ?』
・
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「「ギャァ!!」」
人だかりからナイフをあてがった者の悲鳴が次々と上がる。
潮風には、次第に血の匂いが混じり始めていた。
『なんだこれは?! これが肉か? ソーセージにもならん!!』
『こんな切れっぱしで都市に入ろうというのか、クズ肉め!!』
「ううううううっ! 痛いいいいっ!!」
『『ハハハハ!!』』
「馬鹿げてる……ッ!」
「…………僕、行きます!」
「ユウキ、本気か?」
「はい。たぶんこれを逃したらチャンスなんて無い。そんな気がするんです」
「それはそうかもしれないが……」
『ツルハシさん。彼の選択です。私達は治療の用意をしましょう』
「……」
「わかった。行って来い」
「はい――ッ!」
俺は偉そうなことをさんざんユウキに言ったが……。
結局、彼の背中を見送ることしか出来なかった。
俺に出来ること、なんてのがそもそも……おこがましかったのだろうか。
・
・
・
『どうした?! 血を流さない幸せなどありはしない!!』
「はい! 僕がやります!」
『ほう……名前は?』
「ユウキです!」
『ハハッ! いい名前だ。だが君の魂はその名前にふさわしいかな』
「ナイフをお借りします」
「…………」
「……――フンッ!!」
<ザグッ! ザグッ! ザクッ!!>
<……ボトッ>
「…………ッ!!!!!」
『ふむ……まずは1名だ。おめでとう市民。』
『縛って血を止めてやれ。このままでは死ぬぞ』
『ハッ!』




