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お台場ダンジョン

「これがお台場ダンジョン? っていうか……」

『言いたいことはわかります。間違いなく、これがお台場ダンジョンです』


 俺の目の前には出来損ないの遊園地みたいな光景が広がっていた。


 自由の女神を「機動剣士ガンドム」が踏みつけ、黒と黄色の水玉模様のタコが踊り狂うようにそれを囲んでいる。


 そして中央に相当する位置には、虹色に輝く観覧車があるが……。

 本来、ゴンドラがぶら下がっているはずの場所には、とぐろを巻いたカラフルなウンチがぶら下がっていた。

 

 ……何アレ?

 悪ふざけにも限度があるだろ?!


 見てるだけで二日酔いの頭痛が再発しそうだ。

 これがダンジョン?


『元は遊園地だったらしいよ。昔の人のセンス、エグいよね』


『異様な見た目に油断しないでください。危険なことに変わりはありませんので』


「これで緊張しろっていうのは……」

『わかりますけど、本当に中身は他と変わらないので……』


 ダンジョンの入り口は……

 よかった。ここは浜離宮と同じだ。


 ここまでカラフルなウンチで飾られてたらどうしようかと思ったぞ。


 さて、中へ続く階段を降りると、第一層に入る前の大広間についた。

 ここの探索者村は、浜離宮に比べると質がいいな。


 なんというか、ちゃんとしている。


 そこらの屋台もブルーシートのツギハギじゃなくって、ちゃんとした屋台用のビニールカーテンだ。「焼きそば」とか「たこ焼き」の上にポーションとか武器屋とか書いた看板をぶら下げてある。


「へぇ、お台場は他より暮らし向きが良いんですね」


「そうだね。さすがに大阪には負けるけど、ここらじゃ一番かな」


「ミコトさんは結構遠くまでいったことがあるんですね」

「……まぁね」


 店の近くを通ると、商人の威勢のいい掛け声が聞こえてくる。


「見ろよこれを!アンタにぴったりだ」「そいつは初心者用だ、そんなもん捨てちまいな!」


 金が無いけど、こういうのを聞く度に覗きたくなっちゃうんだよな。

 今回の遠征で多少神気が入るだろうから、帰りに何か見ていこうかな……。


 一層へ降りてみると、なるほど。本当に何も変わらない。

 レンガの壁と床に、暗い暗い通路。

 道の形とかはもちろん違うが、印象が全く同じだと、奇妙な感覚を覚えるな。


「おっ」

『どうしました?』


「いえ、浜離宮ダンジョンで掘ったダンジョンのブロックはここでも置けるみたいなんですよ。問題の一つは解決ですね」


『ダークゾーンの移植は可能、ということですね?』

「えぇ」


『ですけど……これまた秘密にしておいたほうが良さそうな情報ですね』

「ですね。採掘師がまた大騒ぎしちゃいますね、コレ。」


 ダンジョンの壁や鉱床が移植可能ってことは……。


 各地のダンジョンの鉱床をコレクションしてコンプリートすれば、すべての鉱石がその場で揃う、完全無敵な採掘場所を作れるってことだ。


 ちょっとやってみたいが、毎日アサシンが送られてきそうだな。

 流石にそんなサブスクはいらない。


「そうだラレースさん。ここのマッピングって終わってますか?」


『えぇ、もちろん。 一層の地図は……はい、こんな感じです』


「ありがとうございます。……よし、これなら……ここを掘れば――」


 ラレースから見せてもらった地図をもとに、危険な箇所を避けて一気に掘り進むことにした。


 これによって、他の探索者とはち合わせる可能性は高い。

 だが今回はそのリスクよりも、時間の方を優先する。

 

『いけそうですか?』

「もちろん! 一気に行きましょうか」


『お、ツルハシの生作業が見れちゃう感じ~?』


『そういえば、今回は配信なさらないんですか?』


 あ、どうしようかな……。

 でもメリットとデメリットの両方があるよな。


「配信すれば、偽ツルハシ男のことをみんなに教えることが出来ますが……」

「ここにギャラリーが集まるのは避けたいですね。それに、わざわざ格好を変えた意味もなくなっちゃいますし」


『そうでした、すみません』

「いえ、ラレースさんの提案のメリットも大きいですし一理あります」


「それじゃ、行きます!」


<ガチン! ガチン!>


「ほんとに掘っちまったよ。あきれた、今までのは一体何だったんだか」

『それなー』

『採掘に集中できるよう、彼の背後を守りましょう』


 たまに後ろで起きる戦闘の音を背中で聞きながら、俺は一心不乱に壁を掘った。


 一層、二層、そして三層の毒ガス地帯も記憶に残っているのは壁だけだ。

 彼女たちを信頼して、目の前の壁を向いて掘り続けた。


 そしてようやくたどり着いた4層なのだが……思った以上に最悪の場所だな。

 まさかこんな場所だったとは――


『ツルハシ男さん、ここが第4層の「水葬海域」です』


「物騒な名前をつけるだけはありますね。しかし……これは困りましたね」


『えぇ、ここの足場……』


 「水葬海域」の足場は、他の階層と違う。

 ボロボロの木で出来た桟橋や、難破船のパーツの寄せ集めで出来ている。


 俺は桟橋の残骸にツルハシを振り下ろす。

 すると、一本の板が消えて、「難破船の残骸×1」が俺の所持品に入った。

 

 これが何を意味しているか?


 「個別の板」しか取れないのだ。


 例えばバラバラなゴミが寄り集まって出来てるバリケードを想像しよう。


 そのバリケードは壊れたイスや、足のないテーブルを組み合わせて……。

 そう、「バリケードの形になっている」に過ぎない。


 それにツルハシを振り下ろしても取れるのは「バリケード」じゃない。

 壊れたイス、ぶっ壊れたテーブルだ。


 俺は所持品から「難破船の残骸×1」を取り出して、いつもブロックを置くようにして、目の前のボロボロの桟橋の上に置いた。


 すると、桟橋に置いたボロボロの木の板は、ひとりでにぐらついてバランス崩し、ぽちゃん、と水の上に落ちた。


 木の板はそのまま水面にプカプカと浮いている。


 次に俺は、所持品欄からダンジョンの床を出す。


 が……海の上にやっても表示は赤いまま。

 これは普段、壁が何かと接触している時、置けない時に起きる現象だ。


 つまり――



「水葬海域には……ブロックが置けない?」

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