ガーゴイルとの戦い
「防御スキルで何とかしのぎましたが、体勢を整えてまた来ますね」
『ほんと地上のモンスターってパないよねー』
「バーバラさん、もっと威力のある一撃は撃てないんですか?」
『できるけど……真っすぐ飛んでくるヤツにしか当たんないよ?』
バーバラはリンと鈴のような音を鳴らして、弾を込めなおす。
いまこの場でガーゴイルと対抗できる火力を出せるのは、彼女だけだ。
それを活かす方法……そうか!
「ラレースさん、俺にはガーゴイルに対抗する手段があります。ですが……」
「なんです?」
「素材が必要です。『こいつ』を使ってもいいですか」
俺が指さしたのは、バージの船倉に入っていた鉄クズだ。
これを素材として《《あること》》に使えば、空の上のガーゴイルに対抗できる。
「バーバラ、緊急避難ということで、いいな?」
『いいですけど、こんど始末書を書くの、手伝ってくれます~?』
「……3枚までだぞ」
『こんな状況です、仕方ないですよね!!』
「ありがとうございます! じゃ、早速始めます」
「操舵手、できるだけ回避運動を取って、ガーゴイルの突入を阻止しろ!」
『アイアイ、マムッ!!』
ラレースさんが時間を稼ぐよう、指示を飛ばした。
――ありがたい。
バージの後ろの船は真っ直ぐ進むのをやめ、鋭く舵をきり始めた。
この時間はムダにできない。手早く動こう。
俺は鉄クズにツルハシを振るってどんどん素材にしていった。
すると、表示枠の資源のカウントが回って増えていく。
……よし、これくらい集めればもういいだろう。
「ラレースさん、設計図をおいていくので、ハンマーをお願いします!」
「はい!」
『ハァ? 設計図って、どーゆーこと?』
「まぁ、見ててください」
俺は建設メニューからガンガン設計図をおいていく。
それに次々とラレースがハンマーを打ち込んで実体化させていった。
たちまちのうちに、バージの左右に鉄の壁が現れる。
これだけでもガーゴイルはかなり攻めにくくなるはずだ。
『スッゴ……ツルハシくん、こんなの配信で使ってなかったじゃん!』
「はい。これって今日、手に入れたスキルなんで」
『ふぇ?!』
「ラレースさん、次はこれにハンマーをお願いします!」
俺はある設計図をバージの甲板に追加で置いていく。
それを見た彼女は、ふぅ、と呆れたような声を上げた。
「……なるほど、これは予想してませんでした」
俺が次に置いたのは2重のスロープだ。
スロープは後方の船に向かって作って、船の屋根くらいの高さにした。
斜めのスロープを重ねるように作ると、もう一方は屋根になる。
こうするとガーゴイルは屋根が邪魔になって、直接攻撃ができない。
下の方、接続部分が弱点になるが、そこには壁があって守られている。
そうなると必然的に狙い所はバージを押している後ろの船になる。
が、スロープがそちら側に延びていると?
俺たちが足場にしている下のスロープが攻撃の邪魔になる。
我ながらヒドイわコレ。
ガーゴイルからしたら、相当イライラするだろうな。
彼女は上と下に器用にハンマーを叩きつけていく。
ラレースさんの身長が高くて助かった。俺だったらきっと届かない。
『もう回避の限界です!! 切り返しても食いつかれます!!』
後方の船から悲痛な叫びが上がった。
時間切れか!
「上空のガーゴイルがこちらに進路を取りましたね」
『また来るよ!!』
「ラレースさん、これが最後です!」
俺は仕上げとして、スロープの上に小さな壁を作る。
バーバラの安定した射撃のためだ。
これ以上俺ができることは、もう無い。あとは彼女次第だ!
<ガンッ!>「出来ました! どうぞ!」
『あざーーすっ!』
バーバラは俺が置いた壁に銃を固定して、ガーゴイルに狙いをつける。
『さっきはちょーっと、ひよっちゃったけど……』
『こんだけ真っ直ぐなら外さないよね!』
『墓までとんでけッ!!「ボンバード」!!』
<――ドゴンッ!!!>
それは銃声、というよりは砲声といったほうが正しかった。
さっきの倍以上の爆炎が上がり、オレンジ色の弾丸が飛び出す。
その弾丸はただひたすら、まっすぐに進む。どんな障害があろうとも。
ガーゴイルの翼の根本に触れた弾丸は止まらない、そのまま片翼をもぎ取った。
翼を失ったガーゴイルは空の上でバランスを崩すと、バージのはるか手前の海に落ち、そのまま沈んでいった。
バーバラは少しの間、銃を構えたままだった。
しかし、ガーゴイルが水面に浮き上がってこないのを認めると、再び心地よい「リン」という音をさせて、役目を終えた薬莢を銃から抜き取った。
『最初が豆鉄砲だったからって、ディスってたねアレ』
「まさか、そこまで計算して……?」
「彼女のことは私がよく知っています。それは無いです」
『そうやって人のせいにして、ギスるのはよくないと思いまーす』
「助かりましたが、ツルハシ男さん、また仕事が増えましたね」
「え?」
「バージをこのままにしておけませんので」
「あー……」
俺は波間に消えた襲撃者を呪いながら、さっそく後片付けに取り掛かった。




