ミラービーストの対策
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「ふぁ……おーぅ……マジか。」
俺は目を覚まして、うす暗い仮拠点の中を見ていた。
すると壁の片側がバレエ教室みたいに一面の鏡になっている。
今は朝9時。
明鏡石を掘ったのが夜の12時位だから、9時間で再生したってことか。
どうやら本来と違う階層にあっても、鉱床は再生するようだ。
あちゃー。嫌な汗がでる。
この情報が採掘師に広まったら、大変なことになりそうだ。
なんせ普通の採掘師は、護衛に高い神気を払って下に行ってる。
今になってその努力をムダにされたら、ブチ切れ必至だ。
どうしたもんかね?
そのままにしておくのが無難だが……。
ミラービーストの件もあるからなぁ?
ブーツに足を突っ込んで体を伸ばすと、ふと気がつく。
ラレースはすでに武装して準備を終え、座って瞑想していた。
……何か修行僧みたいだな。
いや、彼女は宗教騎士だった。
こういった修行をしてても、おかしくないのか。
「ラレースさん、おはようございます」
「おはようございます。ツルハシ男さん」
静かな声で答えた彼女に、俺は明鏡石の件を伝えることにした。
「ラレースさん、明鏡石ですが、一層に残そうと思います」
「昨日は戻すといったのに、なぜですか?」
「ミラービーストの対策として一時的に残しておきたいんです」
「あ、なるほど……ですが、掘る人は掘ってしまうのでは?」
「なので、説明書きをしようかと」
「説明書き?」
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俺は一層に2箇所、明鏡石が四方に配置された陣を仕掛ける。
この陣はミラービーストと戦った時に作ったものを、そのまま再現したものだ。
陣に8個使い、残りの2個はラレースと話し合い、ミラービーストと不意に遭遇した、もしもの時に取っておくことにした。
そして、壁には『黒曜石の床』のブロックであるものを作ってある。
「キケン ホルナ」の文字だ。
正直頼りないが、今できることはこれだけだ。
「……あとは採掘師の良心に任せるしか無いな」
「できれば、これが無駄になると良いですね」
「うん、そうですね」
ミラービーストが他のモンスターと同じように復活するのか、それはまだ確定はしていない。できれば復活しない存在であってほしい。
もし復活したとなると、奴はかなり厄介な存在になる。
しかし、まだ何か頭の奥底で引っかかっている物がある……。
モンスターだとすると、何か違和感があるんだよな。
…………。
……ダメだ。わからん。ひとまず保留だ。
「探索者がミラービーストの存在に気づいてくれると良いのですが」
「可能性は残した。あとは探索者次第かな」
「彼らはこの警告を守ってくれるでしょうか?」
「わからない。ただ――」
「ただ?」
「これが不思議なことに、人ってルールを作られると、案外守るんだわ」




