No.5
「へ~♪ バケツ頭のくせにやるじゃん!!」
<ガキィィン!!><ギィィン!!!>
『影に褒められてもな』
首狩り斬姫は白刃を打ち寄せる波のように送り出す。
だがラレースは、その波状攻撃を防御スキルを使って全て防いだ。
防御力は圧倒的にこちらが上。
だが、彼女はうかつに攻撃に出れない。
『今度はそっちか!!』
<ズガガッ!!ズガガガンッ!!!>
たまに死角から、あの骨の杭が飛んでくるのだ。
どうやら本体は姿を隠して、不意打ちを狙っているらしい。
本ッッッッ当にッ……、クソたわけだな!!!!
どうすればいい?
本体の偽装か、あの実態のある影、幻影。
どちらかをどうにかする方法があればな……。
ダンジョンネズミの時は無理やり毒矢ブロックで消した。
でもここでそれをすると、足さばき次第で自分を貫いてしまう。
槍のブロックも同じ、丸ノコも論外。
クソ! 手詰まりだ……!
――いや、ある!!
「ラレース、明鏡石を置いてみる! 援護してくれ!」
『どういうつもりだ、ツルハシ男!?』
「奴は周囲の光景を鏡みたいに映して姿を消した!」
「なら、こっちが鏡を出してやれば、奴はどうなる?」
『なるほど――試しにやってみろ!』
「ああ!」
俺は所持品から『明鏡石の鉱床』を取り出し、四方に配置する。
あと必要なのは、やつをあぶり出す光だ!
「何しちゃってるワケ~? ぶち死になぁ!!」
<ブンッ!!!>
「うおっ!」
斬姫が明らかに俺を優先してカタナを振るってきた。
どうやら「これ」をされるのが、とってもイヤみたいだ。
「それはもう答え合わせってやつだぜ?」
『援護します!!』
割り込んだラレースが盾で斬姫を押しのける。
しかしやつは逆に盾を足場にした。
くるりと空中で一回転し、背中から彼女の首を狙ってきた!
「いっただきー♡」
『ほう?』
しかし、肉切り音のかわりにしたのは、ゴリっという鈍い音だった。
彼女はカタナの刃先に自ら突っ込み、威力を殺したのだ。
「イカれてんだろ! このバケツ野ろぐびゃ?!」
<バキッ!><ゴズンッ!!!!>
空中では攻撃のつなぎようがない。ラレースは盾のフチで斬姫をぶん殴った後に押しつぶすと、床と盾の間にガッチリと挟み込んだ!
『今だ!ツルハシ男、目を閉じろ!』
「――ッ!」
『フラッシュ!!』
即座に彼女はスキルを発動させた。
ダンジョンの通路一杯に閃光がはしり、薄暗い通路が昼間のようになる。
まばゆい光は明鏡石と怪物の表面を何度も往復し、その存在を明らかにした。
『影が肉薄したということは、そういうことだと思っていた』
「「ヒィィィィィィ!!!」」
奴はオレたちの直ぐそばにいた。
それこそ体温すら感じそうなほどに。
奴は光に怯え、爛れた顔を、壊れた傘の骨みたいな、捻じくれた指で隠そうとしている。その振る舞いに俺は何か、哀れさすら感じた。
『やれ! ツルハシ!!』
「よっしゃ!」
斬姫を取り押さえているので、ラレースは武器を振るえない。
トドメは俺の役目だ。
俺は所持品欄から槍トラップのブロックを出し、奴に叩きつける。
何度もブロックから突き出される白い穂先は、たちまち赤く染まった。
「「ウグッ!!」」<ザシュッ!!>
「「アガッ!!!」」<ザシュッ!!>
「「ギァァ!!!」」<ザシュッ!!>
トラップは獲物がどんなに悲痛な悲鳴をあげても、その手を緩めない。
奴はその白い体を真っ赤に染めながら、断末魔を上げた。
「「オ、オデタチNo.1とNo.4で、No.5ナタ、ノニ……ナゼ?!ナゼェェ!!」」
「「ダスゲデ、ヅグヨミ……」」
何者かに助けを求めた怪物は、ひきつけを起こしたみたいに激しくビクつくと、分厚く横に長い唇から止めどなくドス黒い血をドロドロと吐いた。
吐き出される血の他に、もはや動きはない。
斬姫の幻影もラレースの盾の下から姿を消していた。
だがこの怪物、何か気になる言葉を吐いたな。
「ラレースさん、こいつ、No.なんとかって……」
『ああ、私も確かに聞いた』
『お前を襲った黒衣の者たち。確かお互いをそのような名前で呼んでいたな』
「……まさか、あのときのダンジョンネズミ?」
答えはなかった。
モンスターは絶命し、俺に疑問と死体だけを残した。




