表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/235

闇に息づくもの


『それで……そんなに持って帰ってきたのか?』


「いやほら、ラレースさん、あくまでも実験のためにね?」


『……実験のために第三層の明鏡石の鉱床を半分も取ってきたのか?』


 あの後、俺はついつい誘惑に負けてしまった。

 第一層を歩く俺の所持品欄には、10個の『明鏡石の鉱床』が入っている。

 これは第三層に存在する鉱床の半分にあたった。


 前を行くラレースさんは、俺に背中を向けたまま呆れたような声を上げる。


『独り占めしようなどと考えるとは……まったく』


「いやいや、物欲で闇雲やみくもに掘ったわけじゃないですよ!」

『ほう、ちゃんと考えがあってのことか?』


「どれだけの時間で再生するのか、その比較とか……」

『なるほど。時間差で掘って、再生にランダム性がないのか調査するのか?』

「そうです、それそれ!」


「それと後は……他の階層でも再生するのか? っていう所ですね」


『うん、それは確かめたほうが良いな』


『明鏡石が「実は第三層の熱で生成されていた」となると、我々のしたことはただの破壊ということになってしまう』


「それも含めて実験ですね」


「鉱床の持ち出しは大問題ですけど……取れるって気づいた今の段階で、調査したほうが良いと思うんですけどね」


『ん、何故だ?』


「もし俺と同じスキルを持つ人たちが出てきたとします。そうなるときっと、鉱床はバラバラにどっかへ行ってしまう。その可能性が高いと思うんですよ」


『個人の良識、モラルに期待する。それがどんなに無謀な事なのか、地上を見ればわかるからな』


「……そうですね。」

『全員が全員、お前のような奴ではないからな』

「それって褒めてます?」

『……微妙なところだな。……冗談だよ』


 俺はガクッとなってしまった。

 ラレースさんの完全な信頼を得るのはまだ難しそうだ。


『一応確認しておくが、実験が終わったら不要。ということで良いな?』

「あっハイ」

『ならよし。』


『実験が終わったら全部返すぞ。まったく……他の採掘師にも迷惑だろう』

「ですよねー」


 鉱床の持ち出しは、流石にラレースさんからダメ出しがでた。

 俺も内心、これはちょっとやばいかなと思っている。


 どう考えたって採掘師業界はもちろん、もっと上の人たち――

 最悪、「都市」からも暗殺者が飛んできそうだもん。


『私は採掘師業界のことをよく知らないが……鉱床をそのフロア以外に持ち出すのは、自重したほうが良いと思うぞ』


「ですね。かなりの同業者を敵に回しそうです」


『もう持ち帰ってしまったものは仕方がない。ちゃんと返すとして――』


 前を行くラレースさんがピタリと動きを止めた。

 何事とかと思った俺はサッと屈み込むと、彼女の(ひざ)の間から前を見た。


「……うへ、こりゃひどいな。」

『モンスターがやった後のようだが……』


 俺の目の前に、元は人間だったモノがあった。

 床に広がる血はまだ完全に固まりきっていない。


「部屋でもない場所で死んでるなんて……」

『【はぐれボス】か、探索者どうしの戦いか』


「腕や足に大きな穴がありますね」

『銃か? いや、それにしては妙だ。手足からの出血が少ない』


「胴体は派手にぶちまけてますね……」


 ラレースはしゃがみこんで死体を調べ始め、分析を語り始めた。


『手足の傷は血管が潰れている……死んだ後に抜いたか』


『……矢にしては太い。これではまるで(くい)だ』


「そんなの使うモンスター、一層にいましたっけ? 俺、けっこう浜離宮ダンジョンには詳しいつもりですけど……こんなの見たこと無いですよ」


『ツルハシ男も知らないとなると、新種か?』

「ですかね」


『――ッ!』


 ラレースは何かに気づいて死体の前から立ち上がった。

 そして前方の闇を見つめると、静かに戦鎚ハンマーに手を伸ばす。


『待て……何かいる。ツルハシ男、私の後ろに下がっていろ』


 険しい声を放った後、彼女は「ガシャン」と甲冑を鳴らし、盾を構えた。


『誰だ!!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ