さらなる危険
◆◆◆
『ツルハシ男、これで3パーティ目だ。見学だそうだが……』
「マジで?!」
溶岩に氷をブチ込んで、大量のブロックを作った後の事だ。
床にブロックを並べていると、見学者が来るわ来るわ……。
いつの間にか20人くらいの人だかりが三層の入り口にできていた。
人だかりの中には、このダンジョンで一度も見たことがない人もいる。
きっと他所のダンジョンの探索者だろう。
そういやこの数日、浜離宮ダンジョンでずっと開拓してるもんな……。
俺に会えると思って、わざわざ足を運んできたのか。
や、やりづれぇ……!
いっそのこと、第三層の入り口をどーんと埋めちゃえばよかったか?
……いや、それは無いな。
通行止めにしたら、探索者たちにメチャクチャ敵視されるわ。
入り口を塞げば、上からはモチロン、下から上がって来る人たちの邪魔にもなる。
もし、上がってくる人がケガでもしていて、俺が道を塞いでたのが原因で治療が遅れて死にました。そんな事になってみ?
俺のチャンネル、間違いなく大炎上。
全探索者の敵になるのが目に見えている。
ヒジョーに嫌だが、このままで行くしかないか……。
「ツルハシ男だ!!」「マジでブロック置いてる!!」「ズルくね?」
「やり方教えろよ―!!」「わーわー」「ぎゃーぎゃー」
(何か後ろで騒がれると気になるなぁ……)
<ドンッ!!!!>
『皆さん! ツルハシ男が配信中なので、《《お静かに》》』
「「……。」」
おお、ラレースさんの威圧はめっちゃ効くな。
ハンマーの柄を地面に叩きつけただけで、ギャラリーが一瞬で黙ったぞ。
確かに2メートル以上もある騎士に脅かされたらそりゃ怖いよな。
また騒ぎ出さないうちに、さっさと済ませてしまおう。
俺は燃える床を取っ払い、床を『黒曜石の床』に取り替えていく。
黒くてツルツルの床は中々に高級感がある。
「えー、流石に全部取り替えていたらキリがないので……」
「普通にしてたら歩かないような場所は、そのままにしておきます」
開拓はできるだけ手早く済ませよう。
何も知らずに三層に来た人にとって、俺って邪魔でしか無いからね。
今後の開拓のためにも、無用な敵意は持たれたくない。
「はい、できました!」
「狩り場として人気高い部屋を2つ3つと、転送門、あとは次の層へつながる階段に床を配置したので、これから第三層は安全に通行できます!」
「おや……?」
俺は目の前にあるものに気がついた。
キラリと光って俺の顔を映す、鏡のような壁。
これは「鉱床」だ。
いわゆる採掘ポイントというやつだな。
十分なスキルを持つ者がここにツルハシを振り下ろすと、資源が得られる。
ダンジョンの壁は、普段は何の変哲もないただの壁だ。
だが、ダンジョンの壁はたまにこうして貴重な資源に姿を変えるのだ。
「この輝いている鉱床は、明鏡石ですね。せっかくなので掘っていきますか」
「明鏡石は刀や細剣、耐久性よりも鋭さを必要とする武器に使用する鉱石です。需要も高いので良いお値段がつきますよ」
俺は採掘師なので、当然こういうウンチクには詳しい。
こういう探索者の知識を披露してると、配信者って感じでなんかいいね!
さて、ツルハシを振るうとするか。
そういや、ダンジョンの壁以外にツルハシ使うの4ヶ月ぶりか。
<キンッ!!>
俺は手に持ったツルハシを目の前の鉱床に振りおろす。
普通は鉱石が手に入るはずなのだが――
「あ……」
鉱床は目の前から消え失せていた。
所持品欄を見ると、しっかり『明鏡石の鉱床』が入っている。
しまった。『ソフトタッチ』は自動的に適用されてしまう。
効果を切るのを忘れていた。
「えーと、どうやら掘りすぎてしまったようです。ハハハ……」
この時、俺の脳にビビビと電流が走った。
『もしこの鉱脈を第一層においたらどうなるのだろう?』と。
鉱脈は一度掘ると、ただの壁に戻る。
そう、見た目はダンジョンの壁に戻るのだ。
だがこれは明確に『明鏡石の鉱脈鉱床』となっている。
燃える床が取り出しても『ダンジョンの床』だったのとは対照的だ。
ここで俺の脳内で、二つの「仮説」が立った。
1.ダンジョンの床は他のブロックの影響を受けて変質する。だが、基本的に本質はダンジョンの床のままである。
2.鉱床は一度掘られるとダンジョンの壁の見た目になるが、本質は鉱脈のままであり、時間などの条件をみたすと鉱脈の状態に復帰する。
ちょっとややこしいが……。
鉱床を一度掘って壁になっても、それは鉱床ってことだ。
俺のマップには、俺自身でマークした採掘ポイントがある。
記述できる、ということは「固定湧き」ということだ。
鉱床の位置は固定。
これはダンジョンを仕事場にする採掘師の常識だ。
うん、それでだよ?
もしかしたら、もしかしたらだが……。
鉱床を集めて……それをどこかに埋め込んだとしよう。
例えばジジイ部屋のどこか。うん、仮拠点とかね。
俺の仮説が正しければ、階層に関係なく、鉱床に復帰するはずだ。
それを繰り返し採掘することで、資源を独り占めできるのでは?
いや、それどころか第一層で深層の素材を全て集めることだって出来る。
すべての常識がひっくり返るぞ?
うん、うん?
……ねぇこれ、俺の寿命がマッハで縮んでない?
「は、配信はここで終わりにします! 皆さんお疲れ様でした!!」
俺は猛烈に嫌な予感がして、慌てて配信を切った。
さらなる危険が俺にふりかかってないか?
ど、どうしよう!




