表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/235

>>爺サイド クエスト対象

 一方その頃。「爺部屋」前。


 レンガの壁に囲まれた暗い空間で、それは行われていた。


 自身の配信を表示している表示枠に黒髪の少女が語りかけている。

 彼女は東方の鎧と巫女服を足し、ミニスカートにした服装をしていた。


 そして、その周囲には物々しい装備をした10人以上の男が列をなしている。


 彼らは皆一様に押し黙り、自身の「推し配信者」。

 つまり、目の前の女性を自分たちの表示枠越しに見ていた。


「今日もみんな、首狩り斬姫の配信に来てくれてありがとうね~!!」


 <待ってた!><配信おつです!!><帰宅が間に合わないよ~;;>


 女の声に合わせ、必死に男たちもコメントを乱打する。


 これは一種の崇拝儀式。

 それは見る者にある種の神秘性と異常性を感じさせた。


「うんうんコメントありがとー!」

「今日はなんと、凸で集まった探索者さんと、『クエスト』をしまーす!!」


 <8888888><お、何のクエスト!?><いいなー!>


「クエストを知らない子のために、一応教えておくね? クエストっていうのは、神様にお願いするともらえる依頼です!」


「でも今回は、神様からのお願い! このタイプのクエストをクリアすると、普段よりもいっぱい神気が貰えるんだよね~!!」


「それで今日はなんと、『リッチ』の退治です!」


 ・

 ・

 ・


「静かじゃのー」

「ピュイ~!」

「よしよし、ヒトリン、いまエッセンスを分けてやろう」


 ワシはペットの人魂のヒトリンに、エッセンス――

 すなわち、人から抜き取った精気的なアレをスポイトに取って分け与える。


「ピュイ!」

「そうかそうか、ウマイか。よしよし」


 ペットの人魂の世話をして、書を読み、日々のこと日記に書きつける。


 穏やかだ。「あの時」と比べれば、実に穏やかじゃ。


 ふと、あのツルハシを持った若造が来たときの事を思い出す。

 ああ、思い返すだけでも胃がキュッとなるわい。


 やつはあろうことかワシに丸ノコをあてがい、ヴィィィン!!!とした挙げ句、護符を盗み、ワシを従えた。


 まあそれくらいならまだ、大海原より広いワシの心が許すかも知れない。


 だが、ツルハシ男はウチの壁に穴を掘って、そこを仮拠点とか言い出した。


 それだけでは飽き足らず、細々と集めていたワシの家具を片っ端から略奪。

 嵐のように現れて、本当にやりたい放題していった。


 探索者のマナーが悪いことは理解している。

 だが、あそこまでヒドイのは初めてじゃ。


「クソッ!! 思い返したら何かムカっ腹立ってきたぞい!!!」


「ワシを自宅警備員か何かみたいにしおって!!!」

「これでも一応、不死者の王よ?!」


「ピュゥ?」

「おうおう、怖がらせてスマンの、大丈夫じゃよ」


 わしはゆっくりと両手でヒトリンを包み込んだ。

 ファファファ、この子の魂の温かみを感じるのう。


「邪魔しちゃうよぉー!!」

 <バァァァァァン!!!>


(ほげぇぇぇぇ?!)<パァン!!>


(ヒ、ヒトリンーー!!!!)

(ビックリした勢いで潰しちゃったぁぁぁぁッ!!!)


 扉が蹴破られた爆音でビビったワシは、手に持った人魂を潰してしまった。

 ヒ、ヒトリンが……! ワシは、な、なんてことをッ!!!


(おのれ許さん!!)


 乱入者を一目見ようと、入り口を振り返った瞬間――


 <ガキンッ!!!>


 キラリと光る白刃が、ワシの肩口に振り下ろされていた。

 これは……カタナか!!


 得物の持ち主を見ると、若い女のサムライだ。

 きゃつは両手で持ったカタナを引き、刃を返して突きを入れる。


 が、目の前で型を変えるところを見て斬られるほど、ワシも阿呆ではない。

 魔力をヴェールにして、布で刃先をくるむようにして受け流した。


「やるじゃん!!」

 <斬姫ちゃん!スキル!!!><スキルだ!!!>


 みるとこの女サムライ、随分軽装でハカマも異様に短い。

 ふむ、速度重視といったところかの?


「じゃあいっくよー首狩り斬姫の必殺スキル!!」

一意専心(いちいせんしん)――『無拍むひょう一文字いちもんじ』!!!」


 スキルを宣言した女サムライが刀を振る。

 すると、次元を割断する一本の白線が出現した。


 「えっ」て思ってそのまま固まってると、次の瞬間、白線はそのままぴゅーんと飛んできて、ワシの首に吸い込まれた。 ぎゃーーー!!!


「ふっふーん! これでひとつ!」


 勝利を確信した女サムライは、パチンと音を立て、カタナを鞘に納める。

 だが、ワシの首はなんとも無い。平穏無事だ。


「ファファファ。今、何かしたかの……?」


 ワシは自分の力を誇示するように、

 コキッ……コキッ……と首の骨を鳴らしてみせる。



 ふ、ふ、ふ――



 ふあああああああ!!!! あっぶねぇぇぇえ!!!!!

 切断耐性のタリスマン作っといてよかったぁーー!!!


 ワシは二度同じ失敗は繰り返さない。


 あのツルハシ男の使った「丸ノコ」対策をすでに用意していたのだ。

 切断耐性を限界まで高めるお守り。これを作って身につけていた。


 まぁ、その副作用として「打撃」にはめっぽう弱くなってしまったが。


「キャー!! みんなピンチ! 助けてー!!」

「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」


 <行け―おまえら!><斬鬼ちゃんのために死ね!!>


 ほう、女の悲鳴が合図になったのかの?

 後ろから随分と色々でてきたのう。ひい、ふう……


 10人くらいの、まあ中級(LV30)から上級(LV50)の探索者かの。


 みたところ、目の前の女も含め、飛び抜けた達人はおらん。

 これくらいなら「なんとかなる」な。


 常識的な相手なら、《常識的》に戦うまでじゃ。


「ファファ、我こそは不死者の王。その魔術の真髄を味わうが良い」


 ・

 ・

 ・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ