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マスターキー

「さて、まずは手頃な場所を探しましょうか」


『どういった場所がいいのだ?』


「今回なら、絶対モンスターがわかない場所ならどこでもいいですかね」

『ふむ……なら転送門の近くに、いやダメだな。手持ちに扉のカギがない』


「じゃあ転送門の方に行きましょうか」

『聞いていなかったのか? 「スケルトンキー」が無いと……あっ』

「えぇ、わかります。そう。常識的に考えちゃいますよね」



『そうだった。お前は壁を壊せるんだったな』


 俺はラレースと転送門を封じている部屋の前に来た。

 ここは神秘的な雰囲気に包まれていて、ほんのりと明るい。


 部屋のデザインもダンジョンの通常の部屋とは違う。

 文様や装飾があってちょっとゴージャズだ。

 

 さて……。

 ラレースの言ったスケルトンキーとは、ダンジョンで発見される特殊な道具だ。

 見た目は青色で、グネグネとクラゲみたいに気色悪く動く。


 こいつがスゴイのは、どんな錠前でも一発で解錠してしまうことだ。

 鍵穴がありさえすれば、宝箱、扉、金庫や棚、何でも開く。


 その代わり、一回でも使うと、ドロッと溶けて消えてしまう。

 このスケルトンキーは結構高価なのだが、その理由の一つが「転送門」だ。


 この転送門は、入るとダンジョンの入り口に一方通行で戻れる。


 だが、この門は鍵のかかった扉で封鎖されていて、毎回開けないといけない。

 しかもすぐにカチャリと再び鍵をかけられ、締め出されてしまうのだ。


 パーティーメンバーがさっと通るくらいなら大丈夫。

 だが、タダ乗りするのは無理。開くのはそれくらいの時間だ。


 転送門を使えば、すぐに帰れるので、スケルトンキーの需要は高い。

 なので常にボッタクリ価格で売られている。


 なんせコレ、何かあったときの命を守る手段の一つなわけよ。

 そりゃあ……足元を見るよね、見まくるよね?


 探索者の中には、この「スケルトンキー」をメインに取りに行く連中がいる。

 そういった探索者は「カギ屋」と言われている。


 このカギ屋なのだが……。すっごい評判が悪い。


 俺がカギ屋に個人的な恨みがあるわけではない。

 断じて無い。


 が、そうだな。いくつかの個人的エピソードをあげてみよう。


 予約までしていたのに、もっと払うって言い出した奴に目の前で売られたとか?


 この値段ですって約束したのに、いざ払う時に、2倍に釣り上げられたとか?


 鍵屋どうしで談合して、どこの店も値段を釣り上げ続けてることとか?


 ……。


 俺にはカギ屋に対して、《《個人的な恨み》》はない……つまりだ。


 カギ屋全てに等しく罪がある!!!


 ‥…さぁカギ屋どもよ。

 夢を見る時間はもう終わりだ。ケヒャヒャー!!!


 お前らがスケルトンキーを売るなら……!

 俺はこのツルハシというマスターキーを使うまでよ!!!


<ガンッ! ズガン!! ドガンッ!!>


 転送門を取り囲んでいる壁と扉を、俺は猛烈な勢いで破壊した。

 ツルハシよ、巨悪を滅ぼすのだ。


『すごいな……なにか鬼気迫るものを感じるぞ』

「うぉぉぉぉぉッ!!!」


『――あの気迫はまるでオウガ。鬼神だな……ツルハシ男、只者ではない』



「ハァ! ハァッ! こんなものでいいですかね」

『随分……その、開放的になったな』


 彼女の言う通り、俺は転送門の壁をすべて取り払ってしまった。

 あとはもう、複雑な文様がキラキラ光る転送門と、オシャレなお花畑しか無い。


「ここまでやってなんですけど、外からモンスター入ってきませんかね?」

『その心配はないだろう。転送門はそれ自体、モンスターが忌避する』


「そっか。そういえば転送門の扉の周りでモンスター見たこと無かったわ」

『次はどうするんだ?』


『えーと、とりあえず……誰かが来る前に、部屋を作りますか』

「すまない。手間をかけるな」


 俺は表示枠の時間をみる。今は午後9時だ。

 さっさとやらないと深夜になるので、手早くやろう。


 急ぎだし、デザインとかいらないな。

 真四角。そう、トーフみたいな形でいいや。


 俺は<ポンポンポンッ>っと、今さっき手に入れたブロックを置いていく。

 そうだ、ラレースさんは身長が高いから、高さは3メートルにしておこう。


 幅と奥行きが7メートル。高さが3メートルの部屋が完成した。

 窓も何もない、マジの壁ェ! って感じの空間だ。


「これだけ広ければ、中央で話せば外で聞き耳を立てても聞こえないでしょう」

『本当にダンジョンを造り変えられるのだな……』


「えぇ。建築のセンスについてまで問われると、ちょっと困りますけどね」

『それはいい。私が入ったら、この入り口は埋め立てるのだな?』

「ええ、自分の安全のためにも。ダンジョンの壁を壊せるのは《《俺だけ》》ですから」


『……害するつもりはない。そのつもりなら、すでに槌が届いてるだろう?』


 すいません調子に乗りました。


『え、え?! いきなり土下座(ドゲザ)?! 本当に害意はないんだってもう』


 あ、ラレースさんの素がちょっとでた。かわいい。


『あー…エヘン。貴公が恐れるのもわかる。ただ聞いてほしいことがあるだけだ』

「……解りました。では先にどうぞ」


 ……。


 ……マジか。 彼女、俺より先にトーフ部屋の中に入っちゃったよ。

 これは「絵踏み」だったのだが……。


 もし、俺が入り口を塞いでしまえば、彼女は中で餓死するしか無い。

 その危険を承知で入るなんて、一体どんな覚悟だ?


『私はお前を信頼しているから、お前も私を信頼しろ』

「なるほど……なら、そうさせてもらいます」


 俺は彼女と一緒にトーフ部屋に入り、「ズン」と、入り口を壁で閉ざした。

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