ツルハシ狩り
(ツルハシ? こいつら今、ツルハシって言ったか?)
「俺のツルハシを……? そりゃちょっと困るな」
俺は自分の手の中にあるツルハシを見る。
……。
我ながら、汚ったねぇなぁオイ。
4ヶ月間という決して短くない時間、こいつは共にあった。
あ、でも別に相棒でもなんでもない。
Gomazonで3番目くらいに安かったのをとりあえずポチって買って、(一番安いのだと、すぐ壊れそうじゃん?)それからずーっと、何となくで使い続けているだけのツルハシだ。
ぶっちゃけ、大したもんじゃない。
だが、今の俺にはこれ一本しか無い。
Gomazonで新しいの買えばいいじゃんっておもうだろうが、そうはいかない。
なぜか知らんが、現在ツルハシはバカみたいに高騰、いや、沸騰中なのだ。
今、俺が握っているような低品質品のツルハシでも、1週間分の食費になる。
フツーのなら、3週間分の食費だ。それはちょっとキツい。
ハッ! コイツら……だからツルハシ狩りをしているのか……!!
なんて卑劣な!!
「フゥン……そろそろ答えを聞こうか。ツルハシ男」
「断る! 別にくれてやってもいいが、お前らの態度が気に食わん!」
「お前たち、ダンジョンネズミだろ? そこらの死体から拾えよ」
「お、まえ!! No.4に な、なんてこと、い、言うんだな!」
黒衣の一人が地団駄を踏んで、俺に向かって大きな石を投げつけてきた。その石は俺の手前、影の中に落ちて――
「ぐえッ!!」
瞬間、腹に殴られたかのような衝撃が響いた。
膝をつきたいが、体が硬直して言うことをきかない。
何だこれは……!?
その時「ハッ」と、こいつが「シャドウ何とか」と言っていたのを思い出した。
こいつら……攻撃に「影」を使うのか!
「クッ、俺の影に細工したのか?」
「御名答。生身を殴れば装備に傷がつくが、『影』なら無傷のまま穫れるからな」
「俺たちを『かみつきバイト』を、そこらのネズミと一緒にしないでほしいね」
「お、おでの『影術』で影の従者に噛みつかせて、う、動けなく、するんだな」
「これがなかなか便利なんだよ。影を縫いあわせて敵の動きを止めれば、安全に逃げられる。ダンジョンは危険がいっぱいだからな」
「そう、こんな危険な場所だと言うのに、探索者というのは……」
「意外と《《頑張る》》からね」
ああ、なるほど。
ダンジョンネズミは基本、ベテランに金魚のフンみたいについていく連中だ。
だが、こいつらはおこぼれだけで満足しない。
寄生している探索者が弱ったら、影を縛ってマヒさせて、ザックリってとこか。
おい!もうそれ一線超えたどころか、倫理観で縄跳びしてんだろ!!!
完全にアカンやつ!!!
「……そこまでペラペラ喋ったってことは、お前ら、俺がツルハシを渡しても、そのまま始末するつもりだったろ?」
目の前の男は俺の疑問には答えず、鼻で笑って返事とした。
うわ、マジでやべー連中だった。どうしよう……。
せめて配信してコイツらの悪行を広めておきたいが、今は無理だ。
さっき腹をやられた拍子で表示枠が閉じてしまったからな……。
全身の動きを固められた今、二拍手で表示枠を開くこともできない。
……割と不味いのでは?
「長話しすぎですよNo.4。あなたの悪いクセです」
「No.2。これは敬意ってもんだ。俺たちに装備をくれるやつに対しての、な」
「さて、ツルハシ男。誠に不本意だが……No.1、トドメを」
「わ、わ、わかったん、だ、だな! え、えーっと」
パワー系の黒衣の男は、何かを探すようにあたりを見回す。
そしてぱぁっと表情を明るくすると、小走りで行って、あるモノの前に立った。
岩だ。日本庭園にありそうな、苔むした岩。
そして黒衣の男は「ぬんっ」とそれを抱きかかえると、まっすぐこっちに向かって疾走を始めた!!
「はあああああああッ?!!」
お前それもう、影とか関係ねぇだろ!!!
と言うかスキルとかジョブの前に、お前がどーなってんだ?!
周り見なさいよ!! 皆ドン引きしてるわよ!!
「い、いくんだ、だなぁ! うおおおおおお!!」
ドスドスドス! と重厚な足音を立てて男が迫ってきた!
わー死ぬ死ぬ!!
きっと影とか関係なく死ぬ!!
クソ! こんな安物のツルハシ一本で死んでたまるか!
なんとか、なんとかしないと……!!!




