ダンジョンネズミ
ダンジョン一層と二層の境界となる階段の近くで、4人の男たちが車座になっていた。彼らはお互いの表示枠を重ね合わせて一つとして、何かを話し合っている。
「No.4、ツルハシ男はまだこの二層にいるみたいですね」
「なるほど、No.2が探知したなら……。No.3、ここだ。この辺りを探ってくれ」
「承知した……少し時間がかかるぞ」
「それはわかってる。いくらでも探知に時間をかけろ。空振りになるよりマシだ」
「No.2は『追跡』のサブスキルの『範囲強化』を鍛え、No.3は『精度強化』を鍛えて、探索範囲をしぼりこんでいく……」
「『追跡』を全て一人で行おうとすると、範囲、精度、情報……それぞれの能力が他より劣ってしまう」
「だったら4人でそれぞれが別々の『探索』のサブスキルを伸ばす。」
「No.4の策は大当たりでしたね」
「No.4は、あ、頭が良い、いん、だな」
「おれ、何もできないから、ら、うらやまし、だな!だな!」
「まぁそう興奮するな、No.1の出番はもうすぐだぞ」
「わ、わ、わかったんだな。が、がんばる、る」
「しかしNo.4。あなたの指図にケチをつけたい訳じゃないですが……」
「それはすでにケチをつけてるだろう。No.2、何が気に食わない?」
「No.4、本当にあの男のツルハシを奪うんですか? どう見てもただのツルハシにしか見えませんでしたが」
「No.2、それはちがうぞ。粗末な見た目に囚われるな」
「はぁ」
「聖遺物だからといって、その全てが金箔が押された彫刻がされていたり、七色に光ったりするわけじゃない。ゲームの世界じゃないんだ」
「待ってください。あなたは……No.4は何を知っているんです?」
「奴のジョブは『採掘師』。それ自体は珍しくない。だがヤツのレベルは50だ」
「ご、50?! 深層にいても、おかしくないレベルじゃないですか!」
「そして、これも俺の『追跡』のサブカテゴリ、『情報』からわかったが……」
「ヤツの『採掘』スキルは100。つまり限界に達している」
「採掘師でスキル100? 何でそんな無駄なことを?」
「ああ。普通はジョブを変えたほうが良いからな。採掘系ジョブの最上位、『巌窟王』を目指して、どんどん先へ進むはずだ」
「えぇ。上位のジョブほど、採掘の効率も上がるはずですからね」
「そうだろう? 奇妙なところは他にもある」
「あのどうみてもゴミ一歩手前、カスにしか見えない100円ショップ以下の品質のツルハシはなんだ?」
「採掘スキルが100もあるなら、もっと良い道具を持っているはずだ」
「……違うか?」
「――ハッ……確かに!!」
「No.2、もしもダンジョンの壁を壊せるツルハシがあったとして――」
「それに『ジョブ』の装備制限があるとしたら? 基本職の採掘師しか持てないとなると……そのジョブから変えようとしないのはごく自然な成り行きだ」
「全てが噛み合う……No.4の言うとおりですね」
「No.4は、や、やっぱり、頭がす、す、すごい、イイん、だな!」
「俺たち『噛みつきバイト』はダンジョンネズミ。ああ、バカにされてる。確かに褒められるようなことはしちゃいないさ」
「だけどそりゃぁ連中だって同じだ。奪うことに違いなんかない。相手が生きてるか死んでるかの違いだけで、何でこんなに言われなきゃいけない?」
「う、うん、うん…!」
「なぁ兄弟。ようやく来たんだ」
「俺たちをダンジョンネズミと言ってバカにしている連中を見返す時が来たんだ」
「あの力。ダンジョンを作り変えるツルハシは、オレたちのほうがうまく使える」
「ダンジョンの端から端、壁の向こうすら見通す俺達なら、な」
「No.4――目標だ。見つけたぞ。」
「よくやった。No.3」
「俺たちはスキルを分け合う運命共同体だ。仲間なら、ただの一人だって、不幸せのままにはしない」
「さぁ、征くぞみんな。」
「このチャンスに喰い付いて、決して離しゃしないぞ」




