ツルハシでも取れないもの
――ここで少しばかり時間が巻き戻る。
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「だめかぁ……」
俺は「爺部屋」の目の前にある水路の前で、ツルハシを振るっている。
しかし、まったく俺の望んでいる「モノ」が取れない。
このダンジョンには、俺のツルハシが全く通用しない相手が存在した。
なんと、ツルハシでは「水」が採取できないのだ。
……。
いや、当たり前だけどさ。
普通、ツルハシで水を取ろうって頭のおかしいヤツはおらんわな。
水路の上を流れる「水」をツルハシで取ろうとしたが、ツルハシは水の中を泳ぐだけで、所持品に入って、ブロックになる様子はない。
うーん……水は無理、ということだろうか。
俺のツルハシでも取れないものってあるんだな……。
むむむ。どうしよう。
「何をしとるんじゃお前は?」
「あ、爺。実はだな……」
俺は元からボロボロだったローブをさらにズタズタにしたリッチに説明する。
「仮拠点の中に水場を用意したいんだけど、水が移動できなくってさ」
「ふむ……さすがのお主でも、三態が異なるものは無理か」
「爺は難しいこと言うな。つまりどういうこと?」
「三態、というのは物質の状態のことじゃ。液体、気体、固体。聞いたことは?」
「あー、なんかの理科の授業で聞いた覚えがあるな」
「……あ、俺のツルハシはそのうちの『固体』しか取れないってこと?」
「左様。もしその水を取りたいなら、固体の状態にするしか無さそうじゃな」
「水を固体に……あ! 『氷』か?」
「うむ、と言ってもお主は「採掘師」。魔法は使えぬな」
「ねぇねぇお爺ちゃーん、なんか良いアイテム持ってない?」
「ええい気色悪い!掴むな!触るな!息するな!」
「――この老いぼれからベッドや日用品を奪ったうえで、まだ要求するか!!」
「そこをなんとか!!」
「……仕方あるまい。ま、できんことも無いわけではない。ほれ」
爺は俺に青白い金属の球体を投げ渡してきた。
なんか妙にひんやりする。おぉ?
「それは『氷のオーブ』じゃ。効果は単純、周囲のものを凍りつかせる」
「へぇ……地面に置けば良いのか?」
「うむ、やってみよ」
俺は「爺部屋」の水路の近くに、その氷のオーブとやらを置いてみる。
すると――
<ピシ……ッ! ピシピシピシッ!!!>
水路の上を静かに流れていた水はピタッと流れを止め、完全に凍結した。
おお、効果が出るの早ッ!!!
「へぇ……こりゃいいや!」
「回収するのを忘れるなよ? 高いんじゃから」
「わかったわかった。爺、これって人間には影響ないの?」
「……あったらお前ら探索者どもに使っとるわい」
「確かにな……って、武器としては欠陥品ってコトじゃねぇか!!」
「うっさいわい! 冷房と製氷機にはなるからいいんじゃよ!」
「その体で暑さ寒さとか関係ないだろ……」
「良いからさっさと回収せんか。水路が詰まって壊れるわい」
「あ、そうだった」
俺がツルハシを振るうと、氷はそのまま消滅して所持品に入った。
なるほど、仮拠点にくぼみか何か作って、この「氷」を入れる。
氷が溶ける時間と、氷にする手間はかかるが……。
これで水を移動させることが出来るな!!
「欠陥品とはいえ、すげぇの持ってるな。ただの爺じゃなかった」
「……これでもわし、死者の王とか呼ばれてるんじゃけどな?」
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