イエーィ!
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ファウストをこのまま野放しにしておけば、お台場の都市はおろか、ラレースの姉妹や家まで危うくなる。
ラレースの言葉で、俺は再度ファウストの危険性を再認識した。
だが、奴は俺達を置いて、第七層へ先に行ってしまった。
はやく追いかけないといけない。
「ともかくこの第六層を抜けましょう」
『そうですね。とにかくこの階層を突破しないと、話になりません』
配信を再開した俺は、吹雪で真っ白になった第六層を進み始める。
しかし、たびたび強さを増す吹雪は、俺達の視界を真っ白にして塞いだ。
ホワイトアウト、というやつだ。
吹雪で視界が白一色になると、ここはほとんどダークゾーンと変わらない。
自分の手足が見るという違いはあるが……。
今自分がどっちを向いているのか、今いる場所が坂なのか平地なのか?
地面と空の境界が無い、白一色の世界では何もわからない。
本当に前へ進んでいるのかどうかすら、わからないぞ。
さすが、「吹雪の迷い道」という異名を持つだけはあるな。
「ジンさん、この第六層を突破するコツって、何か無いんですか?」
「うーん、フラフラあっち行ったり、こっち行ったりするから、迷い道になるんじゃないかな~?」
「というと?」
「真っすぐ行けば、そのうち着けるんじゃなぁい~?」
「すっげぇポジティブ。」
「ふむ! 思いつきましたぞ、ツルハシ男さん! ようは真っ直ぐ進むことができればよいのですぞ!」
「うーん……レオがスキルを使って、突進し続けるとか?」
「ハハハ! 面白い冗談ですな!」
「割と本気だったんだけど……」
「これを使うんですぞ!」
レオはどっからともなく、細い木の棒を取り出した。
彼の身長と比べると少しだけ高い棒の先端には、赤いリボンが巻かれているのだが、強い風になびく赤いリボンは、獲物を求める蛇の舌のように踊っていた。
どうでもいいけど、今、表示枠から出さなかったよな?
一体ドコにしまってた?!
……ま、まぁいいか。聞くのが怖い。
「それ、罠をさがすのに使う2.1メートル棒じゃないか」
レオが取り出したのは、探索者なら誰でも持っている道具の長い棒だ。
俺がお台場のダンジョンで師匠から受け取り、そこで使ったものと同じもの。
このクソたわけダンジョンで目に見えない罠をさがす際、探索者が自分の手足や体を使って探していては、命がいくらあっても足らない。
だから探索者は、必ず一本はこういった長い棒持っているものなのだ。
棒の長さが2.1メートルと半端なのは、このクソたわけダンジョンの性悪さに理由がある。基本、このダンジョンは1マス1メートル感覚で罠が置かれている。
しかし1メートル感覚で探っていると、たまに1.1メートルと、中途半端にずらして置かれた罠に引っかかってしまう。
だから『2.1メートル棒』なのだ。
そう、このダンジョンのクソたわけぶりをナメてはいけない。
規則性を見出せるパターンがあったら、必ずそれを裏切ってくる。
ダンジョンとは、そういう場所だ。
ダンジョンを潜る探索者の人格が歪んでいくのは、絶対ダンジョンにもいくらかの原因が有ると思う。それくらい、本当にクソたわけなのだ。
「その棒を一体何に……?」
「簡単な事ですぞ! これを何本か地面に刺して、目印にすれば良いんですぞ!」
「うんうん。その棒を地面に刺した後、次に刺した棒が遠目から見て重なっていれば、私らが真っすぐ進んでいるっていう目印になるね~」
『なるほど! それならちゃんと判断できますね』
レオって脳筋に見えて、意外とこういうのに気がつくよな……。
んー、しかしまてよ……?
「2.1メートル棒でもいいですが、ダンジョンのブロックや、俺の『ランドメイカー』の建築スキルを目印に使ってもよさそうですね」
「おぉ! そちらの方がより良いアイデアですな! 2.1メートル棒が吹雪で倒れてしまうと、道を見失いますからな!」
「あぁ。じゃあ早速……」
<トンテンカン>
俺はスレッジハンマーを取り出すと、『建築』スキルで細い柱を建てた。
「うん、こんなもんかな」
『あれ? 以前よりちょっと頑丈そうですね』
「こっそり練習したから」
『なるほど』
俺が作った柱は、ラレースが作ったものとはまだまだ雲泥の差がある。
が、船着き場で作ったものに比べると、明らかに成長していた。
就寝前、日々コツコツハンマーを振るってスキル上げしていたからな。
これなら、吹雪でパタッと倒れることもないだろう。
「よし、この柱を目印に前進していきましょう」
『はい!』「うむ!」
「おっけ~」「わかった」
「イエーィ!!」
「……ん?」
なんだ?
俺の気のせいじゃなかったら、返事が一個多かったような?
『ツルハシさん! 足元、足元を、見てください!』
「――え?? なんだ? この毛玉。」
俺の足元には、2本の足で立つ、丸っこい毛玉がいた。
毛玉には手足があり、立った時の高さは……大体俺の膝くらいか?
毛玉には頭っぽい部分があり、俺を見上げている。しかし、顔に相当する部分が完全に白くフカフカ毛に覆われていて、目鼻が見えない。
頭と手足のある感じは人間っぽいが、手の長さは人間よりも長く、立ったままでも指先が地面につきそうだ。
こいつは一体……?
「イェーィ!」




