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吹雪の迷い道

ここでそろそろ、シリアスさんのギアを上げていきます。

たーのしーーwwww



(……そういえば)


 第五層から第六層につながる階段を降りる最中、俺はある事に思い至った。

 それはナナの両親のことだ。


 彼女の両親はダンジョンのテレポーターにかかり、どこかの壁の中に封じ込められている。


 だが、ユウキの救出を優先すれば、ダンジョンの探索はそこそこに先を急ぐことになる。壁の中の死体を探すどころじゃない。


 いつでも探せると言えばそうだが、ナナとしては気が気じゃないだろう。

 彼女の気持ちをフォローしておかないと。


「ナナ……その――」

「わかってるから、大丈夫」


 俺がこれから言おうとしている事を彼女は察してるようで、会話はナナの側から打ち切られてしまった。


 うん、我ながら情けない。


「そうですぞナナ! ツルハシさんなら、また来てくれますぞ!」

「うん」


 言葉少なに答えるナナに胸が詰まる。

 正直きつい。俺がもっとサイコパスだったら良かったのに。


 何もかもが曖昧な輪郭になるぼんやりとした暗闇のなか、左右の壁に手を付きながら、俺は急な階段を降り続けていた。


 すると、一番前を進んでいたラレースの足が止まる。

 延々と下へ向かっていた階段、それがようやく終わったのだ。


『ここが第六層ですか。それにしてもこれは――』

「……寒いですね」


 異常な冷気が強化繊維のコートの上から、俺の肌を刺す。

 本当にダンジョンってのは、どうなってるんだか。


「うむ! クソ寒いですぞ!」

「レオはこの階層を探索済みなんだろ?……なんで服を用意してないんだ」

「この格好はスパルタンの誇りですからな! 気合でなんとかしますぞ!!」


 流石にここでは、スパルタ兵コスをするのを諦めてもいいと思うぞ。

 なんせ、これではなぁ……


 俺の目の前には、凍てついたダンジョンの壁が広がっていた。

 そして、床には踏みしめるたびにキュッキュと音を立てる雪が積もっている。


 第六層は氷雪に閉ざされた場所ってことか。


「レオ、俺の表示枠に地図を送ってくれないか?」

「むむむむむ……それはできませんななな!」

「えー?」


 第五層では快く地図を提供してくれたレオだが、唇を紫色にして、体をブルブル震わせながら、地図の提供を渋ってきた。


「ちちち地図の意味がそもそもないのですぞ!」

「どういうこと?」

「私から説明しよっか~」

「おおおお願いしますぞ!!」


「この第六層は『吹雪の迷い道』っていう場所でね? 親切にも名前で分かる通り、ときどき襲ってくる吹雪で、ダンジョンの形が変わるんだよ~」


「ゲッ! なにそれ!」

『なんてメチャクチャな……地図の意味がないということですか?』


「そそそ、そうですな!」


「参ったな……行き当たりばったりで進むしか無いってことか」

「とりあえずレオくんにはお薬出しておくね。体が暖かくなるやつ」

「たた、助かりましたぞ!!」


 レオは処方されたお薬を飲むが、やたらヒィヒィ言っている。

 どうやらすごい辛いらしい。


 ……素直に服を着ればいいのに。


 とにかく俺たちは吹雪の中、雪の上を歩き、前へ進むことにした。

 吹雪いているさなかの第六層は、どっちを向いても真っ白になっている。これでは地図が役に立たないわけだ。だが、それでも進むしか無い。


<ザッ、ザクッ、ズムッ>


 硬い氷の床に浅く積もった雪は粉状でまとまりがなく、乾いた砂のようだった。雪も氷も、本来は水。状態が変化しているに過ぎない。けれど、異様なほどの乾きが、俺にこの雪原を砂漠と錯覚させた。


 しばらくすると、吹雪の中、俺達に背を向けているあの男が現れる。


 ガイコツを象った外骨格の上に黒いコートに着込んだ男。白い雪原の上にポッカリと穴を開けたように立っているその姿は、見間違えようがない。


 ――ファウストだ。

 

 しかし、ここまで3人の仲間を連れていたはずだが、奴しかいない。

 なぜたった一人でここに?

 

 とてつもなく嫌な予感がする。


「おや……ツルハシ男さん。もう第六層まで来られたんですね。」


「ユウキとツレはどうしたんだ?」


「ご心配なく、彼らは第七層にいます。私はここで一人、あなた達が来るのを待つことにしたんです。えぇ……待っていたんです」


「待ってた、世間話のためにか?」


「はい、世間話ですね。私には疑問があります」


「疑問?」


「貴方がダンジョンに潜る理由はなんですか?」


 理由、ね……そんなの決まってる。


「理由なんて無くても、潜らないといけないからだよ」


「ほぅ」


「神気がなければ生活がなり立たない。生きていくには自分の命を差し出さないといけない。ただそれだけだ」


「生活のため、というわけですね」


「俺はまぁ……ダンジョンに潜る以外、稼ぐ手立てがないからな。そう言うお前はどうなんだ? 見た感じ、好きで好きでたまらないって感じにも見えないが」


「当たり前じゃないですか。ダンジョンは……いいえ。『神』は私たちの願いを踏みにじりました」


「それって長くなる? なら、アンタは何でダンジョンにいるんだ」


「そういう取引だったんです」


「取引?」


「ごく一般的な人々は、自分の人生がどれだけ(ひど)(みじ)めなものか……ふとそれに気づいて、泣き、怒ることが好きですが――」


「私達の世界の中心に毒が満ちていく間、彼らは何もしていませんでした」


「全くわからん」


「……でしょうね」


「その取引ってのは、何と何を交換するつもりだったんだ」


「ごく簡単なものです。呆れるほど簡単で困難なもの」


「……?」


「神の力による、人類の救済です」


「そりゃまた、大きく出たね」


「はい、そこで提案なのですが……ツルハシさん」





「人類を救ってみませんか?」

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