第五層へ
7月29日、本日は3話更新です!
掲示板回があるので、一話増えております。よろしくです!
一夜明け、俺たちは第五層へと進んだ。
次の階層は、これまた一気に雰囲気が変わる。
野外に近かった第四層からうってかわって、第五層は一気にダンジョン感あふれる光景にもどったのだ。
狭っ苦しい迷宮の壁が左右から迫り、カビと腐った水の臭いが鼻につく。
伸びる廊下の先は暗闇が降り、何とも陰鬱な墓場のような場所。
レンガの壁は表面をクリーム色の漆喰で塗り固められ、さらに染料や古代ローマ風の壁画で飾り立てられている。ちょっとゴージャス感がある。
さて、ここで第五層で何より重要なことは――
第五層のことは、俺もよく知らないということだ。
俺が最終的に到達した浜離宮ダンジョンの階層は第五層まで。
これはナナも同じだ。
俺たちの中でこの場所の事を知っているのは、レオと――たぶん、葬儀屋のジンさんだけだろう。
「前もって言っておきますけど、俺も第五層のことはよく知らないんで、よろしくお願いします」
「わたしも。」
「ハッ! 私は攻略済みゆえ、全身全霊でツルハシ男さんにお教えしますぞ!」
レオは相変わらず暑苦しい。
だがこの空間ではその暑苦しさが頼もしく思えてくるから不思議だ。
さて、今日の配信を開始しよう。
俺はいつも通り二拍手すると、流れるように大国主の尻をひっぱたいてカメラをもたせる。配信にも手慣れてきた。
「みなさんおはようございます。当チャンネル『ツルハシ一本で開拓します』が、本日開拓を行う場所は、浜離宮ダンジョンの第五層です!」
「第五層に関しては詳しく知らないので……今回はパーティメンバーのレオにたびたび解説を頼むと思いますが、ご了承ください」
「うむ! 承服しましたぞ!」
レオは表示枠を出すと、これまた本人そっくりのガチムチの男を肩に乗せる。
オリーブの冠と頭の後ろの後光からすると、アバターはアポロンかな?
こう言っちゃ何だが、すごいレオっぽいな。
「まだ完璧ではありませんが、地図を出しておきますぞ!」
「おぉ、ありがたい」
表示枠を通して地図を受け取った。
ふむふむ。第五層の形状は第一層にかなり似ているな。
行き止まりになった細かい通路が多数あり、先へ進むには各所の部屋を通っていかないとダメ。そういった感じだ。
「俺は第五層は最寄りの採掘場所までしか行ってないんで、ダンジョン全体の概要が知れるのは助かります。部屋を通るのが必須って感じですね」
「そうですな! どの部屋もあまり絡め手はありませんぞ!」
えー……ほんとぉ?
このクソたわけダンジョンが素直に戦わせてくれるとか、マジ?
レオを疑うわけじゃないが、ちょっとにわかには信じられないな。
「第五層の特徴は何です?」
「特徴がないのが特徴ですな! シンプルに強い敵が自由にうろついている以外、とくに目立ったものはありませんぞ!」
いや、それメッチャ目立った特徴やないですか。
「……俺が苦手とするタイプの階層ですね。ギミックに依存したモンスターなら、それを何とかすると有利になるんで、やりやすいんですが」
『でしたら、私達の出番ですね』
「やっと暴れられる?」
ラレースとナナが獲物を構えなおし、重厚な金属音を鳴らした。
うん、メッチャ頼もしい。今回も俺はサポートに徹する感じだな。
単純に敵が強いってなると、マジでやることがない。
「では、開拓の大筋としては……この地図を頼りにこう通路を作って……第六層へ続く階段まで、直通路を作ることを目標にしますか」
『はい! その後はどうします?』
「何とも言えませんが……どこかの部屋を整地して、戦いやすくしたりですかね? とくにギミックが無いなら、俺の仕事はそんな無いかなーって」
「そうだね、たしかに階層自体には、ギミックはないね~」
「……? まあ、掘っていきますか」
俺は地図で目星をつけた位置から壁を掘り始める。
いやぁ、ギミックがないって良いなぁ……心が穏やかになる。
なんせ、これまでロクな場所がなかった。
カッパの巣となった池が広がる第二層。
足元が燃え盛り、骨まで焼き尽くす第三層。
ゴブリンの奇襲で神経をすり減らされる、第四層。
それに比べたら、ただ敵が強いだけなんて天国じゃん。
いや、楽勝と言っても良いだろう。
だって……俺が戦うわけじゃないし!!!!!
「さーて、掘っていきますか」
<ガチン! ガチン! ガチ、ン ……ガ、チ……ン>
心なしか、いつもよりツルハシが重い。
いや、重すぎねぇ?
「何かツルハシがおも……ぎょぇぇぇぇえぇ?!」
『どうしましたツルハシさ……ひぇぇぇぇ!?』
なんかツルハシが重いと思ったら、壁から現れた大量の骨の手が俺のツルハシの先を掴んでいた。ガイコツが壁をかき分け、モリモリと湧き出し続けている。
「来ましたな! スパァァァルタァァァ!!!」
レオが雄叫びを上げ、金色の穂先の槍を逆手で握って大上段に構える。
あ、ヤバイ。これはアレをやる気だな。逃げよっと。
「我が剛勇! 望みとあらば、ためしてみよ! 『チャージ』!!」
<ズゴォォォォォォン!!!>
銀座のゲートで起きた隕石落下事件が、ダンジョン内で再現される。
地上を走る隕石となったレオが骨の山に突撃し、無数の人骨をダンジョンの白い床の上に撒き散らした。
(――やったか?!)
が、俺の期待もむなしく、骨は再び人の形を取ると、手に折れた剣や槍なんかの武器を持って立ち上がる。おいおい、これじゃ、キリがないぞ?
「ジンさん、何ですかコイツら?!」
「この階層の名は『朽ち無しの墓所』っていってね、無限湧きのアンデッドがうろついてるんだよ~」
「スケルトンに見えるけど、スパルトイっていう上位種で、スキル値90台の達人級だから、気をつけてね~」
そういうのは先に言って?????
「うむ! けっして尽きることの無い強者たちです! 戦闘系のスキルを上げるには、もってこいですぞ!」
そういえばさっき、『強いモンスターが階層を自由にうろついてる』ってレオが言ってたな。
……いや、それにしたって自由すぎるだろ!!!




