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致命的な欠点

『ツルハシさん、素朴な疑問があるのですが……木を移した後、そこから普通に生えてきたりしないんでしょうか?』


「そこは大丈夫だと思います。ほら、アレを見てください」


『……あっ! オークが斧で破壊した木が復活していますね』


 ラレースが視線を向かわせた先、ユウキとオークのいくさ頭が戦っていた場所が元通りになっていた。根本からぶった斬られたはずの木々は、以前と変わらぬ様子で、青々とした梢を揺らしている。


「庭師が伐採し続けても、樹海が消えない理由がアレです。斧でぶった切っても、切り株を燃やして灰にしても、その位置で再生するみたいなんですよね」


 俺は復活した木にツルハシを振るい、これも回収する。

 まったく雑草みたいにしぶといやつだよ。


『もはや慣れましたが、なんともダンジョンらしい振る舞いですね』


「ほんと何でもありですよね。あれは何時だったかな……庭師の人たちが、ちょっとした挑戦を配信してたんですよ」


『挑戦、ですか?』


「それ覚えてる~。第四層の木、全部切ってみた配信だよね~」


「おぉ、ジンさんも見てましたか。木々や低木を刈り取って、ゴブリンの隠れ場所を一掃しようっていう試みが以前あったんですよ。ま、当然失敗してましたが」


「振り返ってみたら全部復活とか、アレはエグかったね~」


『それは……切ない』


「なんでまぁ。植え替えちゃうのが正解かなーと」


「うむ! ツルハシ男さんの手によって、大分スッキリしましたな!」

「うん、すごい。一本道になった」


「本当は全部やりたいんですけどね―。今回は最低限です。それでも100本以上切り倒しましたが。」


『最低限で100本以上切ったんですか……』


 配信中の伐採。あれは適当にやったわけじゃない。

 最短距離でダンジョンの入口から出口までを結ぶように駆逐したのだ。


 この入口と出口の間にあるものは、俺の作った空中庭園しか無い。


「まあ、こんなもんでいいでしょう。これならゴブリンたちも、そう簡単に探索者に奇襲を仕掛けられなくなったでしょうから」


『身を隠すものが何もありませんからね』


「逆にこっちは、これを簡易的な城として使えますからね」

「だね~」


 もしゴブリン・スカーミッシャーに攻撃をうけたとしても、この空中庭園に逃げ込めばひとまず安全だ。ダンジョンの壁なら、遮蔽物としては申し分ない。


 ま、一番外側の壁の高さが2メートルあるので、2人で協力しないと中々登れないが。そこはゴブリンを入れないという、安全のためなので勘弁してほしい。


『第四層の開拓はこれで終了ですね』


「はい。細かいトラップとかはそのままですけど、今回は第七層まで行くのがメインの目的なので、開拓はここまでにしておきましょう」


「しかし、空中庭園とは考えましたな!」


「要塞とも言える空中庭園に木を植えたことで、木を切るときの庭師が、ゴブリンの奇襲に怯えなくてすむようになりました! さすがはツルハシ男さん! 採集を行う探索者のニーズを、よくわかっていらっしゃる!」


 ごめんレオ。正直そこまで考えてなかった!!

 ――だが、せっかくなので最初からわかっていた風を装うぜ!!


「えぇ、もちろんですよ! ハハハ!!」

「ハハハ!!」



 その後、俺は配信を終了させ、キャンプで休むことにした。

 コテージ代わりのトーフハウスで身を寄せあい。たき火を囲む。


 皆、思い思いの野営をしているが、ナナはマットを敷いてその上に直接寝転がっていた。なるほど、キグルミがそのまま寝袋になっているのか。


 アレは……良いな。ちょっと欲しいかも知れない。


 だが、少女ならまだしも、良い年した俺が着ると周囲の視線がキツイな。

 下手したらポリスメンのお世話になりそうだ。


「第四層でゴブリンの奇襲に怯えることなく、枕を高くして寝られるなんてね~」


「ですな! ツルハシ男さん、このコテージは残しておくべきだと思いますぞ!」


「そうなんだろうけど、ドアがね……」


 俺が作ったコテージのドアは、転送門のドアを移築したものだ。

 つまり、ここにコテージを残せば、カギ屋に生きる糧を与えることになる。


 うん、それだけはイヤだ。


 どうあっても、カギ屋には滅んでもらわなければならない。

 それが俺とラレースの決意にして、黄金の意志だ。


『ここで使っているのは転送門のドアですからね。スケルトンキーがなければ中に入れないというのは、コテージの安全のために重要ですが……』


「ツルハシ男はカギ屋とつるんでる。なんて言われたくないですからね」


「むむむ……! では、空中庭園のように入り口を高くしてみては!?」


「入り口を高くしたとしても、開放されてるってのは、ちょっと不安だね~。誰かに爆弾でも投げ入れられたら、そう簡単に逃げられないからね」


 ジンさんの言葉でハッとなった。

 探索者の敵はモンスターだけとは限らない。


「探索者同士の戦いは、決して珍しい事じゃないですからね。それを考えると……やっぱ無いとおもいます」


『では、ツルハシさん――』


「はい。明日になったら、このコテージは潰します」


「無念ですな!」


「ダンジョンを作り変えるって、一見すると万能に見えますけど、何でも出来るわけじゃないですからねー……」


「そうだね~」


『何事も、長所に欠点は付き物ですからね。』


『……………………』


「どうしましたラレースさん、いきなり押し黙って、何を――」


『欠点でふと思ったのですが……ファウストさんの付呪(エンチャント)。あれだけ凄まじい威力を持つものなら、何か致命的な欠点があるような気がしまして』


「致命的な欠点、ですか?」


『はい。私の思い過ごしだと良いのですが』


 横になっていたジンさんが身を起こす。

 すると、彼女のメガネに焚き火が反射して、レンズがキラリと怪しく光った。


「そうだね、付呪は武具にスキルを押し込めるスキルだけど、基本は自分のスキルを封じ込めるか、他人に協力して借してもらうね。」


「へぇ、借りれば自分以外のスキルも武具に入れられるんですね」


「そ、借りることができればね……」


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