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ファウストに対する疑念

「マンスプリッター、置いてっちゃうんですか?」


「私たちには必要ありませんので。よろしければどうぞ」

「それならお言葉に甘えて……」


 戦いが終わると、ファウストたちは戦利品をそのまま打ち捨てていた。


 せっかくなので、俺は「マンスプリッター」を所持品に突っ込むことにする。

 たしかに微妙な品だが、完全な無価値ってわけでもない。

 適当な値段で店に押し付けるとしよう。


「私たちはこのまま第五層まで降りますが、貴方はいかがされますか?」


「今日はこれ以上先には行きませんよ」

「見たところ、かなり余裕があるように見受けられますが」


「余裕があるからです。この始末に負えないクソ森を何とか出来ないか、開拓を試したいんですよね。行きたいならどうぞ」


「では私たちは先へ向かいます。ツルハシ男さん、第七層での再会を楽しみにしていますよ」


「そりゃどーも」


『……ファウストさんたち、本当に行ってしまいましたね。』


「何とも奇妙な振る舞いですな。黄泉歩きとは、ああいうものなのでしょうか」


「金にならんだろうになー」

「でも、金! 金! って、探索者としては別に恥ずかしい事じゃないからね~」


「そうなの? お金に汚い人は悪い人だって、レオが言ってたよ」


「いえいえ、それは違いますぞナナ! 以前私が言ったのは……頭で稼ぐなどと言って口先三寸で壺を売りつける商法を売る――」


『レオさん! ナナちゃんはまだ幼いんですから、あまり変な事を教えないでください!』

「むむむ……」


「しかしファウストは何を考えてるんだろうな……本当に目の前の敵を掃除するだけ掃除して、俺たちの露払(つゆばら)いするのが目的なんですかね」


『あるいは、第四層の戦利品は持ち帰るほどの価値もない。でしょうか』

「金にならないから、こんなモン取らないみたいな~?」


「かーっ! それはそれでなんか腹立つ!!」



◆◆◆


 俺たちはユウキとオークのいくさ頭が戦った場所を、いったんキャンプ地とすることにした。


 はぐれボスが斧をぶんぶんふり回したおかげで、木々がなぎ倒され、すこしだけ開けた場所になっているからだ。ブロックが起きやすくなっていて助かる。


 ささっと壁を置いて、トーフハウスを用意したので、これをコテージ代わりとしよう。扉はもちろん転送門の前にあるガチガチのやつだ。


 これならゴブリンも中に入ってくることは出来まい。夜も安心だ。


「しかしアレですね。変質者とかストーカーって、普通は後ろをついてくるもんですが……ターゲットの先を行くストーカーっていうのは、ちょっと新しいっすね」


『ファウストさんたちは、一体何が目的なのでしょう?』


「うーん……何かやってることがチグハグというか変ですよね」

「ヘンって、なにが?」


 キグルミから顔を出したナナが俺に問いかける。

 ちょっと言語化してみよう。と、その前に……。


大国主(オオクニヌシ)、ちょっと作戦タイムにはいるから、配信の音声をミュートにしたりとか出来る?」


『ミュートにするのはもったいないのう。CM枠として何か流しておくぞい』

「CM枠ってなんだよ?! ……また何か勝手にやってない?」

『~♪~♫』


 大国主は口笛を吹き始めるとそっぽを向いた。

 明らかに誤魔化している。

 まさかコイツ……! 勝手に俺の配信枠でCMの放映権売りやがったな!?

 

「今は時間がないから聞かなかった事にしとく。だけど後で詰めるからな」

『ひぃ!』 


 ホントいい神経しとるわ。

 まぁ、大国主のことはどうでもいい。(どうでもよくないが)

 問題はファウストだ。 


「第十層まで行かないって言っているのに、なぜ頑迷につきまとうのか? 俺が持ってる疑問はこれですね。彼の求めることは、おそらく第十層で俺が地獄門を破壊して、その奥へ行けるようになること……今回は行かないと言っているのに」


『そう考えると、途端に気味が悪くなりますね』

「急に気が変わるのを待ってる。そんな夢見がちな人にはみえないね~」

「えぇ。」


「ファウスト殿は単純に護衛したいのでは? 今、ダンジョンを作り変えることが出来るのはただ一人、ツルハシ男さんだけですからな!」


「それが妥当なところですかね? 配信つきまといの亜種みたいな」

「ファウストって、ヒマ人?」


『都市と契約している都市探索者ならヒマではないはずですが、時期にもよりそうですね。たまたまヒマだった。そういうことでしょうか』


「ま、持つ者の道楽ってやつですかね」


『ファウストさんは、ダンジョン内の事故でツルハシさんが失われるのを怖れている。そのため、執拗に私たちを護衛しているのではないでしょうか』


「それが一番しっくり来ますな!」

「ですね。」


 ラレースの推測が一番しっくり来る。ただの考えすぎか。


「後はもうひとつ、ユウキたちがダンジョンでどこまで戦えるのか、ファウストはそれを確かめているようにも見えますね」


『それはありそうですね。私もこの目で見るまで、ジョブもスキルも無い人間が、第四層の【はぐれボス】に単騎で挑んで勝てるとは思いませんでした』


「俺的には、ダンジョンで戦うのは止めてほしいと思ってるんですけどね」


『なぜです? ユウキくんは望んで戦っているように見えましたが』


「信仰がなければ、死んだらそれで終わりですから。」

『あっ……』


「ま、これ以上考えても、答えは出てこなさそうです。……気分を変えて、アレをやりますか。」


『アレ、ですか……? あ、いつものやつですね』

「はい。いつものアレです。」


 さて、広告とかCMで場をつなぐのもそろそろ限界だろう。

 大国主に再度配信をつないでもらって、俺は配信画面に向き直った。


「さて、配信をご覧の皆さん。俺の目の前に広がる樹海ですが、この森は先ほどの様子でおわかりのように、ゴブリンの奇襲を容易にします」


「第四層の難易度を爆増させている原因は、この樹海に存在する木々にあります。生い茂る植物が悪さしている。ならやることはひとつですよね?」


「では今から――第四層を開拓していきたいと思います!」

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