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ファウストのスキル



「ツルハシ男、という探索者は国内外を問わず、かなりの有名人だそうで――」


「配信でいわゆる「バズり」を起こし、たいそう名を売ったそうですが……なんでも、その時に使用したスキルでダンジョンの壁を破壊したとか。」


「…………」


「私はダンジョン配信という物に(うと)くて、彼の配信も見たことが無くよくわからないのですが、SIntubeにある彼のチャンネルは、登録者が100万を超えてとても有名だそうですね。」


「私はぜひ、彼と会いたい。そう思っているのですが……」


 たしか、ファウストとかいったか?

 この男、怪しすぎる。


 ドクロのマスクを被っていて、真夏に黒コート。この見た目だけでもどう考えてもヤバイが、俺がヤバイと思う理由は別にある。


 100億単位の神気を稼げる黄泉歩きが、何で俺みたいな雑魚に興味を持つ?

 それがよくわからない。


 レオもナナも、そしてラレースも口を閉ざしている。この男に俺の正体を明かしていいものか、判断に困っているのだろう。


 うーん厄ネタの香りしかしないぞ?

 なんでユウキたちを連れているのか、その意味もわからないしな。


「会いたいって、ツルハシ男のサインでもほしいんですか?」


「ちょっとした『お願い』がありましてね。ある場所でツルハシ男にそのスキルを振るってほしいのですよ」


「待てば良いだけの話なのでは」

「ほう?」


「ツルハシ男は自分の意志で、ダンジョンを開拓して配信しています。まぁ……、好き勝手ともいえますが」


「誰かの指示を受けてではなく、ということですね?」


「はい、待っていれば、そのうち彼が望みの場所を掘り起こしてくれますよ」


「では、第十層より下もいずれ掘り起こす、ということでしょうか」


「……!」


「おや、どうしましたか?」


「い、いえ。ツルハシ男も、いずれはそのつもりでしょうね」


「なるほど。私は『黄泉歩き』を名乗っては居ますが、恥ずかしながら、未だ第十層より下へは到達したことがありません。」


「なぜなら、第十層の終点には地獄門があり、あらゆる侵入の試みを拒絶しているからです。しかし、ダンジョンの壁を破壊するという力があればどうでしょう?」


「ツルハシ男に第十層までついて来てもらって、地獄門とやらを壊してもらいたい、ファウストさんがツルハシ男に頼みたいのは、そういう事ですか?」


「それで間違いありません。」


「……ダンジョンを作り変えるスキルは、ご自分で手に入れたらいいんじゃないでしょうか。壁を延々とツルハシで殴ってれば、そのうち壊せるようになりますよ」


「ご冗談を」


 冗談じゃないんだけどなー。


「それでお返事の方は如何(いかが)でしょうか? ツルハシ男さん」


 バレてた。

 まぁ、バレるよな。


 うーん……。


 向こうからのお誘いってことは、億単位の神気で護衛契約しなくても、第十層までを何度も往復している探索者の力をタダで使えるってことだ。


 それどころか、報酬すら出るかも知れない。


 渡りに船とはこの事なんだが、なぜか俺の頭の中では警鐘がガンガンピーピー鳴っている。「これはヤバイぞ」っていう雰囲気がビンビン来ている。


 俺の経験上、この手の予感には従ったほうが良い。


「こっちはこっちでパーティを募集していたんで、今になって俺だけ引っこ抜かれても困っちゃうんですよね」


「……では、私がそちらのパーティに入るというのは?」


 そう来たか。


『ツルハシさん、これは良い機会では? 「黄泉歩き」ともなれば、戦力としては申し分ないです』


「ですけど、今は癒し手を求めてますから……」


「ご心配ありません、私はオールラウンダーですので。守り手でも、闘士でも……癒やし手でも、お申し付けくだされば、何でもやってみせましょう」


「何でもかんでも出来るって、聞いたこと無いんですが……全部が全部、中途半端になってたりしません?」


「そんな事無いです!!」


 俺の言葉を否定した声は、ユウキのものだ。

 これまで見てきた救世主の偉業でも語るように、少年は語りだした。


「ファウストさんは攻撃、防御、回復、探索、ひととおりのスキルを全て使いこなしているんです。僕たちはダンジョンを使った『授業』でそれを見ました」


「な……それ、マジでか? お前、ダンジョンに? スキルはどうしたんだ」


「いえ、スキルはないです。ファウストさんの助けで潜りました。」

「ウソじゃないのか…‥?」

「はい! ウソなんかじゃないです!」


 スキル無しでダンジョンに? どう考えても自殺行為だ。

 だが、ユウキの目はまっすぐだ。大ぼらを吹いているって感じじゃない。

 マジでやったのか?


「何がどういうことなんだ?」


「それは私のスキルに秘密がありましてね。私は付呪。つまり、武器や防具に効果を与える、エンチャントを得意としているのです」


「なるほど……付呪か」


 エンチャントは、スキルの効果を武器や防具に与え、必要な時にそれを引き出して使えるようにすることだ。


 なるほど、それならユウキたちジョブのない人間でも戦えるわけだ。


 「授業」がどういうもんかはしらないが、大体想像はつく。ユウキたちにエンチャントした武器や防具を持たせて、探索をゴリ押ししたってわけか。


 ねぇ……それ、エンチャントしたアイテムの実験が目的だったりしない?

 ユウキたちを実験動物扱いしてたりしないよね……?


「少し時間は必要ですが、回復スキルを付呪でアクセサリなどに封じ、それを皆様に配れば癒し手の代わりは出来るかと」


「その他にもお望みのものがあれば……封じますよ?」


 ファウストはうやうやしく、ゆっくりと頭を下げる。

 俺にはそれが、唇のない歯列が笑っているように見えた。


 ダンジョン深層、地獄への道連れにこれ以上の仲間は望むべくない。

 だが、オレの心には何かが引っかかったままだった。

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