再会
「ありがとうございます!!」
頭の羽を揺らしながらピョンピョン飛び跳ねるナナ。
その姿に俺はつい、マスクの裏でほっこりしてしまう。
いかんな、今の顔を見られたらポリスメンに逮捕されそうだ。
「さすがはツルハシ男さん!」
「決して不幸な人を見捨てない、その心意気に感服いたしました!!」
押し付けてんじゃねーか!! ……ともいえないんだよな。
ダンジョンの壁を掘り起こして、埋まった死体を葬れるのは俺たちだけだ。
俺は彼女にとって、最後の希望、ってことだよなぁ。
いや重い!! 重いよ?!
『よろしくお願いします、ナナさん。私は――』
「ラレース、知ってる。よろしく」
「レオ、お前が俺をしつこく付け回してたのは……」
「お恥ずかしい。これを逃したら、二度と無さそうな機会でしたので。あ、ファンというのはウソじゃないです、本当ですよ!?」
「それは疑ってないよ。まーしかし、お前も苦労性だね」
「ハハ! 街中を走り回るくらいなんです! 苦労のうちに入りませんとも!」
変態でヤベー奴だが、気のいいやつだな。
銀座はたまーにこういう奴がいるから、おもしろいんだ。
「さて、パーティはあと2枠だけど……」
『闘士と癒やし手がほしいですね。ですが今回は第五層より下の深層に挑戦するわけですから、守り手が多くても構わないと思います』
「ならば、スパルタンにお任せください!! スパァァルタァァッ!!」
「レオをいれたら火力が不足しないか?」
「それならご心配なく! スパルタンは闘士としてのスタンスもとれます!」
俺の言葉にちょっと食い気味にレオが乗っかってくる。
……それならまぁ?
「そもそもスパルタンは、守り手としては少し特殊ですからね。強敵に突撃して、その敵の敵視を奪うことで仲間を守る。そういうジョブですから」
「じゃぁ、ラレースみたいに、光の盾を展開したりは出来ないのか?」
「えぇ、全くできませんね! スパルタンは攻める盾ですから!」
威張るな!!!
ま、まぁ……、なら今回は連れて行っても良いか。
実際、俺は銀座の入り口であの戦いっぷりを見たからな。
すくなくとも、そこら辺りの連中よりは全然強いんだ。
わざわざ来てくれるっていうんから、文句を言ったらバチが当たるな。
『あとは癒やし手ですね。深層では致命的な状態異常を使用してくるモンスターがいますから、癒し手はかなり重要です』
「うむ! ツルハシ男さんは、今回はどこまで行くのを目指しているんですか!」
「最終的には第十層に到達したいんですが、今回はラレースさんがお台場で到達したことがある、第七層までが目標ですかね」
「七層!! なかなか高い目標ですね! 私達の到達地点は、第六層までです!」
……いうだけあって、レオの槍事務所はすごいな。
大抵のクランは三層で止まるものだ。めっちゃ進んでるじゃないか。
さすがスパルタ(?)だな。
「この壁から癒やし手を探すか……せめて五層に行ったことがある人だといいな」
『手伝いますよ、ツルハシさん』
「さ、ナナも」
「うん」
・
・
・
俺たちはしばらくの間、壁に貼られた紙片とにらめっこを続けた。
しかし、なかなか条件に合う癒し手が見つからない。
募集に出ているのは、第一層から二層までの癒やし手ばかり。
三層以下になると高額の依頼金を必要とする癒し手がほとんどだ。
そもそも、危険なダンジョンへ行こうとする癒やし手はそう多くない。
そこに追い打ちみたいに現れたのがミラービーストだ。
ほとんどの癒やし手は、ダンジョンから引き上げてしまったのかもなぁ…。
最悪見つからなかった場合、カッパの薬瓶でゴリ押しできるか?
いや、無茶だな。
ほぼ全裸のレオならともかく、塗るためには鎧を脱いだりの手間がかかる。
戦闘中に治療できないのは、危険すぎる。
『思った以上に、これは難しいですね』
「うむ! 全然いないな!」
「ずっと文字を見てると、目がしぱしぱする」
みんなもそろそろ限界そうだ。
時間も時間だし、いったんお開きかな
「うーん、こりゃまいったなぁ……ここは――」
俺が「いったん解散で」そう言おうとしたときだった。
カブキ座の外がなんだかざわついている。
なんだなんだ? まさか宮藤の奴がお礼参りに来たんじゃないだろうな?
俺は朱色の壁から目を離し、外で何が起きているのか探ってみる。
すると、騒ぎはある探索者のグループを中心にして起きていた。
グループは黒いコートを羽織ったドクロの男が中心人物らしい、骸骨男は三人の探索者を連れ歩いている。――えッ?
男が連れ歩いている探索者のひとりに、俺は見覚えがあった。
お台場の『都市』、国際展示場で自分の腕にナイフを突き立てて肉を削ぎ落とし、都市に入る権利を勝ち得た少年――ユウキだ。
ユウキが何でこんな所に?
頭の中を困惑で埋めていると、骸骨男は迷いなくこちらに歩みを寄せてくる。
そして、お互いの剣が届かない遠い間合いで止まると、肉のない顔で笑った。
「どうも、人探しをしているもので」
「は、はぁ」
「お兄さん!」
「ユウキ、一体どうしたんだその探索者の格好は……それにこの人は」
「ユウキとお知り合いなのですね。これはこれは……」
「申し遅れました。私の名はファウスト、いわゆる『黄泉歩き』というものです」
「なっ」
このオッサンが黄泉歩き!?
なんでそんな奴がユウキを連れて歩いているんだ?
「私が探しているのはこの銀座で活動している探索者で、その名前を――」
「ツルハシ男、と言うらしいのですが……ご存知、ありませんか?」




