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第1話

 ー1話ー



 天才魔道士ことタナト・マレイドは見慣れない天井を見つめていた。

 茶色く木目のある正方形が隙間なく並んでいる。それが木で出来ている事はわかるが随分古く見えた。

 他にも見渡すと、木で出来た棚や四角い置物、高さのない台がある。またこの部屋には色味が少なかった。

 タナトの部屋には様々な装飾や清潔感ある壁、持て余すような広さがある。

 タナトからしたらここは鶏小屋同然だった。

 服も着ていたローブでは無く、何の装飾もされていない布1枚。丈も膝くらいまである。

 そして扉が無い。

 自分が何故ここにいるのか。記憶を辿ろうとした時。

「あ、起きた?」

 ゴロゴロと何かが転がる音とともに男の声が上から降ってくる。瞬時に飛び起き、声とは反対方向飛び退いた。同時に臨戦態勢も整える。

 いつの間にか開けた空間から黄色い髪の男が四角い板を持ってこの場所に現れた。

 男の後ろには先程まで無かった新しい場所が開けている。

「うぉっ、ビックリした!急に動かんといてっ」

 タナトの動作に男も驚いた様子で後ずさる。

「誰だ!」

「いやいや!君こそ誰なん状態やで!?こんな暑い中うちの敷地に倒れてたんやから」

 男はタナトと挟むように置いてある台にその四角い板を置いた。

「病院行こうにも時間かかるし、親に連絡しようにも何も持ってないし」

「っお前僕の持ち物に触ったのか!?」

「しゃーないやろ!つか持ち物っても空っぽのちっさいポーチだけやん」

「?僕の鞄は無限収納式だぞ!空っぽなわけ無い!」

 男は隅に置いてある籠を取り、呆れながらタナトに差し出した。

「君……本読みすぎちゃうか?」

 その中には自分が着ていた服と鞄がある。

 急いで鞄の中に手を入れた。

「ーーーっ痛!」

 勢いよく入れた手は壁にぶつかるような衝撃が走る。

 いつもなら鞄の中の空間から欲しいものを念じれば重さ大きさ等関係なく取り出せていた。

 鞄を限界まで広げ中を覗いた。底は鞄の布で閉じられていた。

「な、なんで……そもそもこの鞄に底なんて存在する筈が……っ」

 タナトはハッとしたように自分の手を見つめた。

 そう言えば自分の魔力を感じない。

 立ち上がり勢い良く男に向かって腕を振り下ろす。

「ファイア!」

 大きな声が部屋に響く。そして静まり返る。

 何故かタナトから全ての魔力が消えていた。魔力が無ければ攻撃魔法も回復魔法もその他何も使えない。

 国唯一「大魔道士」の称号を持つタナト・マレイド。そのプライドが一瞬にして崩れていった。

「……いやなんて顔してんの」

「魔力が無い僕はただのオークだ」

「んん?なんか違うけど知ってるそれ」

「お父様にもお兄様にも見放されるっ」

 今後の事を考えたタナトの目から大量の涙がこぼれ落ちる。

このまま一生魔力が戻らないなら…。

不安で胸が押しつぶされそうになっていた。

 男は白いペラペラした物でタナトの涙を拭く。

「ちょ、もー泣かんといてやーそうゆうの弱いねんって。取り敢えず落ち着こな。これ食べれる?」

 男はタナトの体をゆっくり動かし、低い台の傍に座らせた。

 素直に誘導に従い足を伸ばしL字に座る。

 先程持ってきた物を男が近くに寄せた。

 透明な器に白く細い物がまとまっておりその上に緑と黄色とピンクの均等に作られた物が飾られていた。

 横には器に入った茶色い水が2個。

 鼻を啜りながら、これが何かと解いた。

「え……『そーめん』知らん?」

 お互いの顔に?が浮かぶこととなった。


読んで頂きありがとうございます:( ;´꒳`;)

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