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第三話 幼馴染 (妹の方)

ちょっと投稿頻度が早いです。

首筋がチリチリする。

帰宅後、京は首を抑えながら自室の勉強机に向かっていた。

パット見てその姿は黄昏れているように見えるが、

明確な殺意と怒りと悔しさを覚え、震えているのである。

原因は一つ。赤城にスタンガンを喰らわされたからだ。

そのため目下あの赤髪の不良にどうやってリベンジかまそうか、

そのことだけが頭の中で渦巻いていた。


「オッスーゥ。入るぜー。」


穏やかでない思考をしている最中、京の部屋の窓から

幼馴染の風谷かぜたに らんは猫のように入ってきた。

真面目で正義漢の強い茜に対し、嵐は自由奔放で素行が悪く

街でその名を知らぬ者は居ないほどの有名人である。


今日も金髪のショートヘアにベースボールキャップを被り

大きな白いシャツとホットパンツと、全力でストリートスタイル。

耳にある無数のシルバーピアスを見る度に、

京は痛くないのかとつくづく思う。


「おー、ってかいい加減外から入ってくんの止めろや。

 ここ2Fだぞ。」


「テッヘッへ。いや、正面から入るのめんどいじゃん。

 ウチの実家からも近いし。」


悪びれることなく嵐は答えた。

実は数ヶ月前から嵐と姉の茜は大喧嘩の真っ最中で

その結果嵐は家出をして、猫のごとく居場所を転々としている。

因みに京の部屋にもちょいちょいやって来ており、

京も嵐のために2Fの窓は常に開けてある。


「そういや、ラン。お前も復学に協力してくれたらしいじゃん。

 なんかサンキューな。」


「10万な。」


「有料サービスかよ。」


嵐は不満な顔で京を見つめ、中指立てた。


「ファッ○オフ!! 分かってねぇなぁ。

 キョーは無料のエロ動画しか見ないのに

 質のいいもん求めるクソ消費者と一緒だぜ。」


「いや意味わかんねぇよ。」


「なんでも無料や安いもので済ませようとするのは、よくないって話さ。

 他人が骨を折るってことの重みは、金を支払うことでしか理解できないんだぜ。

 他人に金を払えない奴が自分は払ってもらえるなんて傲慢な価値観を

 キョーには持って欲しくはないぜ。」


大量消費社会と、驚異的サービス精神を強要する現代人に対して

警鐘を鳴らす素晴らしい持論だと京は素直に感嘆するも、

そう曰わう嵐の表情が早く大金を寄越せというスケベ心丸出しで

これがただ並べたてたハリボテであることをすぐに見抜く。


「ボランティーア精神ってことにしといてくれ。

 俺、今忙しいからよ。」


京は本棚から漫画を取り出し嵐へ放り投げる。

野球漫画が豊富に揃えてある中から選んだのは、あ○ち充の最新刊。

嵐はド○ベンよりこちらが好みなのだ。

これでも読んで大人しくしてろと、手で追い払う仕草をみせた京へ

嵐はキョトンとした顔で口を開いた。


「おいおい。Z組で赤城あかぎ ほむらに張り倒されたばかりだろ?

 一体何が忙しいんだ?」


赤城。その名前を聞いた瞬間、京はすぐさま嵐の方へ振り向いた。

まるで餌に喰い付いた魚。嵐は不敵に笑う。

バツが悪そうに京は口を開いた。


「耳が相変わらずはえーな。」


「ウチの専門は情報だからな。その気になれば

 学園のマドンナのけつ穴の皺の数から、はたまた副校長の横領先まで

 あの学園程度の広さなら全部筒抜けだっての。」


ニシシ。嵐はニヤケながら京のベッドに腰掛けると

その後『最も』という接続詞を強調するようにはさんで会話を続ける。


「赤城レベルの超危険人物は、嫌でもその情報が転がり込んでくるもんさ。

 だから赤城の話の中に、百々川なんて聞き覚えのある苗字が混ざってたから

 取り敢えず様子だけ確認しに来たって所だったんだ。」


「赤城ってのはそんなにヤベー奴なのか?」


超危険人物というワードに京は反応した。

その疑問に対し嵐は即座に頷く。


「おう。Z組って街のろくでなしをかき集めた場所だけど、

 あの中で唯一アイツだけ少年院帰りなのさ。

 今だって保護観察期間のはずだぜ。」


「少年院……。」


それは犯罪を犯した少年のための刑務所である。

意味を知ってはいれど、京が今までその言葉を身近に感じたことはなかった。

次に京は思わず嵐を見る。

京が知る限り、少女は最も圧倒的で冷酷な悪である。

その嵐でさえ少年院に入ったことはない。

一体どれほどの悪行をすれば、そこに導かれるのだろうか。

コンクリート、リンチ、バラバラ死体。

今までテレビが取り上げて来た少年犯罪の群れが

京の脳内を過っていった。


「街の半グレ集団を一人でぶっ潰しちゃったんだ。

 凄惨な事件だったぜ。死人が出なかったのが奇跡さ。

 ウチも出来ればアイツと争いごとはごめんだぜ。」


「なんか正義のヒーローみてぇなやつだな。」


「呑気な感想だぜ。」


嵐が呆れた表情で京を見ていると、不意に京のスマホが震えた。

振動は途切れることなく震え続ける。着信のようだ。

嵐は京が画面を見るより先にその人物を言い当てる。


「姉貴かな?」


ご明答。画面には風屋 茜の文字が踊っている。


「きっと嵐がウチにいるから電話かけていたんだろうな。」


「あぁ。ウチが言うのもあれだけど、マジでバケモンだよな。」


鳴り続ける携帯をバックサウンドに、嵐は荷物を纏めた。

次の行き先は京にもわからない。


「嵐、泊まってってもいいんだぞ?」


徐にそう言うと、嵐は一瞬キョトンとした顔をした。


「ニシシ。いらねぇ世話だぜ。

 同情でウチは男の部屋に止まらないのさ。」


あばよ。その一言も言わず、嵐は夜の中に溶けていった。

喧しい人間が居なくなって妙な静かさと、その中で自己主張をやめないスマホ。

コールは止む気配がないので、意味はないと知りながらも京は電話に出た。


「もしもーー。」


「バカキョー。今そこに嵐の奴いたでしょ?」


声音は詰問というより、ただの確認という程度のものだった。

京はただふぅと息を吐き出す。

その音に茜はふふと微笑み返す。

いや、そんなエスパー加減に飽き飽きしてるんですよ。

という本音は心の奥にしまいこんだ。

人間gpsな姉に対し、京はただ淡々と事実を伝えるだけにする。

風谷姉妹の勘が方天画戟より鋭いことを、よく理解していたからだ。


「もう闇夜の中だ。ありゃ伝説のポケ○ンだな。」


「ボール投げたり捕ったりするの得意なのに、○ケモンマスターの

 資質はなさそうね。」


次来たら電話してよね。そう言うと電話は切れた。

ボールを投げたり、捕ったり。そんな言葉で思い出に殴られた。


「野球の資質だけでじゅーぶんだろ。」


京は携帯と共に身体をベットへ投げ出した。

放り投げた漫画の近くには、使い込まれた

金属バットとグローブが、まるで主を待つように転がっていた。



眠いので速攻寝ます。

おやすみ アディオス

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