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第一話 職員室で土下座をする元高校球児

前書きで何か良いことを書こうとして、10分経ってしまいました。

今回は10話くらいでまとめられるといいな、なんて

適当なことを考えています。

最後までお付き合いしていただけたら幸いです。


180㎝、85㎏、ベンチプレス130㎏。16歳。 

これはある男のスリーサイズと年齢だ。

この記録を見て分かる通り、常人より遥かに屈強な男だと

いうことが分かるだろう。


「ーーさあぁぁぁぁせんしたっ!!」

男の名前は、百々川 京。

屈強な身体を縮め、グラウンドの芝より短い五厘刈りの頭を垂れ、

世に聞く土下座の体勢で絶叫していた。


京は私立である春々(はるばる)学園の野球部に所属する1年生で、

無期謹慎という絶望的な宣告から

この日は実に69日振りに学園に登校してきたのだ。


「まぁ姿勢を正しなさいな、もも。」


屈んだ先、椅子に座る担任の堂本どうもと 峰実みねみ

立ちなさいと京を促した。

白衣を身に纏う彼女は科学の先生で、京の処分を何とかならないかと、

減刑を求めてくれた恩人だった。


登校した京が真っ先に行ったのは謝罪。

登校したその足で真っ先に職員室に向かうと、

峰見が到着するまで正座の姿勢で待ち続けていた。

その間約30分。京は微動だにしなかった。


「いや。正せないッスよ。先生は俺の命の恩人です!!」


「オーバーだよ、もも。私は私に出来ることをしたまでだ。」


「こうして正座をしていると何かに目覚めてしまいそうです。」


「今すぐ止めろおバカ!!」


「へい!」


素直に返事をすると、手を使わず身体の反動だけで正座を解除。

そのまま勢いを殺すことなく無意味にバク転をして、距離を取った。

高さも軸も体操部と遜色ない。運動能力は謹慎後も錆びていない。


「5点。」


「意外と採点渋いッスね。」


「うん。私の机の筆記用具を巻き込んだからね。」


床に転がり落ちたペンの集合を見て、京はハッとした。

そんな京を上から峰見が甘いなとケタケタ笑う。


この時彼女の胸中は愉快半分。空笑い半分。

目の前の運動神経抜群の少年バカが、もうこの学校で

白球を追いかけることがないことが、残念で仕方ない。

峰見は一度目を瞑り、再び京の顔を見た。


「もも、聞いてると思うけど……流石に野球部の退部までは下げられなかった。

 ごめんな、私の力不足で。」


「い、いやいや!! それは俺の問題ッスよ、先生。

 あんな大乱闘して、部活に迷惑かけたんッスから。

 むしろそんなところまで頭下げてもらってマジで申し訳ないです。」


「おバカ。生徒のためなら、こんなの当たり前だっての。」


ペコリと頭を下げる教師に落ち度などない。

自分のしでかしたことの大きさは、京が一番理解していた。


甲子園、夏の地方予選でのこと。他校の生徒が

野球応援で来ていた春々学園の女の子に悪質な絡み方をしており、

京はそれを見過ごすことが出来なかった。


「てめぇらの血は、何色だぁぁぁぁ ! ! ? ?」


大激怒。アンゴル=モアさえ怯ませる程の凄まじい怒り。

別に義星の元に生まれた男、という訳ではないが、

その少女の頬を伝った涙が京を狂わせた。

ベンチプレス130㎏は伊達でない。その力を遺憾なく発揮し

気がつけばその場で5人をノックアウトしてしまった。


「こら! 何をしてるんだ!?」


新入生同士による完全場外乱闘騒動。

この1件は渦中の生徒が全員退部するだけで何とかことが収まったが、

没収試合や、出場停止処分も十分に可能性があった。

それほどの大事だったにも関わらず、

担任の教師の姿を見て、京の中で罪悪感と未練が増した。 


「それよりも一個重要な話があってな。

 ももは裁量枠を使ってウチのスポーツ特進に入ってきてるんだが、

 野球部を退部する以上、このクラスからは転入しなきゃならない。」


「はぁ。まぁ、理論的には納得ッスけど、学年の途中で学部変更なんて

 そんなこと出来るんッスか?」


「一応校則上不可能ではないよ。

 ウチは進学系のクラスの中でも特別選抜なんて名前のクラスがあって、

 年に数人は勉強のレベルに付いていけなくなる生徒がいる。

 そういった生徒に向けに科の変更を許可してるんだ。」


「へぇー流石超マンモス高校。」


春々学園は小中高一貫であることに加え、高等部には多彩な学部が存在する。

さらに卒業生の中にはスポーツ選手や、有名大学の教授など、

数多くの著名人を輩出しているため、世間にかなり名前が広く知れており、

その生徒数は恐らく全国でもトップクラスの学校になる。


「で、ももには今度Z組に転入することになった。」


「Z組?」


京がキョトンとその名を口にした瞬間、職員室の空気が変わった。

教育系事業を展開する会社が携わった何かなのだろうか。疑問に思いつつも、

その単語が決していい意味で使われるものではないことだけは分かった。


「ウチの学校は特別選抜がS、進学科がA〜C、スポーツ特進がD〜F、普通科が

 さらに細分化されるが、大まかにG〜Nまで。本校舎にはNまでしかないから

 ももが存在を知らないのも無理はないよ。」


「まぁ特別選抜、進学、スポーツ科と普通科は校舎が違うんで、

 そもそもNまであることも知ら無かったんスけど。

 でもNからいきなりZに飛ぶっておかしくないですか?」


「まぁホームページにも載ってないからな。」


「どういうことスッか?」


「それはーー。」


ドタ ドタ ドタ。

峰見がZ組の確信を語ろうと言う時に、激しい足音を響かせながら

とある少女が職員室の戸を全力で開けてやって来た。

少女の名前は、風谷かぜや あかね。学園の有名人であり、

京の一つ年上の幼馴染である。


普段は天真爛漫で名を馳せているワンレンの少女なのだが、

この時の彼女は一味どころか二アジ、三サバ、四 カジキぐらい違った。

瞳は鋭さ全開、眉は吊り上がり、ツルっと出したオデコに血管が浮き出ている。


あぁ、ヤバイ。怒ってるわコレ。

その事実は幼馴染である京以外にも、それは伝わった。


「峰見ちゃぁぁん!!」


「どうした茜。カルシウム不足なら小魚がオススメだぞ。」


「カルシウムならイソフラボン目当てで豆乳飲んでますから!

 別に発育のためとか関係なく!!」


茜は胸を軽く張って自分の手で叩いてアピール。

それは身長165センチオーバーの彼女には少々物足りないサイズ。

ヤレヤレ、と京は手を上げた。


「まぁこれは例え話だけど、野球はセンスのスポーツだぜ。」


「それどういう意味よ。」


「自分のセンスに合ったポジション、打ち方、投げ方を

 選んだ人間が活躍出来るんだ。自分の適正の無いことをやったって、

 レギュラーの道は絶対に取れない。

 だから茜も適材適所、貧乳の道をーー」


「黙れバカ京!!」


ゴスっ!!鈍い打撃音。

流麗な線を描く左ボディ。

声を上げることも出来ず、京の身体はくの字に折れ曲がる。

閑話休題。仕切り直すように茜は峰見に問いただした。


「で、なんでZ組なんですか?」


「あぁ。というか話聞いていたことが驚きだ。」


「まぁ聞き耳立ててたんで。

 なにせそこのバカ京2ヶ月振りの登校日ですから。」


峰見はふっと微笑む。そして誰にも聞こえない優しい声を出した。


「まるで母親だな……。」


「ん?」


「いやなんでも無い。まぁ京の処遇に関しては私だけじゃなく

 S組で粛清委員長の茜と妹のらんにも助力してもらったからな。

 説明責任は君にも果たさなければいけないな。」


「そう、それ! 峰見ちゃん!

 折角アタシも多分嵐も頑張ったのに、Z組転入ってあんまりです!」


「いや妥協してここなんだ。あの風谷姉妹が尽力したから

 退学や出席日数オーバーで留年という最悪のケースを回避出来た。

 Z組転入は最大限の落とし所だ。」


「アタシは納得出来ないです!」


例え親しい教師が相手でも、茜は食ってかかった。

そんなヒートアップする茜を抑えたのは、京だった。

自分よりも怒りに震える幼馴染の肩に、京は手を置く。


「ーー茜、ありがとうな。

 やったことの重みは俺が一番分かってるから大丈夫。」


「バカ京。」


感謝。京が口にしたのは感謝である。

その一言に茜は口を閉ざすしかなかった。


「当事者ほったらかしで盛り上がってる所さーせんね。

 で、Z組ってなんなんスか?」


「口で言うのは簡単だが、ももには直接目で見てもらった方が早い。

 付きてきなさい。案内するよ。」


「案内?」


「あぁ、ついてきたまえ。

 それが私の最後の役目だからな。」


峰見の含みのある発言を、京はZ組に入ってから理解をした。


前書きなんてタダの飾りです。

偉い人にはそれがわからんとです。

なんだかんだ書き始めてから2週間ぐらいかかっているので、

大体次話はそのくらいになりそうです。

ストック? 何それ、美味しいの?

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