I might be loving you.I mean NO
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【ノクターンノベルズ】の「Candle in the Dark 【darkness】」に完全な形で掲載しておりますので、そちらをご覧ください。
夜。
リズが集めてきてくれた情報をベッドの上で聞いていた。琥珀色に光るランタンの灯りが顔半分を照らし、もう半分は色濃い影が濡れた泥のように張り付いている。
「ボンボワール家、サビレスト家、フレズ家、それぞれ一家の主が同じ手口で惨殺されています」
リズは羽ペンを使って紙に家名を書いた。どの名もピンとこないので、有名人ではないのだろう。
「殺された人に例外がない? この前、殺されたのは子供だったわ」
「サビレスト家です。父親は工場の機械に挟まれて亡くなり、主となるのは長男であるデイブという子でした。まだ10歳でした」
「10歳か――あの子、裸だったけど他の人も裸にされていたの?」
「いいえ、そのような形跡はありませんでした。ただ、遺体の傷口から見て凶器はハチェットで間違いないでしょう。殺害された場所にも特徴があります」
リズは地図を取り出して広げた。国土が全て納められた地図の上を、白い指が滑っていく。
「サビレスト家はここ、オーゼルで。フレズ家は森の中、ボンボワール家は山の中腹です。警察の管轄外の地域であるため、得られた情報はここまでです。ですが、現場を辿っていくとある場所に行きつきます」
殺害現場をなぞった指先は、オーゼルより離れた山で静止している。山向こうに広がる半砂漠地帯は、ノーマンズランドである。
「ノーマンズランド」
「はい。ここから始まったとしか思えない順序で、今はオーゼルまで。ここが終着となるのか、中間地点であるのかはまだわかりません」
「殺された人達の繋がりは? 何かあるはずよね。カルームが恨みを持った人間に憑依するなら、被害者に繋がりがあるはず」
「当主ということ以外にはありませんでした」
リズはかぶりを振る。
「交友関係から職場関係まで、警察の方々が調べていましたが、彼らはこれまで近所付き合いすらしたことがない。赤の他人なのです」
「それならカルームの話と違ってこない? 無差別に襲っているのかしら?」
「無差別かどうかは判断しかねますが、居合わせた者には容赦がないようです。フレズ家の当主が森で殺された時、同伴者も同じ目に遭っています。その後、警察が数名を連れ立って森へ入ったようですが、彼等もまた生きては帰ってきませんでした」
「森でそんなにたくさんの人が殺されてしまったのに、犯人の狙いがフレズ家の当主であるという根拠は?」
「事件から二日ほど生き延びた生存者が、見たままを語ったそうです。狼の仮面を被った怪人はフレズ家の当主を執拗に狙っていたと。自分たちは武器で応戦していなければ襲われなかったかもしれないと……語ってくれた方は、もう亡くなっています」
警察官が殺害されたことで、警察署長は100名の武装した部隊を編成し山狩りを行った。隊列を組んでの捜索は昼夜を通して行われたが、成果は冬眠前のグリズリーが一匹仕留められたのみであった。川沿いや洞窟など、人間が息を潜めていそうな箇所は全て確認したが、ハチェットを携えた怪人は見当たらなかった。聖職者たちは悪魔の仕業であると断言し、祈りの声を一層強くした。
「次に誰が襲われるのか、手掛かりは今のところ掴めないってことね」
カルームの標的となる人物は、今夜にも襲撃を受けるかもしれない。それを阻止できる可能性があるのなら夜警をすべきだ。ベッドから降り立ち、ブーツに足を通す。
「今夜も鐘楼へ?」
「ええ」
オーゼルには大理石で作られた、高さ90メートルほどの鐘楼がある。象眼や彫刻で飾られた巨大な塔でもあり、屋根部分にはアーチ形に繰りぬかれた空間がある。そこならば町全体が見下ろせる絶好の”巣”となった。
「学校もあるのですから、あまり遅くまではいけません」
「明け方には帰るようにするわよ。はぁ、最近眠くて仕方ないわ」
「二重生活は辛いですね」
ブーツの紐を結び、いつものドレスに着替えたところで、ベッドに腰を沈めているリズへ向き直る。
「今のうちだけ。学校なんてすぐに卒業だから……さ、リズ」
左腕の裾をまくり、二の腕を眼前に差し出す。リズは不服そうな視線を送って来る。
「コゼットちゃん。もう少し、情緒があってしかるべきと思います」
「は?」
「その。このように……身も蓋もないと言いますか、率直すぎるのもいかがなものかと」
「へ? あぁ、そういうことか」
まるでペットに餌を与えるような形で血を分け与えようとしていたことに気づいた。私も料理の皿を放り投げられて、「食え」と言わんばかりの視線を送られたら気を悪くするだろう。
リズの隣に腰かけ、改めて向き直った。
「悪かったわ。さあ、どうぞ」
「あの、コゼットちゃん」
「なに?」
「血をいただく前に、その……キスをしてもいいですか?」
「はあ!? あんた、まだそんなこと言ってるの?」
苛立ちを覚えた。先日のパーティー会場であれだけお仕置きをされたのに。懲りずにまたこんなことを言い出すとは思わなかったから。
「そういうの止めてって何度も言った――」
「違うのっ、です、その――少しだけでかまいません……戦うのであれば、心身の活力を得なければ。ヴァンパイアは、その、伴侶となる方にいただく愛情からも力を発揮するきっかけをいただけますし……血をいただくだけでは」
リズは震えながら話していた。蜘蛛の老婆や、カルームと対峙している際には微塵も見せなかった震えを、この小さな部屋で、私を前にして見せている。凛然としていた姿がみじんもない。そんな様子を見ていると、自分が些細なことで怒ったちっぽけな人間に思えてきた。
「少しよ、あんまり本気にならないで」
「はい、少しだけ」
俯いていたリズが顔を上げ、瞳がぱっちりと会う。思わず赤面する彼女を見て、こちらも頬が熱くなってきた。キスぐらいなんともない――はずであったのに、毎回のように平静でないリズを見ていると、緊張してくる。
「そんなにジッと見ないでよ」
「すみません……コゼットちゃん」
「なに?」
「私が必要ですか?」
「必要よ」
「私に、言葉をください」
「あなたが必要よ、リズ」
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