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Candle in the Dark 【lightness】  作者: WAKA
Dark Seeker
12/32

Breaking Dawn

なんとかハロウィーンに間に合いました(大嘘)


誤字を指摘してくださった親切な方。ありがとうございます<(_ _)>

気を付けます。

バルヒェット家の中で、父も母もコゼットのことを大切にしてくれなかった。

 

親からなぜこんなにも毛嫌いされるのか、当時のコゼットにはわからなかった。

家族そろって社交の場へ赴く際は、父とは母は寄り添ってくれ、頭を撫でてくれた。だが、城へ戻った途端、鬱陶しそうな目をして遠ざけようとする。そうした両親の目に、コゼットは敏感だった。嫌われたくない一心で、甘えたい衝動を押し殺した。

 

父と母はよく喧嘩をした。

 

旅先で怪我をした父を献身的な看護で支えたのが母。貴族の青年と、新米ナースの娘は出会った瞬間に恋に落ちた。父は母を口説き落とし、自国へ連れ帰って結婚した。異を唱える周囲の声を無視した、衝動的な結婚であった。

 それだけに熱が冷めてみれば、二人の関係はすぐに悪化。

 怒鳴り合う声が城に響き、それは自室にいるコゼットの耳にも届いていた。二人が不仲であることに、身のすくむ思いだった。当時はまだ父と母を愛していた。二人が離れてしまうなんてことになったらどうしよう。不安で眠れない夜をいくつ超えたかわからない。

 

そしてある晩のことだった。


「失敗だったのよこの結婚は。あの子を産んだから、余計に私はここから出ていけないのよ!」


その夜は父と母の声があまりにも大きく、ついにコゼットは自室を飛び出していた。


もうやめて、そう伝えるために父と母の部屋へ向かった時、母のヒステリックな声が届いた。

直後に頬を打つ音。


「二度とそんなことは口にするな」


重い父の声だった。


父が母の頬を張ったのは、たぶんそれが最初で最後であった。母のすすり泣く声が聞こえた。


物陰に潜んでいたコゼットは慌てて踵を返し、ベッドへもぐりこんだ。今のは悪い夢であることにしようと、無理矢理に瞳を閉じて眠りを待った。


父はとても強く叩いたらしい。母の頬の赤みは消えず、しばらくは包帯で顔を覆わなければならないようだった。母の表情と声が消えてしまった。


母の顔から痕が消えたのは、ひと月も先のこと。

秋から入学するアカデミーの見学を終え、城に戻った時のことだった。馬車から降りようとした時に足を滑らせた。慌てて掴んだ車輪は荒く欠けていて、掌が深々と切れてしまった。

 痛みに顔を歪ませたコゼットを母は一瞥し、さっさと城へと入ってしまう。感情のこもらない冷めた目つきが恐ろしかった。突き放された気がして、慌てて後を追った時――


「いらなかった」


 背を向けたままの母が言った。


「お前なんて、いらなかった」


 背中を向けたまま、落ち着き払った声で母は言った。

 衝動にまかせて出た言葉ではない。心の底からそう願うような、冷たい言葉であった。戦慄したコゼットはその場から動けなくなってしまった。

 幼いコゼットにとって両親は世界そのものだった。二人に否定されるのは、世界に否定されることと同義であった。


 自分は誰に必要とされているのかわからなくなった。


 執事もアカデミーの友達も優しくしてくれる。だがそれは、あくまで表面的なものだ。皆はバルヒェットの娘という存在を大切にし、コゼットを想ってくれているわけではない。

 エドワードは優しいが、あくまで師弟の関係。親子でもなければ友とも違う。信頼はあれど、愛が生まれることはない。


 心を許せる人なんていない。それがコゼットの出した答えだった。


 だがノエルがいた。彼女は茨で覆ったコゼットの胸に、するりと入って来た。


 そして、彼女は死んだ。


 その彼女が託してくれたもの。それは夢の中で自分を慰めてくれた女性――






「コゼットさん」


 その声で目が覚めた。

 目を開けると、安堵のあまり涙目になっているリズがいた。


「あぁ、よかった」


 私の手を強く握った反動であるのか、項垂れてへなへなと床に尻もちをついてしまっている。窓から差し込んだ朝日が、艶やかな黒髪に白い線を走らせていた。


「・・・・・・」


 私はリズを見て、すぐに昨晩のことを思い出した。鍵をかけていたのに部屋に侵入し、血を吸われた。いや、今も鍵はかけていたはずだが?

 リズの背後にはエドワードが立っていた。私が目を細めると、エドワードは合鍵をちらつかせている。

リズに頼まれて部屋の鍵を開けたのだろう。寝顔というのはあまり他人に見られたくないのだが。というか、勝手に開けないでもらいたい。

エドワード! 彼は私がそう叫ぶ前に、踵を返して部屋を出ていった。


「すみません、コゼットさん」


 起き上がろうとした時、リズがそう言った。

 恥じ入るように俯いたままである。


「昨日の夜のこと?」


「はい。昨晩は取り乱し、自分でもどうしようもなく・・・・・・わたしはあなたを傷つけて――」


 そこまで言って、感情に詰まった。


「痛かったわ」


 床板に膝をついているリズを見下ろし、首筋に触れてみる。噛み痕は、はっきりと残っていることが分かった。


「聞きたいことが増えちゃったじゃない。まず確認だけど、あんたはつまりその――あれでいいの?」


「はい」


 何事か察したリズは顔を上げる。愁いを帯びた青い瞳が朝日に輝いている。


「私はこう呼ばれていました・・・・・・ヴァンパイア、と」


「・・・・・・そう」


「・・・・・・驚か、れないのですか?」


 驚いている。驚きすぎて言葉が出てこないだけだ。

 私は怪物を城に招き入れてしまったわけだ。


「ああ」


 合点がいった。

 それで石棺にいたのか。

 リズは上目遣いで首を傾げている。


「ちょっと、いったん落ち着きたいわ。誰かいる?」


 ベルを鳴らすとすぐにメイドがやってきたので、二人分の熱いお茶を頼んだ。


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