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8 一転

 船の灯がぼけて見える、あの輝いた夜。僕はこの岩でプロポーズをした。

 向こうも喜んでくれたんじゃないかな。ここでできて僕も嬉しかったよ。


 天国岩に小さなチャペルがあったんだ。思い入れがある場所だから、結婚式もそこでした。


 結婚式。いつもは誰もいないその岩は賑やかなものとなった。会社の同僚、親戚、友達までもが祝いに来てくれて、めいっぱいにずらっと並んだごちそうを食べた。


 あぁ。あの頃にもう一回戻りたいな……。


 そこは、ある意味ゴールでスタートだった。



 ―――――――――――――――――――

 ―――――――――――――――――――


 現実世界へ。ドローンは相変わらず動く。立体的に映し出された広告もある。



 彼はただひたすらに話していた。彼自身溢れるものがあるのだろう。そして過去の酔いから醒めると、ずっと下をむいたまま……。


「……。この箱は何なの?」


 謎の女性は、そう言うと彼の隣にあった小さな箱を持った。


「ピンクトルマリンの宝石が入ってる」


 彼は続いてそのあとの話をしてくれた。結婚したあとの災難。そして原因不明の病。


「この宝石は……」


 ――――――――――――――――――――


 この宝石は、結婚一周年の記念日に渡そうとした物だよ。

 結婚してから街中の同じ家に住んで、相手には家事を専念してもらいたかったし、好きなこともしたいだろうから僕は退職を勧めた。


 仕事が相変わらず忙しい僕は、結婚記念日でさえ夜遅くに帰ることが決まっていた。それで、少しでも彼女を喜ばせてあげたくて近くの宝石が売っている高級店に行ったんだ。大奮発さ、二人でいれない時間のお詫びとして。


 店の人に事情を軽く話すと、その宝石がついたピンクの美しいネックレスを勧められたんだ。



 ピンクトルマリン―


 生命力いっぱいの愛を溢れ出させてくれる石。その若さをいつまでも。


 聞いたとき鳥肌が止まらなかった。


 23:00のことだ。らんらん気分の僕に一本の電話が入る。


「ご主人ですか?大変です、すぐに病院まで……!!」



 ――――――――――――――――


 一転―


「……。交通事故で。だからずっとその宝石を持っていたのね」


 近代化が巻き起こした、新たな弊害だった。


 そして耐え、彼は言葉を返す。


「……はい」


 女性は少し目が潤んでいたのかもしれない。上を向いてごまかそうとしていた。


「……どうぞ、開けてみてください。中にはまだまだ色変わらない宝石が輝いていますよ」


 彼はそっと話しかける。


 彼女はそっと箱を開けた。


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