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6 移りゆものの中で変わることは無い

それからというものの、僕は彼女に吸い寄せられるようにどこか魅力を感じていた。


 翌日も、明後日も、明明後日も……。ずっとあの噴水で、話した。始めの頃はあるはずもない話題を無理やり見つけ出したりもして。


 今思えばあからさまだったのかもしれないな……。それでも彼女はそっと耳を傾けてくれた。


 日が射したために、長い赤髪がそよ風でかすかに揺れる。


 そして静かに微笑む彼女。


 その頃は時の流れなんか気にすることもせず、ただその時を楽しんだ。


 とても美しく思えた。今でも僕の中の景色はまったく色褪せないんだ。


 線路を越えた向こうにあるくつろぎの場所。まるで別世界にある噴水は、僕の人生のバトンになっただろう。


 そして彼女にやっと告げられた。今度カフェにでもどうかな……?と。



 ―――――――――――――――



 時は過ぎ、町の再開発も佳境を迎えたある年。僕とその彼女は付き合うことになった。


 あれから順調に進み続けた。どんどん仲良くなって、この人と結婚すれば、僕の人生も色がつくのかな……。とも思っていた。


 僕は、やっと自分自身のことを前向きに考えることにした。

 本当にこの職業でいいのか、いま何か自分は胸を張ってしていることがあるのか……とかいろいろ。


 今までは時の流れに身を任せてふらふらとしていたけれど、そこから変えた。


 いや、変えてくれた。


 彼女とは、価値観も似ていたもので付き合ってからは素の自分を見せてくれた。

 ありのままって言っても落ち着きを忘れることはなく、まるで微笑みかけてくれるような人なんだけどね。



 お互いの家は離れていて、簡単に行けるわけじゃない。


 だから仕事の合間に、いつもの噴水で喋っては別れ喋っては別れ……時々帰りにご飯でも。


 そんな生活を過ごしていた。付き合って何が変わったのかと言われればそこまでかもしれないけど、二人の距離は圧倒的に縮まった。


 僕にはなにか、こみ上げるものがあって、そしてそれが大切な時間へと導いてくれる。今、絶対に後悔することはないだろう。その貴重さを改めて感じたんだ。


 あの噴水広場から後ろを見ると立派なビル群が。もう僕らの会社もそこまで大きいようには見えなかった。時代の移り変わるスピードは速い。


 また振り返り、今度はまだ整備されてない平原を見渡す。やはり線路を境界線として、この噴水があるエリアはまだ再開発地区に割り当てられていなかった。


 すこし考え事をしているように僕は頭を下げると、彼女は楽しそうに


「今度、あの大きな岩登ってみない?」


 天国岩のほうを指さしてキラキラした目でこちらをみた。


 天候は快晴。雲一つないおかげであたりは見えやすく、めずらしいことにあの巨大岩の姿を、この目でこの場所から確認することができた。


「楽しそうだな。上がって海でも眺めようか」


 僕は笑顔で返事をした。


 また、二人の思い出が増えそうだ。嬉しかったな。



 あの岩に興味を持っていた僕は、その日が楽しみで仕方なかった。

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